彼女のところに謎(なぞ)のメールが届(とど)いた。そこには、〈将来(しょうらい)の夢(ゆめ)はかなったかな? もしそうなら、頼(たの)みたいことがあるの。連絡(れんらく)を待ってるわ〉
いったい誰(だれ)が送(おく)ってきたのか…。彼女にはまったく心当(こころあ)たりがない。もしかすると、小学校の同級生(どうきゅうせい)なのかもしれない。でも、あの頃(ころ)の友達(ともだち)で連絡を取り合ってる人はひとりもいない。どうやって連絡先(さき)を知ったのか?
彼女は、〈将来の夢〉について考えてみた。確(たし)か、卒業文集(そつぎょうぶんしゅう)にそんなのがあった気がする。でも、いくら考えても思い出せない。その頃の記憶(きおく)が、なぜかはっきりしないのだ。彼女はどうにも気になって、実家(じっか)へ帰って文集を探(さが)してみることにした。
実家の押(お)し入れの段(だん)ボール箱(ばこ)にそれはあった。亡(な)くなった母親が大事(だいじ)にとっておいてくれたのだ。彼女はページをめくって、自分の名前(なまえ)を見つけた。そこにあった〈将来の夢〉の欄(らん)には、「殺(ころ)し屋(や)になる」と書かれていた。
彼女は、あまりのことに言葉(ことば)も出なかった。なんで、私がこんなことを…。彼女にはまったく覚(おぼ)えがない。でも、そこに書かれた字は、確かに彼女の文字(もじ)だった。
「あのメールって…、私に殺人(さつじん)の依頼(いらい)をしたいってことなの? えっ、どうしよう…。私、どうしたらいいのよ」彼女に恐怖心(きょうふしん)がわき上がってきた。
彼女が文集を段ボール箱に戻(もど)そうとしたとき、いくつもあるノートのひとつに目を止(と)めた。取り出してみると、〈消(け)したい人〉と表紙(ひょうし)に書かれてあった。
<つぶやき>これはどういうことよ。まさか、あの頃の彼女からメールが届いたのかも…。
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