みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1222「油揚げ」

2022-03-26 17:35:23 | ブログ短編

 彩花(あやか)は親友(しんゆう)の芳恵(よしえ)を呼(よ)び出して、おどおどしながら言った。
「あのね…。うちの夫(ひと)、おかしくなっちゃたかもしれないの」
 そんなこと打ち明けられて、芳恵はいぶかしそうに訊(き)き返した。
「おかしいって…、あなたの旦那(だんな)が? いったい何があったのよ?」
「それがね…。二、三日前から変なのよ。いつもはがさつで、服(ふく)なんか脱(ぬ)ぎっぱなしにしてたのに、自分(じぶん)で洗濯(せんたく)カゴの中へ入れるのよ。それに、あたしが作った料理(りょうり)を美味(おい)しいって…。今まで、そんなこと言ったことないのに…。しかも、後片(あとかた)づけも――。お皿(さら)とか、洗(あら)ってくれるのよ。あたしが頼(たの)んでもいないのに…。これは、変でしょ? 絶対(ぜったい)、変よ」
「何が問題(もんだい)なのよ。家事(かじ)を手伝(てつだ)ってくれるなんて、良(い)い旦那じゃない」
「あたなは、うちの夫(ひと)のこと知らないからそんなことが言えるのよ。今のあの夫(ひと)は、あの夫(ひと)じゃない。まるで別人(べつじん)のようで、あたし恐(こわ)いのよ」
 芳恵は、彩花のただならぬ様子(ようす)に、「何かされたの? 暴力(ぼうりょく)とか…」
「いいえ、そういうのは…。昨夜(ゆうべ)ね、スーパーの袋(ふくろ)を下げて帰ってきて、あたしに言うのよ。美味しそうな油揚(あぶらあ)げを見つけたから買ってきたって…。何で油揚げなの? 結婚(けっこん)してから一度も、仕事(しごと)帰りにスーパーに寄(よ)るなんてことなかったのに…」
「これは、あれかもねぇ。何か、やましいことがあるんじゃない? 浮気(うわき)とか――」
 彩花は急に冷静(れいせい)になって、「いや、それはないな…。そういうんじゃないと思う」
<つぶやき>この旦那の変わりようは何を意味(いみ)しているのか? 何かの化身(けしん)なのかもね。
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