月島(つきしま)しずくは、これから何が起こるのか知っているようだった。入口(いりぐち)の鍵(かぎ)が外(はず)れる音がすると、ゆっくりと扉(とびら)が開いた。中に入ってきたのは銃(じゅう)を構(かま)えた男――。
しずくは男に微笑(ほほえ)みかけて、「ごめんなさい。私じゃダメかしら?」
男は不敵(ふてき)な笑(え)みを浮かべて、「月島しずくか…。まさかこんなところで会えるとはな。かまわないさ。ちょっと俺(おれ)と付き合ってくれるか?」
「それはどうかなぁ。あなたが悪(わる)いことはしないって約束(やくそく)してくれたら、考えてもいいわ」
「ふん…。ガキのくせに生意気(なまいき)だな。じゃあ、力づくで連(つ)れて行くだけだ」
男は銃をしずくに向けた。だが、男は気が変わったのか銃をベッドの上に放(ほう)り投(な)げると、ナイフを取り出してにやりと笑(わら)って、
「俺は、こっちの方が好きなんだよ。さぁ、その可愛(かわい)い顔に傷(きず)をつけたくなかったら、おとなしくしてろよ。さもないと――」
「さもないと…? あなたにはムリよ。私には勝(か)てないわ」
男は、しずくに襲(おそ)いかかった。しずくは男の攻撃(こうげき)をかわしながら、男と組(く)み合った。その時、しずくは嗅(か)いだことのある匂(にお)いに気がついた。男を突(つ)き放すと、
「あなたなのね。つくねを手に入れて、どうするつもりだったの?」
男は、女の姿(すがた)に変わっていた。あの、つくねに化(ば)けていた女だ。
<つぶやき>こんなとこにも現れるなんて、神出鬼没(しんしゅつきぼつ)ですね。手強(てごわ)い相手(あいて)になりそうな…。
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