みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0296「バス停にて」

2018-08-21 18:47:33 | ブログ短編

 学校の近くのバス停(てい)で、私はそわそわしながら彼を待っていた。彼といっても、別に付き合ってるわけじゃない。私の片思(かたおも)いなの。今日こそちゃんと告白(こくはく)して。でも…、たぶんムリ。だから、昨夜(ゆうべ)遅(おそ)くまでかかって手紙(てがみ)を書いた。
 もうそろそろ彼が来るはず。クラブ終(お)わりの今しかチャンスはない。早く来てほしいけど、でも――。そんな時、突然(とつぜん)声をかけられた。私が振(ふ)り向くと、そこには同じクラスの友だちが…。何で、こんな時間にいるのよ。その友だちは首(くび)をかしげながら、
「あれ、朋香(ともか)って、こっちじゃないよね。どうしたの、こんなとこで?」
 私は何て答(こた)えればいいのか一瞬(いっしゅん)迷(まよ)った。でも、「あの、ちょっと、こっちに用(よう)が…」
「そう。じゃあ、一緒(いっしょ)に乗(の)ろう。よかった。この時間、知ってる子いなくて」
 どうしよう。私は友だちの話に肯(うなず)きながら必死(ひっし)に考えた。彼女に告白のことを打ち明けようかとも思ったが、そんなことしたらクラス中に広(ひろ)まってしまいそうで…。
 あれこれ考えて、私がふと顔をあげると、彼女の後に彼が、あの彼が立っていた。彼は私たちに声をかけた。私の緊張(きんちょう)は最高潮(さいこうちょう)に達(たっ)した。友だちがそれに応(こた)えて、
「何だ、ヒロ君じゃない。もう、脅(おど)かさないでよ。意地悪(いじわる)なんだから――」
 二人が楽しそうに話しているのを聞きながら、私は気持(きも)ちが落(お)ち込んでいくのを感じた。
<つぶやき>二人はどういう関係(かんけい)なんでしょ。友だち、それとも恋人(こいびと)なのかもしれません。
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0295「彼女の本心」

2018-08-20 18:50:38 | ブログ短編

 彼女の行動(こうどう)には一定(いってい)のパターンがある。喫茶店(きっさてん)で飲むものはハーブティー。食事(しょくじ)はいつもの場所(ばしょ)で、いつものメニュー。飲み物は梅酒(うめしゅ)サワー。僕(ぼく)が他(ほか)のを勧(すす)めても、そこは絶対(ぜったい)に譲(ゆず)らない。ちょっと頑固(がんこ)なところがある。
 でも、彼女の場合、それを他の人には押(お)しつけない。僕が脂(あぶら)ぎった料理(りょうり)を食べていても、あんまり食べ過(す)ぎないでね、と軽(かる)く釘(くぎ)を刺(さ)すだけ。それも怒(おこ)った顔じゃなくて、笑(え)みを浮かべて。そうなると、僕の方も無茶(むちゃ)なことができなくなる。
 彼女は時間にも正確(せいかく)だ。待(ま)ち合わせは、必(かなら)ず十五分前には着いている。だから僕も、待ち合わせをするときは細心(さいしん)の注意(ちゅうい)を払(はら)う。彼女を待たせるわけにはいかないから。それでも、ときに遅刻(ちこく)してしまうときもある。
 いつだったか、十分ほど遅刻したことがあった。待ち合わせの場所に着いたら、そこに彼女の姿(すがた)はなかった。僕は慌(あわ)てて連絡(れんらく)する。すると彼女は、
「今日は帰ります。また誘(さそ)ってくださいね」って、怒った素振(そぶ)りも見せずに電話を切る。
 それ以来(いらい)、僕は遅れるときには必ず連絡することにしている。
 そんな寛大(かんだい)な心を持っている彼女。でも、ふと考えてしまうのだ。彼女は、僕のことをどう思ってるんだろう。いつも穏(おだ)やかな顔をして、我慢(がまん)とかしてるんじゃないのかなぁ。彼女の本心(ほんしん)がどこにあるのか、僕はとっても知りたいです。
<つぶやき>喧嘩(けんか)するほど仲(なか)が良い。思ってることは、ちゃんと伝えた方がいいのかも。
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0294「お買い物」

2018-08-19 19:08:06 | ブログ短編

 子供(こども)を連れてスーパーへお買い物。今日の晩(ばん)ご飯(はん)は何にしようかな?
 あれこれと、店内(てんない)を回ってカゴに商品(しょうひん)を入れていく。家計(かけい)を預(あず)かる身(み)としては、なるべく安くていいものを買わないといけない。私はふっとカゴの中を見た。すると、知らないうちにお菓子(かし)の箱(はこ)が入っている。私はその箱を手に取り、子供に聞こえるようにつぶやいた。「おかしいわね。この子、いつの間(ま)に入ったのかしら?」
 子供は知らん顔して、私の方を見ようともしない。私は続ける。
「きっと連れて行ってほしかったのね」
 子供はここぞとばかり、「きっとそうだよ。僕(ぼく)もそう思う。連れて行ってあげようよ」
 私は残念(ざんねん)そうにつぶやいた。「でもね、今日は連れて行けないわ」
 子供は悲(かな)しそうな顔をして、「どうして?」って訊(き)いてくる。
「だって、今日はこの子の順番(じゅんばん)じゃないんだもん」
「順番って? でも、きっと家に来たがってるよ。かわいそうじゃない」
「でもね、順番はちゃんと守(まも)らないといけないわ。そう思わない?」
 子供はまだ納得(なっとく)してないようだ。私は少し考え込んでから言った。
「この子の順番は…。きっと明日ぐらいだと思うわ。それまで待っててもらおうよ」
 子供はしぶしぶ肯(うなず)いた。私は、「じゃあ、ものと場所に帰してあげよ。お願(ねが)い」
<つぶやき>子供の頃(ころ)、買ってとせがんだことありませんか? 親(おや)になるといろいろと…。
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0293「最終電車」

2018-08-18 18:54:42 | ブログ短編

 電車(でんしゃ)の中でうとうとしていた私。微(かす)かに駅(えき)の名前が繰(く)り返し聞こえてきた。私はハッと目が覚(さ)める。その駅名は、私の家とは反対方向(はんたいほうこう)の駅だったのだ。駅のアナウンスが、最終(さいしゅう)電車であることを告(つ)げていた。私は急いで扉(とびら)へ向かった。しかし、無情(むじょう)にも私の鼻先(はなさき)で扉は閉まってしまった。
 私は扉から外を見た。でも、その景色(けしき)は何だか歪(ゆが)んでいて、まるで知らない駅のようだ。私は次の駅で降(お)りようと思った。だが、どういうわけか次の駅名が思い出せない。車内の路線図(ろせんず)を見てみたが、何だかぼやけていてはっきり見えない。
 次の駅で電車が停(と)まると、私はホームに降り立った。何だかおかしな感じだ。駅名がどこにも書かれていないし、木造(もくぞう)の駅舎(えきしゃ)は昭和(しょうわ)のレトロの雰囲気(ふんいき)を漂(ただよ)わせている。駅員(えきいん)に訊(き)こうと駅舎(えきしゃ)へ向かう。改札口(かいさつぐち)は自動改札(じどうかいさつ)ではなかったので、私はそのまま外へ出た。
 駅員らしき人物(じんぶつ)が、掲示板(けいじばん)に何かを貼(は)っているのが見えた。私は側(そば)へ行ってみる。最初(さいしょ)、少し高い所に見えたので、脚立(きゃたつ)にでも乗っているかと思った。でも、そうではなかった。驚(おどろ)いたことに、その人物の下半身(かはんしん)がなくなっているのだ。上半身(じょうはんしん)だけが宙(ちゅう)に浮(う)いた感じ。
 そこで、私は目が覚めた。何でこんな変な夢(ゆめ)を見てしまったのか。でも、私はホッとした。無事(ぶじ)に家に帰ることができたから。あまりにもリアルな夢の話です。
<つぶやき>電車に乗っていると、ついつい眠くなってしまいます。気をつけましょう。
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0292「爆弾娘」

2018-08-17 18:53:15 | ブログ短編

 社内(しゃない)の若者(わかもの)たちが新年会(しんねんかい)を開いていた。そこへ、ひとりの女性が入って来た。彼女を見るなり、その場にいる人たちのざわめきが聞こえた。
「誰(だれ)だよ。あいつを誘(さそ)ったのは?」男性のひとりがささやいた。
「幹事(かんじ)の斉藤(さいとう)だろ。あいつ、なに考えてんだよ。爆弾(ばくだん)娘を呼ぶなんて」
 それは、社内恒例(こうれい)の忘年会(ぼうねんかい)のとき。酔(よ)っぱらった彼女が叫(さけ)んだのだ。
「山崎(やまさき)部長は、部下(ぶか)と不倫(ふりん)をしています。そんなこと、許(ゆる)してもいいんですか!」
 その場では酔っぱらいのたわごとで済(す)ませたが、どうやら社内調査(ちょうさ)が入ったようだ。年明けを待たずして、山崎部長は異動(いどう)の辞令(じれい)を受けることになった。
「そういえば、斉藤は忘年会のときいなかったからなぁ」
「それにしたって、噂(うわさ)ぐらい聞くだろう。これだけ、社内中に広まってるんだから」
「あれ、斉藤じゃないか? 何だよ。あいつ、爆弾娘に話しかけてるぞ」
「おい、彼女にビールをすすめてるぞ。斉藤、起爆(きばく)装置(そうち)のスイッチを入れるつもりか?」
 側(そば)にいた人たちが、さり気なく斉藤を会場(かいじょう)から連れ出したのは言うまでもない。
 実(じつ)のところ、彼女の酒癖(さけぐせ)のことを知っている誰かが、不倫のことを耳打(みみう)ちしたのだろう。彼女は、酔っぱらっていた時のことは全く覚(おぼ)えていないようだ。次は、誰が犠牲(ぎせい)になるのかと、社内中が戦々恐々(せんせんきょうきょう)、疑心暗鬼(ぎしんあんき)となっていた。
<つぶやき>一番迷惑(めいわく)してるのは彼女かもしれません。お酒は程(ほど)ほどにしておきましょう。
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