みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0178「データ消失」

2018-03-17 19:15:15 | ブログ短編

「ねえ、頼(たの)んでおいた資料(しりょう)できてる?」凜子(りんこ)は会社へ戻ると、新人(しんじん)の百花(ももか)に訊(き)いた。
「それが…」百花は首(くび)を傾(かし)げなら言った。「この子、変なんですぅ」
 凜子はパソコンの画面(がめん)をのぞき込(こ)んだ。しかし、パソコンの電源(でんげん)は落(お)ちていて――。どういうことか訊こうと百花の方を見ると、彼女は電源コードの先(さき)を持っていた。
「えっ? まさか、プラグを抜(ぬ)いちゃったの?」
「はい。だって、全然(ぜんぜん)動かなくなっちゃって」
「動かないからって、プラグ抜いたらダメでしょ。データはちゃんと保存(ほぞん)したでしょうね」
「保存ですか?」百花はまた首を傾げて、「よく分かんないですぅ」
「よく分かんないって…。あなた、パソコン使えるんでしょ?」
「はい。家で、ゲームとかやってましたから。あたし、得意(とくい)なんです」
「そういうことじゃなくて…。もういいわ。プラグ、元(もと)に戻して」
 凜子はパソコンを立ち上げてみる。しかし、あるべきはずのファイルもフォルダーもなくなっていた。最後(さいご)の望(のぞ)みのゴミ箱も空(から)の状態(じょうたい)。
「どうして? 何でなにも残(のこ)ってないのよ」凜子はかなりうろたえていた。
 でも、百花は平然(へいぜん)と言ってのける。「なんか、削除(さくじょ)すれば動くのかなって思ってぇ」
<つぶやき>バックアップはちゃんととっておきましょう。何があるか分かりませんよ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0177「幸せ捜し」

2018-03-16 19:16:18 | ブログ短編

 ひかりは、今どきの子には珍(めずら)しく本好きときている。家の近くに図書館(としょかん)があるので、毎日のように通(かよ)っていた。彼女は、そこの蔵書(ぞうしょ)をすべて読破(どくは)するのを目標(もくひょう)にしていた。
 ある日のこと、家で借(か)りてきた本を読んでいると、一枚のカードが挟(はさ)まれているのを発見(はっけん)した。そのカードには本のタイトルとページ数が書かれ、最後(さいご)に〈あなたは幸せを手にできる〉と書き添(そ)えられていた。
 最初(さいしょ)、誰(だれ)かのイタズラだと彼女は思った。でも何となく気になって、次の日に図書館でその本を捜(さが)してみた。彼女にとって本を捜すのは容易(たやす)かった。目当(めあ)ての本を見つけると、指定(してい)されたページを開(ひら)いてみる。そこには、またカードが挟まれていて、本の名前とページ数が記(しる)されていた。そして最後に、〈あなたは幸せに一歩近づいた〉とあった。
「もう、何なのよ」ひかりはじれったそうにつぶやいた。
 ここまできたら途中(とちゅう)で止められない。彼女は次の本へと向かった。だが、その本はなかなか見つからなかった。彼女は図書館の人に訊(き)いてみた。すると、
「ああ、その本なら貸(か)し出し中ですね。たぶん、来週には返却(へんきゃく)されると思いますが」
「そんな…。あたし、どうしてもその本が必要(ひつよう)なんです」
「でもこの本、人気(にんき)があるみたいで、戻(もど)って来てもすぐ次の人が借りていきますからね」
 彼女は愕然(がくぜん)とした。そんな人気のある本なのに、あたし、まだ読んでないなんて…。
<つぶやき>その本にはどんな幸せが記されているのか。読んでみたいと思いませんか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0176「輪廻転生」

2018-03-10 19:07:30 | ブログ短編

「本当(ほんとう)に殺(ころ)したのか?」取調室(とりしらべしつ)で刑事(けいじ)が自首(じしゅ)してきた男に訊(き)いた。
「ほんとです。間違(まちが)いありません」浅黒(あさぐろ)い顔の男は大きな両手(りょうて)を前に出して、「この手で、その女の首(くび)をしめたんです」
「しかしなぁ」刑事はため息(いき)をつき、「お前の言った場所(ばしょ)に死体(したい)なんかなかったぞ」
「そんなはずありません。だって、ほんとに俺(おれ)、やったんですから」
「じゃ訊くが、その女とはどこで知り合ったんだ」
「どこって…」男は口ごもった。「それは、あの…」
「警察(けいさつ)もヒマじゃないんだぞ。そんないい加減(かげん)なことで世話(せわ)やかすなよ」
「待って下さいよ。言います、言いますから」男は刑事にすがるように話しはじめた。
「公園(こうえん)にいたら、向(む)こうから話しかけてきたんです。遊(あそ)ばないかって…」
「それで」刑事は先を促(うなが)した。
「それで…。変だなって思ったんですよ。あんな奇麗(きれい)な人が、俺なんか相手(あいて)にするはずないし。だから俺、断(ことわ)ったんですよ。そしたら……。俺、首をしめてました」
「もう帰っていいよ。お前の作り話に付き合ってられるか」
「そんな。また女が近づいて来たらどうするんですか? もう、殺したくないんです!」
<つぶやき>この男の手にかかると、生まれ変わることができる。そんな噂(うわさ)があるとか…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0175「ナンパなの?」

2018-03-08 19:22:11 | ブログ短編

 さよりは友達(ともだち)のホームパーティーに来ていた。どうしてもって誘(さそ)われたのだ。彼女は内気(うちき)でおしゃべりも苦手(にがて)。こんな華(はな)やかなところでは、どうしたらいいか分からず隅(すみ)の方で小さくなっていた。そんな彼女の横(よこ)に男性が座(すわ)り込んだ。彼女はビクッと身体(からだ)をこわばらせる。
「ねえ、ここいいかな?」彼は赤みが差(さ)した顔に笑顔(えがお)を浮かべて訊(き)いた。
「あっ…、はい」彼女は消(き)え入るような声で答えた。
「今度、ハイキングの計画(けいかく)があるんだけど、君も行かない?」
「えっ…。あ、私は――」彼女は少し困(こま)った顔をしたが、「酔(よ)っぱらってるんですか?」
「うーん、ちょっとね。でも、全然(ぜんぜん)そんなんじゃないから。俺(おれ)は…」
 その時だ。離(はな)れたところから彼を呼ぶ声がして、ほかの男性が近寄って来て言った。
「おい、タカシ。また、ナンパか? お前もこりない奴(やつ)だな」
「バカ、違(ちが)うよ。そんなんじゃないって」彼はそう言うと、その友だちを追い払(はら)った。そして、さよりの方に向き直って、「ほんと、違うから。あいつ、酔っぱらってて、いい加減(かげん)なこと言ってるだけだからさ。これは、ナンパなんかじゃなく…」
「あの、いいです。私、そういうのは…」彼女は目をそらして言った。
「じゃあさ…。君は、何がしたい? 俺、付き合うから。何でも言ってよ」
 さよりは彼の真意(しんい)が分からず、この場から逃(に)げ出したい気持ちで一杯(いっぱい)になっていた。
<つぶやき>少しずつでいいんです。自分の世界を広げてみませんか? 何か変わるかも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0174「ひとりぼっち」

2018-03-07 19:13:58 | ブログ短編

「ほんとに助かったわ」
 愛子(あいこ)は奈津(なつ)に言った。「あなたの言う通りだったの。あいつ、やっぱり浮気(うわき)してたのよ。もう、すっぱり別れてやったわ」
「そうなの」奈津は、はにかむようにうつむきながら言った。
「またお願(ねが)いね。今度こそいい男を捕(つか)まえてみせるから」
 愛子は颯爽(さつそう)と行ってしまった。残(のこ)された奈津はため息(いき)をつく。
 ――奈津には不思議(ふしぎ)な力があった。それは、人の未来(みらい)を予見(よけん)することができるのだ。他の人からはありがたがられたりするのだが、当(とう)の本人には何の役(やく)にも立っていない。
 好きな人ができても、その人の未来に自分が存在(そんざい)しないことが分かってしまうと――。これほど辛(つら)いことはないのかもしれない。だから、彼女はなるべく人を見ないようにしていた。いつもうつむいて歩(ある)き、必要(ひつよう)以上に人と関(かか)わらないようにしていた。
 奈津はボンヤリと歩き出した。その時だ。何かにぶつかり、彼女は尻(しり)もちをついた。
「大丈夫(だいじょうぶ)?」若い男が彼女に手を差(さ)し出した。「ゴメン。気づかなくて」
 奈津は彼を見て思わず叫(さけ)んだ。「私と付き合って下さい!」
 彼女は自分が言ってしまったことに驚(おどろ)き、顔を真っ赤にさせた。でも、本当(ほんとう)に嬉(うれ)しかったのだ。未来が見えない人に初めて出会(であ)えたのだから。
<つぶやき>好きになった人の未来を見ることができるとしたら。あなたはどうします?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする