みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0174「ひとりぼっち」

2018-03-07 19:13:58 | ブログ短編

「ほんとに助かったわ」
 愛子(あいこ)は奈津(なつ)に言った。「あなたの言う通りだったの。あいつ、やっぱり浮気(うわき)してたのよ。もう、すっぱり別れてやったわ」
「そうなの」奈津は、はにかむようにうつむきながら言った。
「またお願(ねが)いね。今度こそいい男を捕(つか)まえてみせるから」
 愛子は颯爽(さつそう)と行ってしまった。残(のこ)された奈津はため息(いき)をつく。
 ――奈津には不思議(ふしぎ)な力があった。それは、人の未来(みらい)を予見(よけん)することができるのだ。他の人からはありがたがられたりするのだが、当(とう)の本人には何の役(やく)にも立っていない。
 好きな人ができても、その人の未来に自分が存在(そんざい)しないことが分かってしまうと――。これほど辛(つら)いことはないのかもしれない。だから、彼女はなるべく人を見ないようにしていた。いつもうつむいて歩(ある)き、必要(ひつよう)以上に人と関(かか)わらないようにしていた。
 奈津はボンヤリと歩き出した。その時だ。何かにぶつかり、彼女は尻(しり)もちをついた。
「大丈夫(だいじょうぶ)?」若い男が彼女に手を差(さ)し出した。「ゴメン。気づかなくて」
 奈津は彼を見て思わず叫(さけ)んだ。「私と付き合って下さい!」
 彼女は自分が言ってしまったことに驚(おどろ)き、顔を真っ赤にさせた。でも、本当(ほんとう)に嬉(うれ)しかったのだ。未来が見えない人に初めて出会(であ)えたのだから。
<つぶやき>好きになった人の未来を見ることができるとしたら。あなたはどうします?
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