みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1109「秘密」

2021-08-09 17:34:53 | ブログ短編

 あたしは、あの人に秘密(ひみつ)を知られてしまった。誰(だれ)にも知られてはいけないのに――。
 あの人は、死(し)ぬ間際(まぎわ)、あたしに言った。
「バカな女だ。俺(おれ)が…、お前の秘密を、誰にもしゃべらないとでも思ったのか……」
「えっ…、どういうことよ。あなた、誰かに教えたの? 誰よ、誰に――」
 あの人は、永遠(えいえん)の眠(ねむ)りについていた。あたしは、また人生(じんせい)を踏(ふ)み間違(まちが)えたようだ。あの人の言う通(とお)りだ。バカな女……。そうよ、あたしはそういう女よ! すぐに感情的(かんじょうてき)になって、間違いを起(お)こしてしまう。でも、いいわ。あの人は死んだ。もう、これで終(お)わりよ。
 数日間は、何事(なにごと)もなく過(す)ぎていった。あたしも普段(ふだん)の生活(せいかつ)に戻(もど)っていた。でも、それは突然(とつぜん)やって来た。誰だか分からない人からメールが届(とど)いた。その文面(ぶんめん)は――。
〈私はお前の秘密を知っている。これだけは忘(わす)れるな。私は、いつもお前を見ている〉
 メールの最後(さいご)に画像(がぞう)があった。それを見たあたしは、身体(からだ)が震(ふる)えた。そこには、あの人にしたことが写(うつ)っていた。どうして…。あたしは、恐(こわ)くなって周(まわ)りを見回(みまわ)した。
 あの場所(ばしょ)に、誰かがいた? あの人の仲間(なかま)…。それとも…。誰よ、誰なの! あたしに、どうしろって言うのよ。それからというもの、あたしは疑心暗鬼(ぎしんあんき)になってしまった。
 ある日、不意(ふい)に声をかけられた。それは警察(けいさつ)の人だった。あたしは、なぜかホッとした。
<つぶやき>誰にも秘密はあるものです。でも、秘密を守るために道(みち)を踏み外(はず)さないでね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする