みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1116「占い師」

2021-08-24 17:35:44 | ブログ短編

 顔には人生(じんせい)が表(あらわ)れるといいますが、人の顔には年輪(ねんりん)のようなものが刻(きざ)まれていくのでしょう。ここにも、その年輪を刻んできた男がいます。
 ――彼女は占(うらな)い師(し)。といっても、駆(か)け出しの新米(しんまい)である。そんな彼女の前に、強面(こわもて)のお兄さんが座(すわ)ってしまった。この男、顔を見ただけでやばい人だと分かるほど。
 彼女は、おどおどしながら男に訊(き)いた。「あの…、何を占ったら…」
 男はぎょろりと彼女を見て、「そりゃもちろん、金と女だろ。それ以外(いがい)にあるのか?」
「ああ…。そうですねぇ。分かりました。じゃあ、金運(きんうん)と…結婚運(けっこんうん)を…」
 もう、消(き)え入りそうな声で彼女は答(こた)えた。彼女にとってこの人が最初(さいしょ)のお客(きゃく)。もう、最悪(さいあく)って感じ。それでも彼女は、真剣(しんけん)に男の顔を見つめた。男は、何を勘違(かんちが)いしたのか、
「なに見てんだよ。がんつけてんじゃねぇぞ、こらっ!」
 彼女は思わず飛(と)びのいて、「す、すいません。ご、ごめんなさい。あ、あたし、そんなつもりじゃ…。あの…、あたし、人相(にんそう)を見てるだけなんです」
 男はばつが悪(わる)そうに、「そうか…、悪かったな。まあ、気にすんな。なぁ」
 彼女は座り直(なお)すと、「あの…。じゃあ、とりあえず…えっと……」
 彼女は泣(な)きそうな顔になっていた。男は、彼女の方を気にすることなく言った。
「で、どうなんだ。この先(さき)、良(い)いことあるんだろうなぁ。ちゃんと見てくれないと…」
<つぶやき>この後、大丈夫(だいじょうぶ)だったのかな? 彼女の占い人生、ここからスタートだね。
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