「何なのよ、これ!」美咲(みさき)はベランダに出て叫(さけ)んだ。
狭(せま)いベランダいっぱいに特大(とくだい)のプランターが置かれていた。
「いいでしょ」日菜子(ひなこ)は嬉(うれ)しそうに、「ネットで見つけたの。癒(いや)されちゃうんだって」
「癒されるって、どういうことよ?」
「よく分かんないけど、そう書いてあったわ。でね、これから収穫(しゅうかく)しようと思って」
「はぁ? でも、葉(は)っぱも出てないし、変な茎(くき)が伸(の)びてるだけじゃない」
「ねえ、手伝(てつだ)ってよ。そのために来てもらったんだから」
美咲は渋々(しぶしぶ)引き受けた。変な茎のようなものを二人でそっと引っ張り上げる。土が少しずつ盛(も)り上がってきて、ぴょこっと大きなものが顔を出した。とたんに、美咲は悲鳴(ひめい)を上げた。顔を出したのは、大きな芋虫(いもむし)のような――。
「わ~ぁ、かわい~いィ」日菜子はそう言うと芋虫のようなものの頭をなでて、「もう、ぷよぷよしてるぅ。これって、モスラじゃない?」
美咲は部屋の隅(すみ)まで逃げ出して、「いやだ! あたし、虫(むし)とかダメなんだから…」
「かわいいのにぃ。これって、本物(ほんもの)かな? 生きてるといいなぁ」
「そんなわけないでしょ。作り物に決まってるわ」美咲はべそをかきながら言った。
二人が見つめていると、それはモゾモゾと動き出し、土の中から這(は)い出した。
<つぶやき>ネットで何でも買えちゃう。でも、まさかこんなものまで売られてるなんて。
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