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高橋洋一「霞ヶ関埋蔵金男が明かす『お国の経済』」の読後感想文

2008年09月05日 | 日本の政治と経済
著者は、東大理学部数学科と経済学部経済学科を卒業した後、大蔵省に入省した元大蔵官僚なのに、小泉内閣の内閣参事官として、「小泉・竹中改革」を支えた。
著者によると、日本政府の財政は大赤字だと言われるが、それは一般会計についてのみ当てはまることで、特別会計は黒字だそうだ。問題になったガソリン税はまさにその中に含まれている。著者によると、国土交通省は道路特別財源で10年間に60兆円が必要だというが、実際に必要なのは、10年間で20乃至30兆円である。将来人口や免許保有者数、自動車保有台数などから今後の道路需要を推計して作られた「交通需要推計」を見ても、道路需要は、2020年をピークにして、後は縮小することが明らかである。言い換えれば、かなり多くの道路の需要がどんどん減るという。そうだとすると、「道路特定財源」というものは必要ではなく、一般財源化するのが正しい。
 また、従来、道路などの公共事業に税金を投入すれば、雇用が確保できると言われてきたが、それは為替が固定相場だった時代の話で、変動相場制になると財政政策は効き目がなく、金融政策のほうが有効になる。その理由は、財政政策で公共投資を増やす場合は、国債を発行せねばならない。しかし、国債を発行して民間から資金を集めると金利が高くなる。金利が高くなると為替は円高になる。そうすると輸出が減る。公共投資によって内需は増えるが、それは、輸出減によって相殺されてしまうと著者は言う。これが公共投資が景気回復に役立たない理由である。1990年以後、このように公共投資を続けた結果、赤字国債が増え続けた。
 公共投資でだれが得をしたかと言えば、大手ゼネコンとそれに仕事を回して賄賂をもらった国会議員や知事や地方議員である。(この2行は私の意見です。)
 著者は、政府と国会の両方をうまく操って省益を守ることに役人がどれほど智恵を絞っているかをはっきりと見せてくれる。日本政府の財政政策・金融政策に疑問を感じる人たちにこの本を推薦します。
出版社:文藝春秋社の文春新書
値段:700円
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