海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「地震の後」と題する『ツァイト・オンライン』の記事

2009年11月14日 | 日本の政治と経済
「日本の政治は中国と同じだった」と昼食の際、老齢の企業の会長は笑った。彼のやせた顔には沢山の喜ばしいしわが刻まれている。「だっていつも同一の政党なんだ。」彼自身には常にうまくいっていた。日本だけでなく、世界中のすし屋では、彼の会社が作った醤油が机の上に置かれている。自分の名前が新聞に出るのを好まないこの男は、自由民主党の54年間の支配の間、富裕に強大になった。そして彼とともに、国中が豊かになった。アジアの事情から見ると、それどころか童話的に豊かになったのだ。
だが、いつの頃からか、日本人は自民党にうんざりし始めた。この日本株式会社の年取って歯の抜けた政党に。銀座のバーでの猟官運動、政治的寄付スキャンダル、無意味な巨大プロジェクトを巡る大企業との取引、これらすべてが日本人に毎年、反感を呼び起こした。
二ヶ月ほど前、憤懣がついに爆発した。8月30日の衆議院議員選挙の際、民主党は、480議席のうち、308議席を獲得した。それ以来、日本の政治はそれ以前とはまったく異なる。
2001年にも、一度、自民党について同じことが起こりえた。だが、この党は、チャーミングな改革好きの候補者を競争に出した。小泉純一郎は、選挙に勝ち、自民党に最後の執行猶予を与えた。「いまや自民党は全く堕落している」と国際交流センターの山本タダシは言う。小泉の後継者たちは、この党に止めを刺した。三年間に三人の無力な顔の無い首相が入れ替わったが、彼らの名前はほとんど記憶に無い。自民党が退場する時間だった。
日本ほど、しばしば、地震が揺れるところは、世界中どこにもない。しかし、政治的には、自民党が創設された1955年以来、何も動かなかった。1993年から94年にかけて、野党が短期的に権力を握ったけれども。与党が統治し、野党は無意味になった。その次期は終わった。日本の政治は緊張したものになった。
新しい鳩山首相は、興奮のあまり、政権奪取を1868年の「明治維新」に喩えた。それ日本が近代世界に突入したことを記し付けたのだ。主権はいまや国民に返還されたのだ。しかし、それが起こるためには、まず第一に、官僚政治が克服されなければならない。
日本の物言わぬ官僚軍は、新時代の最初の犠牲である。自民党や産業界と共同で、彼らは悪名高い「鉄の三角地帯」を形成してきた。この権力カルテルを、民主党を打ち破ろうとしている。そうしてのみ、汚職と浪費は克服できると民主党は信じている。
 「天下り」制度は、その一部である。高級官僚は、50才半ばで、国家の奉仕を辞め、私企業のなかの給与のいいポストに鞍替えするのだ。今後、それは禁止されるだろう。
民主党の考えでは、官僚は、政党に従うべきである。これまでは、むしろ逆だった。省庁の役人は、大臣に言うべきことを教え込み、大臣は、それを議会で棒読みにした。政策の方針を与えるために、現在、大臣と政務次官とは深夜まで、書類に首を突っ込んでいる。
 最近、沖縄の米軍基地の将来について交渉するために、ロバート・ゲイツ国防長官が東京にきた際、岡田克也外務大臣は役人を一人も同席させなかった。ワシントン駐在の日本大使でさえ、話し合いに同席することを許されなかった。
 「混乱」が日本の外交を支配していると東京中で言われた。ワシントンとの関係は妨げられていると言われた。日本には、4万7千人の米兵が駐屯している。その半数は沖縄にいる。数十年間、米国は防衛力だと考えられた。その核の傘の下で、自分の福祉は増大された。
 鳩山政府は、いまや、米国と対等に話をしようとしている。自民党が骨折って交渉した基地協定を、民主党ははじめて執行停止しようとしている。民主党はまた、インド洋での給油でアフガン戦争をこれ以上支持するつもりはない。
 民主党によれば、ワシントンが日本に対して連帯行動を要求すると、この国がそれに従う時代は過ぎたのだ。今週、東京を訪れるバラク・オバマは、自分の領域にもっと強力に目を向けようとしている政府に出くわすだろう。中国が軍事的な脅威でありつづけるとしても。特に、中国は、門前の巨大市場である。二つの隣国の間の貿易は、とっくに日米間の貿易よりも大きくなった。
 鳩山由紀夫は、欧州同盟を模範として、「東アジア共同体」を夢見ている。米国の参加はそこでは、予想されていない。
 ワシントンはいらだっている。まるで、他の心配はないかのように、よりによって、日本の古い誠実な同盟国が愚痴をこぼし始めた。
 ひょっとしたら、新しい政府とともに、既に20年前にアメリカによってもはや後見されない「普通の日本」を宣言したある男が政権に着いたためである。目下、日本では第二番目がいない一人の権力政治家小沢一郎は、彼が1993年に自民党から抜け出したとき、その前に既に自民党で幹事長にまで上り詰めていた。彼の育ての親は、田中角栄であり、彼は戦後に政府のトップになった最大の悪漢であり、非常に抜け目の無い黒幕だった。現在、小沢は、民主党の党首である。
小沢と鳩山とは、奇妙なコンビをなしている。鳩山は、タイヤ・コンツェルンの「ブリジストン」の遺産相続人の一人として、ものすごい富の中に生まれて、理想主義者である。正義についての彼の考えは、フランス革命の約束だった「友愛」に基づいている。小沢はそれを密かにあざ笑っているかもしれない。(以下略)
[訳者の感想]ツァイトの東京特派員であるマチアス・ナスが書いた記事です。ところどころ勘違いがあるように見えますが、一応正確な報道と言えるのではないでしょうか。
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