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海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「イスラエル兵、ヒズボラの戦術をほめる」と題する『アルジャジーラ・テレビ』局の記事。

2006年07月24日 | 国際政治
 彼らは、その兵士が死を恐れない、知的で良く準備された無慈悲なゲリラと戦っていたと言う。
 「奴らを負かすことは難しい。奴らは何も恐れない」と一人の兵士は言った。
兵士達は、家屋と家屋の間の撃ち合いや村の道での撃ち合いを描写し、ヒズボラの兵士が茂みから飛び出してきてカラシュニコフ銃を発射したり、ロケット推進式の迫撃砲や対戦車砲を撃つ様を描き出した。
 イスラエル軍のコメントは、ヒスボラを無力にしようとする際に、イスラエルが直面する巨大な挑戦を裏書している。
 既に少なくとも380人のレバノン人を殺したイスラエルの巨大な火力にもかかわらず、何人かの軍事アナリストたちは、戦争は特にイスラエルに都合よくは行っていないと言う。
 イスラエルは、ゲリラを十分押し戻したり、彼らのロケットがイスラエル北部に打ち込まれ、死傷者を引き起こすのを止めることができない。
 過去数日の間に、イスラエルは、国境から500メートル入ったレバノン南部の小さな村落であるマルーン・アル・ラスを制圧しようと戦った。
 軍当局は、軍が村を制圧したと言ったが、日曜日にはまだ銃撃や砲撃による爆発が聞かれた。
 現場の将校は、まだ戦闘が続いていると認めた。「彼らはわれわれが予想したような仕方で戦わない。彼らは予想よりもずっと激しく戦った。彼らは自分自身の土地でうまく戦っている。」
 一人の兵士は、「オリーブ・グリーンの服を着たゲリラ兵は、自分たちを混乱させる」と言った。なぜならば、イスラエル兵も同じ色の服を着ているからである。
他の兵士によると、ヒズボラ兵は、地下壕に潜み、安全だと分かるとそこから出てきて戦闘する。
 イスラエル軍は、地下壕からは離れ、誘導ミサイルが破壊するように兵力を調整する。
「彼らを打ち負かすには一夏かかる」とミカエル・シドレンコは言った。
「奴らは正規兵ではなく、ゲリラだ。奴らは頭がいい。」
 シドレンコは、ヒズボラ兵がレバノンの民間人の背後から銃を撃つのを見た。「それがわれわれの兵士が撃たれる理由だ。」
 戦闘が始まってから、殺された19人のイスラエル兵士のうち、5人は、マルーン・アル・ラスを制圧しようとして死んだ。
 兵隊の死を避けるために、イスラエル軍は、その地上での侵入を国境に近いピンポイントの作戦に限定することに決定した。
 だが、軍事アナリストによれば、この戦術は、ヒズボラを押し戻し、イスラエルを攻撃する能力を破壊するというイスラエルの目標を達成するには不十分である。
 ヒズボラをすごいと記述する兵士ばかりではない。一人の兵士は、「イスラエル軍が戦闘車に乗って現れると、ゲリラは、ひよこのように逃げた」と言う。
 他の兵士達は、ヒズボラが、なぜマルーン・アル・ラスのある丘のふもとにいた二ダースあまりの戦闘車両と数百人のイスラエル兵士を攻撃しなかったか不思議がっている。
 大抵の兵士は、ゲリラがむしろ彼らのロケットをハイファのような主要なイスラエルの都市にねらいを定めていたと思っている。
 兵士達は、ヒズボラが、イスラエル兵が戦車や装甲車でマルーン・アル・ラスに近づいたとき、彼らを攻撃するのを控えたと言う。むしろ彼らはイスラエルの部隊が村落に到着するのを待ってから、攻撃を開始した。
 戦闘は、ゲリラがイスラエルが2000年にレバノンから撤退してから、地下壕を掘り、武器を蓄え、戦術を研究するのに6年かかったことを示している。
「彼らはわれわれがどこにいるか、われわれが何をしているか、どのような種類の武器をわれわれが持っているか良く知っている」とシドレンコは言う。「だが今戦うほうが後で彼らがもっと強くなってから戦うのよりましだ。」
[訳者の感想]アルジャジーラ・テレビは、この記事を書くのに、イスラエル側に入り込んで取材しているようです。立派な記者魂と言うよりありません。アルジャジーラ記者の取材を認めたイスラエル軍の態度もたいしたものだと思います。
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「長引く植民地戦争」と題するタリク・アリの論説。

2006年07月23日 | 国際政治
 1967年の6日戦争の後で行われた彼の最後のインタビューで歴史家のアイザック・ドイッチャーは、次のように言った。「アラブ諸国に対するイスラエルの戦争を正当化したり、大目に見ることは、イスラエルに対して非常に悪いサービスをすることであり、その長期的な国益を損なうことだ。」イスラエルとプロシャとを比較しながら、「ドイツ人たちは彼ら自身の苦い経験を『勝ったために死ぬこともある』と表現した。」
 今日、イスラエルの行為において、われわれは傲慢のいくつかの要素を探知する。つまり、帝国の傲慢、現実の歪曲、その軍事的優位を意識していること、弱い国の社会基盤を破壊する際の自己正当化、人種的に自分たちが優れているという信念などである。「ガザやレバノンにおける民間人の生命の喪失は、たった一人のイスラエル兵士の死ほどは問題にならないのだ。この点で、イスラエルの行動は、アメリカによって、正当だと認められている。
 ガザに対する攻勢は、選挙に勝ったという理由でハマスを破壊するように計画されている。ガザにいた「国際社会」は、集団的な処罰を蒙った。無辜の人々が死につづけている。このことはG8のメンバーにとっては、なんでもない。何もなされなかったのだ。
 イスラエルの無謀さは、アメリカ政府によって承認されている。この場合、彼らの利害は一致している。彼らはヨルダンを手本にしてレバノンをイスラエルとアメリカの保護国にすることで、シリアを孤立化し、転覆したいと思っている。彼らは、これがレバノンのもともとのデザインだと主張している。現在のレバノンは、大部分フランス殖民地主義の人工的な産物だ。少数派のマロン派キリスト教徒によって支配された地域を形成するために、それはシリアから切り取られた。
 この国の信者の分布は、一度も正確に人口統計に記載されたことがない。そのわけは、多数派モスレムが政治的システムにおいて正当に代表されることを恐れたためである。パレスチナ人難民の苦境によって高まった宗派的緊張は、1970年代に内戦に発展し、アメリカの暗黙の承認のもとで、シリア軍の介入を招いた。
 レバノン首相ラフィック・ハリリの暗殺は、シリア軍の撤退を要求する中産階級による巨大なデモを引き起こし、西欧の援助組織は、「レバノン杉革命」の進行を助けにやってきた。ワシントンとパリに後援されて、シリアは撤退し、ベイルートに弱い政府ができた。だが、レバノンの諸派は、羽を広げたままだった。(シリア寄りの)ヒスボラは、武装解除されなかった。
 私が5月にベイルートにいたとき、イスラエル軍がレバノンに侵入して、パレスチナ人の集団出身の二人の「テロリスト」を殺した。パレスチナ人のグループは、ロケット砲で応戦した。イスラエルは、国境近くの村と司令部に50発の爆弾を投下した。
 最近のイスラエルの攻勢は、敵の城を取るように計画されている。それは成功するだろうか?長引く植民地戦争が控えている。なぜならば、ヒズボラは、ハマスと同様、大衆の支持を得ている。アラブ世界は、その力を植民地占領軍に抵抗する「自由の戦士」だと見なしている。
イスラエルの収容所には、9千人のパレスチナ人政治犯が収容されている。それがイスラエル軍兵士がつかまる理由なのだ。結果として囚人の交換が行われる。イスラエルの最近の攻勢を根拠にしてシリアとイランを非難することは、軽薄である。パレスチナ問題が解決され、イラクの占領が終わるまで、この地域には平和はないだろう。「国連」がヒズボラを抑え、イスラエルを抑えないというのは、馬鹿げた考え方だ。
[訳者の感想]レバノン紛争についてアラブ側の意見を聞いてみたいと思って訳しました。
タリク・アリは、小説家、歴史家、評論家、映画製作者で、『ガーディアン』紙以外にもよく寄稿しているようです。
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「シリアは、火遊びをしている」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2006年07月22日 | 国際政治
フアド・シニオラ・レバノン首相は、新たな中東紛争の即時停戦を要求し、板ばさみの国のために「包括的な解決」を助けるように国際社会に呼びかけた。
一見すると、パラドックスである。レバノン南部とベイルートの住民が苦しんでいるイスラエルの軍事攻撃は、包括的解決の前提を作り出すかもしれない。なぜならば、ヒズボラが国家の中の国家として、その主たる目標がイスラエルを消すことである独自の外交政策を押し進めることができたので、レバノンは意思に反して戦争に巻き込まれたからである。
シニオラ自身は、はっきりとヒズボラとそのテロリズムとは距離を置いていた。イスラエルがヒズボラ民兵を一時的にでもイスラエル国境の近くから追放し、現時的に決定的に弱体化させるのに成功すれば、レバノン政府軍も国連平和部隊も到達できない目標に到達しただろう。目下の国民の苦しみに関しては無情に響くかもしれないが。
それゆえ、停戦への国際的な呼びかけが比較的湿り勝ちなのは偶然ではない。過去の経験が示しているのは、中東における一時的解決は遅かれ早かれ新たな紛争あるいは戦争に導くということである。
この確信は、イスラエルの強硬な軍事力投入の背景にあるだけでなく、アラブ穏健派の政権もそう思っている。エジプト、ヨルダン、サウディ・アラビアがヒズボラの攻撃とイスラエル兵士の誘拐とを非難したということは、その事実を物語っている。
というわけは、テヘランにそそのかされたハマスとヒズボラのようなイスラム過激派は、アラブ世界ではあまり民主的ではない穏健派の政権を脅した。その際、レバノンに対して影響力をもつシリアは、火遊びをしている。そのエリートが若いアサド大統領を先頭にアラウイ派の少数派から選ばれているシリアの政権は、ヒズボラとハマスの戦士を自分の目的のためにひきつけることができると思っている。だが、中東におけるイスラム主義者の勝利は、シリアのバース党のシステムをも非常な困難にもたらすだろう。
[訳者の感想]最後の箇所は、シリア・バース党が世俗主義を取っているから、「困難に陥る」と言っているのだろうと思います。この記事は昨日の『ガーディアン』紙の記事に比べるとヒズボラやハマスに対して批判的な記事です。その根拠は、ヒズボラもハマスもイスラエルに対してテロを行ってきたという事実にあるようです。ドイツの新聞は大体イスラエル批判については非常に慎重です。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙は中道保守だと思っていたのですが、アラブ諸国に対してはかなり批判的だと言えると思います。
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「ヒズボラは、どのアラブの政府よりもより多くのことをわれわれにしてくれる」

2006年07月21日 | 国際政治
 彼の顔は、ベイルートにある1万2千人のパレスチナ難民を収容するサブラとシャティア難民収容所に貼られたポスターから微笑みかけている。レバノンのシーア派民兵の指導者ハサン・ナスララーを批判する人を見出すことは、絶望的な試みである。
 先週、イスラエル領内に侵入し、二人のイスラエル兵を誘拐する攻撃を仕掛けたこの男は、イスラエルの報復がどれほどの損害を引き起こそうと、英雄である。
「ヒズボラは、どのアラブの政府がしたよりも多くのことをパレスチナ人にしている。彼がイスラエルに抵抗すると言ったら、彼はそれを実行するのだ」と小さな理髪店を経営しているムハマド・ハッサンは言う。「彼がこんな技術を持っているとは、私たちは知らなかった。特にイスラエルの軍艦を砲撃する能力があるなんて、素晴らしい驚きだ。」
 ヒズボラの指導者に対する彼の熱狂は、盲目的でもないし、無条件でもない。一人の客が、ハサンの意見に賛成して頷いた。「それは注意をガザからレバノンにそらせた。いまや誰もがレバノンに焦点を当てている。」ちょっと間をおいて、彼は付け加えた。「
ヒズボラが待つべきだったかどうかは分からないが、それはイスラエルのガザに対する圧力を少なくした。ヒズボラは、ガザに息つく暇を与えようとしたのかもしれない。」客が割り込んだ。「今や戦線が二つあるのだ。」
 サブラとシャティアは、1982年にニュースの見出しになった。当時、イスラエル軍は、レバノン侵攻の間、キャンプを包囲し、キリスト教徒の民兵が非武装のパレスチナ人を虐殺するのを許した。少なくとも700人が、ひょっとしたら3500人が虐殺された。それはあるイスラエルの調査によると、当時国防相だったアリエル・シャロンが個人的に責任がある残虐行為である。
 約40万人のパレスチナ人がレバノンに住んでいる。それは人口の10分の1を占めている。イスラエルの現在の猛攻撃が国連の救援機関に登録された12のキャンプのどれをも特に標的としなかったけれども、パレスチナ人はレバノン人と同じぐらい被害を蒙っている。
 キャンプの多くは、レバノン南部にあり、三つはチュロスの港にくっついており、二つはシドンに近く、四つはベイルート南郊にある。シーア派住民の居住区にイスラエルは、先週、何トンという爆弾を投下した。
 シャティリアの狭い街路で大抵の住民は、貧困のため、どこへも避難することができない。700人以上の人たちは、毎晩、爆弾を避けるために、未完成の学校の建物のほこりっぽい地下室に入った。僅かな明かりが闇を照らし、コンクリートの床に敷かれたマットレスとカーペットを浮かび上がらせている。
 パレスチナ人キャンプで働いている女性の権利のためのNGOである「ナジデー」のボランティアであるノハドは、言う。「現在の危機の前には、ヒズボラに対する多くの批判があったが、人々がヒズボラのことをイデオロギー的にどう考えようと、それが敵を弱めているのは確かです。ヒズボラは、敵が主張するほどは強くはないということを証明しています。ヒズボラは、パレスチナ人のために何かをしている唯一のグループなのです。」
[訳者の感想]ヒスボラの民兵がレバノンにいるパレスチナ人の間に大きな支持者をもっていうことが分かります。ガザ地区とレバノン南部との両面作戦ではイスラエルも大変でしょう。アメリカ政府は、一月ぐらいはイスラエルの好き勝手にさせようと思っているようですが、この紛争そう簡単には収束しないような気がします。ヒズボラの民兵のほうがハマスよりも強力な武器を沢山持っているようです。それにしてもヒズボラの戦略を説明して見せるパレスチナ人の床屋さんの軍事的感覚には驚きます。
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「イスラエルとヒズボラは、攻撃を継続」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2006年07月19日 | 国際政治
国際的な仲介の試みにも関わらず、中東の流血の紛争は続いている。イスラエルとシーア派民兵ヒズボラは、火曜日も攻撃を続けた。レバノン領内の軍事施設や民間の施設に対するイスラエルの空爆の際、22人が死亡した。イスラエル北部の町々にはまたもや一ダースほどのロケット弾が打ち込まれた。
イスラエル空軍は、ヒズボラの拠点だけでなく、レバノン南部のレバノン軍の兵営も攻撃した。少なくとも11名の兵士が死に、数十人が負傷した。イスラエルは、過去数日間に大きく破壊され、閉鎖されたベイルート空港を砲撃した。7日前からのイスラエル軍の攻勢で、これまでに237人のレバノン人が死んだが、そのうちの210人は、民間人である。
コフィ・アナン国連事務総長は、ブリュッセルで安定部隊をレバノン南部に送る計画を立てた。これらの計画は、緩衝装置としては、目下2000名の兵士を抱える国連の視察団よりは、明らかに大きくなるはずである。
一万人を超えるレバノン難民にとって状況はますますドラマティックになっているが、数千人の外国人は、国外に脱出した。その中には数百人のドイツ人がいる。ヘリコプターや軍艦、客船がそれらの人たちを安全な場所に運んだ。
イスラエル北部の港湾都市ハイファと隣接地へのロケット攻撃では、誰も負傷したものはいない。イスラエルのラジオ放送によると、イスラエル北部のナハリアでは、数発のロケット弾が着弾したが、爆発しなかった。
イスラエル軍の発表によると、これまでに、700発のヒズボラ軍のロケット弾がイスラエルに打ち込まれ、12人の民間人が殺された。ヒズボラは、7月12日に二人のイスラエル兵士を誘拐したが、それがイスラエルの大規模の軍事攻勢を引き起こした。
国連の仲介使節団は、イスラエルのジッピ・リブニ外相と可能な戦闘停止について協議した。リブニ外相は、第一回の会談後、イランとシリアがヒズボラに対する武器供給を防ぐように要求した。月曜日、ベイルート駐在の国連仲介団は、レバノン政府の代表と会っていた。リブニ・イスラエル外相は、政府は軍事攻勢と平行して、外交的プロセスを始めたと述べた。(以下省略)
[訳者の感想]ようやくイスラエルとレバノンとの紛争を調停しようという動きが出てきたようです。
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「無力な陰の操り手」と題する『南ドイツ新聞』の記事。

2006年07月18日 | 国際政治
昨年レバノンからシリア軍が撤退するまで、シーア派のヒズボラ運動はシリアとイラクに密接に結びついていた。イデオロギー的にも、世俗的な日常の決定においても。それ以来、ヒズボラの羅針盤はますますテヘランの方に向いていた。なぜなら、シリアは、西欧からの圧力とイスラエルの空爆を恐れて、アメリカ政府によってテロリストだと刻印されたヒズボラとの協力をあからさまにすることに関心がなかった。
それどころか、シリア政府は、最近数ヶ月、密かにシリアの港湾を経由するイラク北部のアメリカ軍の後方支援の輸送を許可していた。それによって、バシャール・アサド大統領の顔に吹き付けていた強風がゆっくりと弱められた。
紛争に巻き込まれないこと、これが、ガザ地区とイスラエル北部の戦火が勃発したとき、シリア人が保持しようとした原則である。彼らがこれを維持できるかどうかは、確かではない。
というのも、この全地域におけるイランの立場にとって、シリアは、前哨となっているからである。まさに現在、シリアは重要である。なぜなら、イランは核開発を巡って西欧の安全保障を取り付けようとしているからである。
シリアとヒズボラとは、テヘランが簡単に手放せないカードである。核問題におけるイランの交渉者であるアリ・ラリジャニは、レバノンでの戦闘の開始の後、急いでダマスカスへ旅行した。
アフマディネジャド・イラン大統領は、イスラエルがシリアを攻撃した場合、手をこまねいていないぞと警告した。だが、緊急時に、以前の紛争に際してアラブ系の元首達がそうだったように、大言壮語に終わらないために、彼に何ができるだろうか?彼の軍隊は、イスラエルを射程距離に入れる1300キロの中距離ミサイルを持っている。
だが、イラン人たちは、信頼できる情報によると、そのミサイルの数は10発以下だと言われる。特に数年は、核弾頭や他の大量破壊兵器を取り付けることはできない。その誘導システムは大部分、テストされておらず、目標への正確さは不確かだ。
古臭くなった空軍は、殆ど機能しない。地上の作戦には、長距離輸送の能力が欠けている。特にイランとシリアの間の国際的国境の故に殆ど考えられない。イスラエルの敵であるアフマディネジャド大統領がそれを越えて活動したいと思っている赤いラインは、ガザにある。
イランがこの地域でなしうることを、ヒズボラがイラン製のロケットをイスラエルの軍艦めがけて打ち込んだときに示した。この地域では、イラン人は、武器庫を開発し、世界市場で買った。
彼らは、海面すれすれに飛行するミサイルと小型潜水艦をかなりの数持っている。それはロシアの「シュクワル」型ミサイルの真似である。
ペルシャ湾にいるアメリカ艦隊にとっては、これらの武器は危険であり、ホルムズ海峡を通る国際的な航行にとっては、使用されれば、致命的かもしれない。
これに対して、スンニー派のアラブ人がよく口にする地中海からペルシャ湾に到るイランの権力道具として「シーア派の弧」というのは、戦略上の詩に過ぎない。
シーア派は、レバノンでは人口の40%を占めるが、シリアでは、アサド大統領が属するアラウイ派に支配されている。できかかっている新生イラクやスンニー派の首長に支配されたバーレーン、サウディ・アラビアのハッサ地方では圧倒的にシーア派住民が多い。これらの民族集団のどれもテヘランによって命令される用意はできていない。
[訳者の感想]イスラエルの軍事的な優勢にたいして手も足も出ないイスラム諸国の不甲斐無さが暴露されていますが、シリアやイランも大したことはできないだろうというのがこの記事を書いたルドルフ・ヒメリ氏の判断だと思います。彼は「ドイツ・マーシャル基金」の研究員だそうです。
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「ヒズボラ、イスラエルに宣戦布告」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年07月15日 | 国際政治
ベイルート発:ヒズボラの指導者であるハッサン・ナスララーは、イスラエルに公然たる「宣戦布告」をした。このことをシーア派民兵の指導者は金曜日晩に記者会見で述べた。
イスラム過激派のヒズボラ(神の党)民兵の述べるところでは、レバノン領海に入ったイスラエル海軍の軍艦を砲撃した。ヒズボラ党首のハッサン・ナスララーは、彼の運動の放送でヒズボラは軍艦を撃破したと述べた。
イスラエル軍の裏付けはまだ取れていない。「イスラエル政府が公然たる戦争をしたいのなら、戦争をすることになるぞ」とナスララーは、演説で脅した。「われわれの国民を砲撃した軍艦は、その乗組員と一緒に炎上中である。」
 イスラエル空軍は、レバノンのヒズボラ関係者によると、ベイルートにあるヒズボラの司令部を破壊した。指導者ハッサン・ナスララーの事務所と住居に爆弾が命中したと民兵は伝えた。ナスララーと彼の家族は無事であった。他の人が被害を受けたかどうかは、目下不明である。
五回の爆発が、昨日夕方、ヒズボラの司令部があるベイルートのハレト・フレイク地区を揺さぶった。市街の上空には煙の雲が見える。
 レバノンの目標に対するイスラエルの新たな攻撃の際、少なくとも5人が死亡し、65人が負傷した。過激派のシーア派に属するヒズボラの民兵は再びイスラエル北部をカチューシャ・ロケットで砲撃した。紛争の拡大が国際的に憂慮されている。ニューヨークの国連安保理は、緊急理事会を開いた。
24時間以内に、イスラエル空軍機は、5回にわたってベイルート国際空港を攻撃した。その際、滑走路、燃料タンク、格納庫に命中した。ベイルート市南部のシーア派住民の居住地区やレバノン東部のパレスチナ過激派の陣地も空爆の標的とされた。午前中には、レバノンでは、重要な社会基盤が損害を蒙った。その中にはシリアのダマサカスへ行く道路、二つの発電所、いくつかの橋が含まれている。
ヒズボラの民兵は、新たにイスラエル北部に対してカチューシャ・ロケットと迫撃砲を発射した。その際、一ダースほどの人間が軽傷を負った。イスラエル軍当局の報道では、イスラエルとレバノン国境での敵対行動が二日前に始まって以来、少なくとも700発の砲弾が、イスラエル領内に着弾した。木曜日には、イスラエルの民間人二人が殺された。それどころかイスラエルのハイファ港もロケット攻撃を受けた。
[訳者の感想]小泉首相がパレスチナ訪問している最中にイスラエルとアラブ諸国との対立は激化して、この先、どのようにした収束させるのか見通しが立たないようです。発端はパレスチナのハマスがイスラエル兵士を誘拐したことにあるようですが。

 
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「21世紀の運命的問題とその分析」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年07月14日 | 国際政治
セント・ペテルスブルグにおけるG8諸国の政府首脳のサミットでは、特に、エネルギー確保が問題となる。どうしたら石油と天然ガスという有限な資源を平和的に配分することができるかという問題である。
 この問いに対する答えは、二一世紀の世界秩序を決定的に形作るだろう。その際、問題となるのは、工業国の石油と天然ガス依存に対する代替を再生可能なエネルギーや綺麗な石炭を開発することによって、促進し、エネルギー経済と資源の豊かな国との国際的なビジネス関係を促進することだけではない。先進国や開発途上国の社会や産業は、見渡せる時間内では、化石エネルギーに依存している。それゆえ、エネルギー生産とエネルギー輸送の安全は、外交上、安全保障上の問題である。地球上のエネルギー資源の70%は、アフリカや中東やロシアや中央アジアなどの不安定な国々にあり、大部分、ユーラシアの危機弧を経て西欧市場へと供給される。中国の外交政策と安全保障政策は優先的にその爆発的なエネルギー需要の確保に奉仕している。インドのエネルギー問題も急速である。世界最大の天然ガス保有量をもつロシアは、その近隣諸国であるウクライナとグルジャの安定化と世界への統合を妨げるために、エネルギー経済上の依存を政治的道具として利用している。イランは、ロシアに次ぐ世界第二の石油と天然ガス資源を所有している。中国・ロシア・中央アジア諸国の協力のための上海機構にインドとイランはオブザーバーとして出席しているが、それは西欧世界に対してエネルギー政策上の対抗策を築こうとしている。
 米国は、確かに世界最大のエネルギー消費国であるが、世界中の国民総生産額の25%を占めていて、海上経由の安全な輸送を保障している。したがって、米国は、世界の石油市場が機能するために不可欠の安全保障を行っている。米国は当面、機能している石油市場を軍事的に確保できる唯一の国である。
 グローバルなエネルギー確保に対するドイツの貢献は、さまざまな要素をもたなければならない。
第一に、エネルギー供給国を多様化することによって、わずかな供給国への依存度を減らさなければならない。ドイツは、ロシアに依存している天然ガス輸入量の40%を減らすために、政治的支援を通じて、カスピ海経由でカザフスタンとトルクメニスタンに到る直接的なエネルギー供給を得ることが大切である。それと並んで、アルジェリアとナイジェリアとのエネルギー関係が築かれるかれるかもしれない。地域社会資本への西欧諸国の投資と技術的ノウハウの伝達によって、エネルギー確保政策は、開発政策でもある。
第二に、市場経済法則によって機能するグローバルな石油と天然ガス市場を作り出すように努力すべきである。その限りでは、中国に販売市場を見出そうとするロシアの努力は、市場に対して公平な態度である。他方、ロシアの国営コンツェルン「ガスプロム」がドイツの配分ネットワークに参加するならば、ロシアもトランスネフトというロシアの国営の配分ネットに西欧が参加するのを許可しなければならない。
第三に、いろいろな籠を用いてエネルギー確保の外交政策的安全保障政策的含意を共同で解決するために、多国間方式がすべてのエネルギー生産国とエネルギー消費国が代表されるグローバルな提携関係として確立されなければならないだろう。
[訳者の感想]ペテルスブルグで開かれるG8のサミットでエネルギー問題のグローバルな解決が最重要課題とするイエルク・ヒンメルライヒ記者の記事です。ドイツのエネルギー政策を日本も学ぶべきではないでしょうか。
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「イスラム民兵、ソマリアにおける軍閥支配を終わらせる」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2006年06月06日 | 国際政治
ナイロビ発:米国によってバックアップされていた思われている軍閥の連合を敗走させた後、イスラム系民兵が首都モガディシウを制圧した。ラジオによる呼びかけで、連合イスラム法廷同盟の議長であるシェイク・シャリフ・アーメッドは、15年間の軍閥支配が終わったことを宣言した。「われわれはモガディシウにおける平和と安定を回復したい。わが国民の利害のために、われわれは誰とでも会う用意がある」と彼は述べた。
西欧に対するしているとか、アルカイダと結びついているという非難の応酬をしている二つの重武装した集団の激しい衝突は、今年、ソマリアの首都で350人の人命を奪った。最も多くの死者は、迫撃砲弾と飛行機による銃撃で殺された民間人であった。
1991年にモハメド・シアド・バレが倒されて以来、ソマリアは、有効な政府を持たなかった。国内およびモガディシウでは軍閥が力で支配し、港湾、道路、空港を支配下において、莫大な富を蓄積した。国民的権威目指す試みはすべて失敗した。
戦闘の終結は、モガディシウの住民に安心をもたらしているが、それは政府にとっては挑戦である。政府は、軍閥連合とイスラム法廷の両者の対立のせいで首都に定住することができなかった。
明らかな和解の動きで、政府は日曜日、反テロ連合と連携している4人の閣僚を解任した。だが、アナリスト達は、シェイク・アーメドと同席することは困難であることが分かるだろうと言う。
原理主義者を抑圧したタフマンとして名を成した元軍閥のアブドライ・ユスフ大統領は、
イスラム国家を作ることに断固反対した。「いまや問題は、政府と法廷とが話し合いをするか、それとも互いに対決するかということだ」と「アフリカの角」(ソマリアの別名)
のアナリストは言う。
 二月には、世俗的な軍閥の集団が、4人の閣僚とともにイスラム法廷同盟の増大する権威に対する防波堤として「平和の回復と反テロのための連合」を形成した。
部族の正義を省略する手段として、創設された「イスラム法廷同盟」は、近年、モガディシウでは人気が増大した。その厳格な態度によってではなく、いくらかの秩序感覚によって。だが、法廷のヒエラルキーの中に疑わしいジハードが現前していることは特にワシントンでは「ソマリアのタリバン化」が忍び寄っているという理由で恐れられている。
米国は、ジブティに基地を置いて反テロ主義を通じて多数の世俗的軍閥を経済的に支援し、見返りに疑わしいアルカイダを引き渡したり、彼らの動きについての情報を得てきたてきたと理解されている。
「これはアメリカの代理人による反テロ主義戦略にとっては大変な敗北である」と「アフリカの角」のアナリストは言う。米国は、報道を確認したり否定したりすることを拒否した。「それはまたソマリア政治における地すべり的な変化を現している。何十年かで初めて、ある種の行政を形成する新しい政治集団ができたのだ。」
[訳者の感想]ソマリアにイスラム原理主義的な政府ができるということは、イラクで手一杯のアメリカにとって大きな打撃でしょう。しかし、軍閥は民衆の心を捉えることはできず、秩序も回復する能力はなかったのだと思われます。アメリカが次にどういう態度に出るか大いに注意が必要だと思います。
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「米国は、力の独占を失うだろう」と題する『ヴェルト』紙の記事

2006年06月04日 | 国際政治
ベルリン発:中国は、アメリカを引き離して、間もなく大国ナンバーワンになるだろう。すべての他の国や組織は、もはやいかなる役割も演じないだろう。これは少なくとも中国人の自己評価であり、そのことをベルテルスマン財団の国際的研究が示している。確かに、回答者は他の国々にも権力の独占を見ているが、すべての人は、権力の移動をアメリカのせいにしている。アメリカ人自身も権力が移動するのはアメリカせいだと考えている。この根拠の一つは、世論調査の結果では軍事的強さの意味の消失である。ドイツ人は、自分たちを役割を異常に現実主義的に評価している。
 EMNID研究所は、ベルテルスマン財団の委託で、ブラジル、中国、ドイツ、フランス、英国、インド、日本、ロシア、米国で、1万人を対象として世論調査を行った。目につくのは、人々が明らかに増大する国際的な絡み合いを意識しているが、諸問題の解決は国民的な次元で見ているということである。「そこで国連が運命を操っているすべてに共通の課題は、単に手がかりとしてしか際だっていない」とベルテルスマン財団のプロジェクト・マネージャーであるシュテファニ・ヴァイスは言う。これらの見方は、特に民族的(国民的)であり、自分自身の経験、強さや弱さによって形成されている。そういうわけで、テロリズムは、9つの国すべてで、最大の挑戦であると見なされており、それに貧困と気候変動が続いている。例えば、ロシア国民は、他のすべての国民よりもはっきりと戦争を恐れている。多分、その背景には、チェチェン紛争がある。ブラジルや日本では原理主義は僅かの人々によってしか知覚されていないのに、フランス人は、明らかに彼らの国における暴動に過度に敏感になっている。
 軍備に何十億も費やすのは、回答者の意見では、殆ど国際的重要さには貢献しない。大国の持つべき8つの条件の内、「軍事力」は、第七位に置かれている。この判定の原因は、イラクにおける米国の問題である。軍備拡張の二大勢力である米国と中国は、彼らの軍隊に強さの前提を見ている。この世論調査によると経済力、政治的安定性、研究と教育、資源の豊かさ、グローバルな秩序機能を引き受けること、他国のモデルとなる性格のほうがもっと重要である。
 ドイツ人は、他の国民よりも、多国籍組織や国際的組織に重きを置いている。欧州連合に対しては、確かに総じて未来にとって、ロシアや英国に対してよりもより大きな役割が期待されている。だが、この全体像は、4分の3以上の人が欧州連合を将来の世界権力だと見ているドイツでの世論調査に結果によって生じた。同様に他の国の回答者とは大きな距離をおいて、ドイツ人は、国連を世界政治において支配的である見ている。米国やラテンアメリカやアジアでは、欧州連合と国連とはより下の位置に置かれている。
[訳者の感想]イラク戦争が国連を無視して行われたために、また国連が現状では余り頼りにならないという印象を与えるために、日本でも評価が下がったように思います。しかし、もう一度国連の評価をしなければならないでしょう。安保理の常任理事国になれないから国連の評価を下げるというのは、ちょっと手前勝手ではないかと私は思います。
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「メルケル首相の中国訪問の収支決算」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年05月24日 | 国際政治
上海:彼女の最初の中国旅行の終わりに、アンゲラ・メルケル連邦首相は、中華人民共和国における宗教の自由と人権のためにもう一つのシグナルを送った。最初のドイツ首相として、彼女は上海で中国におけるキリスト教的信仰の高位の代表者であるアロイジウス・ジン司教を訪問した。
メルケルは、1982年まで27年間牢獄に入れられていた91才の司教に会い、たっぷり半時間個人的な話し合いをした。それに続いて、司教は連邦首相を1千300万都市である上海の中心にある教会を案内した。ジンは、教皇を権威と認めない中国のカトリック教会の司教である。だが、彼はバチカンの祝福を受けている。別れ際に、ジンは、メルケルに、「私はあなたのために常に祈るでしょう」と言った。連邦首相は、流暢なドイツ語を話すジンとの出会いに際して「非常に心動かされた」ように見えた。
連邦首相は、人権に関する中国の国家と党の指導者との対話の決算を引き出した。彼女の相手はこのテーマが出た際、「注意深く傾聴した。」「民主主義と自由は社会にとって役立つという経験は、慎重にしか受け入れられないだろう。なお多くの対話がなされなければならないだろう」と彼女は述べた。
知的財産の保護の問題に関して、ドイツ連邦共和国は、将来とも強調してゆくだろう。彼女は対話において、「われわれは断固と明確にことを進める」ということを指摘した。「技術的ノウハウの保護は、ドイツにおける福祉の確保につながるだろう」と彼女は上海での経済フーラムで述べた。
来るべき数年を見越して、彼女はまた中国との交渉において連邦政府とドイツ企業はより厳しい態度を取るだろうと予告した。「中央ドイツ放送」に対して「われわれは批判的な調子で物を言う勇気をもたねばならない。われわれは何もただでくれてやるつもりはないということをはっきりさせねばならない。台頭しつつある国が普通の価格を支払うことをわれわれは期待している」と彼女は述べた。このことは中国で建設中の「トランスラピッド」にも当てはまる。すでに期待されていたいくつかの契約は成立しなかった。
[訳者の感想]中国は技術援助や経済援助を期待していたようですが、メルケル首相は、その点では譲歩しなかったようです。
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「彼女はわれわれの問題を知っている」と題する『ヴェルト』紙の記事

2006年05月23日 | 国際政治
アンゲラ・メルケル・ドイツ連邦首相の中国訪問は、中国では普通でない注目を浴びている。政府報道官、共産党機関誌、社会科学者、反体制派は、月曜日に、政治的視点では北京の寛容さの限界を綱渡りすることになる彼女の就任初の訪問の跡を緊張して追跡した。街頭の世論調査によると、殆どすべての人が、破産した社会主義政権(ドイツ民主主義共和国のこと)のもとで育ったドイツ首相の訪問について聞いたことがあると述べた。「彼女ならわれわれの問題を知っている」と質問された人の多くが即座に答えた。
北京は今回は他の場合では操作されている報道機関に自由にさせている。どのような期待と恐れをこの権力を握った女性と結びついているかを、一ダースほどの新聞は、全面に押し出した。彼女は自分の東独時代の経験にしたがって、注意深く中国と関わろうとした。そえゆえ、北京の指導層は、政治的な魅力の攻勢で首相の気に入ろうとした。メルケルが政治的な嵐を煽るという心配は、杞憂に終わった。ほっとして、温家宝首相は、メルケル首相が友好的な風をもたらしたと述べた。「コール元首相、シュレーダー首相からメルケル首相に至るまで、ドイツの中国政策には、いかなる変化もない。」
 中国政府は、もっと強硬な調子に備えていた。、「メルケルもブッシュ大統領と同様、人権問題の取り扱いについては具体的であろうとしている」と述べた中国の反体制派の作家ユー・ジエの主張は、中郷政府に警戒を呼び起こした。家庭内教会運動のメンバーであり、ペンクラブのメンバーであるユー・ジエは、二人の中国人キリスト教徒であるワン・イとリ・バイグアンと一緒に、訪米の際、5月11日に驚いたことに、ブッシュ大統領の私的会合に招かれた。中国大使館が抗議したけれども無駄だった。ユー・ジエは、『ヴェルト』紙にその会合について漏らした。彼はブッシュに対して、フランス及びドイツの国家指導者が中国との経済交流にのみ考慮し、人権に対してもはや配慮しないと言う理由で、彼らの弱腰の態度について不満を述べた。ブッシュは彼らに対して、米国はそのようには振る舞わないだろうと保証した。ドイツでも、新しい連邦首相のもとでは事態は変わっただろうと述べた。言葉通りに引用すると、ブッシュは、「私は丁度メルケル首相と電話で話したところだ。私は彼女に、人権問題についての彼女の憂慮を強調するように助言した。彼女は同意したよ。」
『中国ビジネス・ニュース』のような公式の日刊紙は、その読者に対して「メルケルも好ましくない非政府組織や作家にドイツ大使館内で会うだろう」と述べていた。「彼女は中国の社会問題を理解し、市民の政治参加がどうなっているかを知るという関心を持っている。」メルケルは、昨日、4人の社会批判者に会い、特に作家のチェン・グイディとウー・チュンタオ夫妻と会った。彼らが書いた『農民の状況についての研究』は、農村における腐敗を暴露したため、禁書にされた。メルケルの結論は、「中国ははらはらさせるダイナミックな国だ」というものであった。
[訳者の感想]『ヴェルト』紙にしばしば中国に関する記事を寄稿するジョニー・エアリング記者の記事です。メルケルは温家宝首相が招待した晩餐会で人権問題について発言をしたという記事を他の新聞で読みました。彼女は中国への武器輸出禁止は、解除する気はなさそうです。
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「キューバ、中国に海底油田の掘削を許可」と題する『アルジャジーラ』局の記事。

2006年05月17日 | 国際政治
 フィデル・カストロの政府は、中国およびカナダの会社と協同で36基の新しい油井を建設する仕事を増やしたと政府高官は述べた。
 キューバ政府は、一般的には石油問題に関しては寡黙であるが、今週、キューバ共産党の機関誌『グランマ』は、キューバがハヴァナの東にあるヴァラデロ近くで最も深い油井を掘削したと報道した。外交筋によると、インド、ノルウエー、スペインの会社がメキシコ湾で油田の探索を始める予定である。
 このニュースは、米国の政治家達を怒らせた。彼らは米国のキューバに対する経済制裁が彼らを潜在的に儲かる事業から閉め出していると述べた。
 二人の共和党の政治家は、米国政府が要求する特別の許可なしに、米国の会社が契約に参加し、キューバに旅行することを可能にする法案を提出した。
 共和党上院議員ラリー・クレイグは、「米国の公衆は、この国が深刻なエネルギー危機に直面しているのに、中国やインドやカナダやスペインやノルウエーが米国の海岸から50マイルしか離れていないところで油田を探索したり、油井を掘削したりしているのを見たら、ショックを受けるだろう。
 キューバ政府は、米国の会社も油井掘削事業に参加するように招待したが、成立後44年経っている経済制裁に妨げられた。
 「国家安全保障戦略会議が指摘するように、中国は世界中で資源に投資している。彼らはわれわれが競争さえできないわれわれの裏庭で資源に投資している」とクレイグ議員は言った。
[訳者の感想]中国はアメリカの鼻先でも油井を掘り始めたようです。東シナ海の油田問題でも簡単に譲歩する気配はありません。
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「大抵のイスラエル人は、国内のアラブ人の移住を希望」と題する『アルジャジーラ』局の報道。

2006年05月13日 | 国際政治
最近の世論調査によると、イスラエル人の62%は、政府が人口の五分の一を占める130万人のアラブ人がイスラエルから出て行くように説得することを望んでいる。
イスラエルのアラブ人は、1948年のイスラエル建国に続く戦争中に排除されないか、逃げ出さなかったパレスチナ人とその子孫からなっている。
「イスラエル民主主義研究所」によって公刊された調査結果は、イスラエル社会の中にある分裂を際だたせている。
 回答者の14%だけが、ユダヤ人とアラブ人の間の関係は良好であると言っているが、29%はイスラエルの運命を決める決定にはユダヤ人の多数が必要だと言う意見に同意している。
 この報告書は、36の民主国家の腐敗度調査で、イスラエルを20番目にランク付けているが、これは2004年の調査よりも6位下がっている。
 2006年にはイスラエルはエストニアと台湾の間にあるが、フィンランドとニュージーランドがもっとも腐敗していない国にランクづけられている。
 政党とイスラエル議会は、この国では最も信用されない公的制度であるが、回答者の79%は、軍が最も信用できると答えている。
 2,004人のイスラエル人を対象とする調査にはユダヤ人とアラブ系市民が含まれているが、彼らの警察に対する信用は、2004年には66%あったが、2006年には44%に下がっている。メディアに対する信頼度も同様である。
 この報告書は、昨年夏、ガザ地区からのイスラエル入植者の強制退去の際、警察に抵抗したユダヤ人入植者に対する支持が増えていることを示している。
 昨年は、回答者の70%がガザ地区の移住者を退去させるという政府の命令に逆らうことは間違いだと答えたが、今年はそれが58%に減った。
 「数に減少があることは明白だと私は思う」と報告書の著者でハイファ大学の政治学教授であるアシャー・アリアンは言う。「非民主主義的な態度の底流があるということは本当に困った傾向だ。」
[訳者の感想]ユダヤ人の多数はアラブ人がイスラエル国家から出て行くことを望んでいますが、少数派のユダヤ人はイスラエル国家の中でアラブ人と共生することが可能だと考えているようです。もともと現在のイスラエルにはユダヤ人以外に遥かに多数のパレスチナ人が住んでいたのだから、彼らを追い出すのは間違っていると思います。
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「アフマディネジャド、ブッシュにキリスト教的価値について講義」と題する『ニューヨーク・タイムズ』記事

2006年05月11日 | 国際政治
 教師の口調と信者の自信をもって、イラン大統領の最近のブッシュ大統領に宛てた書簡は、西欧の民主主義は失敗したし、イラク侵攻や囚人に対するアメリカの扱いやイスラエル支持は、キリスト教的価値と折り合わないと述べている。
 イランの核開発計画を巡って西欧諸国と対立するはめになったマームード・アフマディネジャド大統領は、月曜日に18ページに及ぶ考察をした。
 書簡は、アメリカ高官によって重要でないとして片づけられたが、それはテヘランのものの考え方についての興味ある窓であることが分かったという人もいる。
 その書簡は、米国との政治的論争の一覧表を展開している。それはまた自分の宗教的信念について公にしているブッシュ大統領にキリスト教的価値に照らして自分の行動を吟味することを要求している。
 「われわれが見ているのは、世界中の人々が全能の神である主要な焦点に向かって押し寄せているということだ」とアフマディネジャドは書いている。「疑いもなく神に対する信仰と予言者の教えを通して、人々は彼らの問題を克服しようとしている。あなたに対する私の質問は、あなたは彼らの仲間入りをしたいかということだ。」
 広範にわたる書簡は、完全に宗教的な用語で縁取りされ、反米主義のポピュリスト的な宣言を展開している。それは中近東の人々の間にイラン大統領の信奉者を作りだしたもののをいちいち列挙している。彼は自分自身をムスリムの擁護者としてだけでなく、アフリカやラテン・アメリカの抑圧された人々の擁護者でもあると提示している。
 だが、彼の主要な焦点はシーア派イスラム教にとって中心的な宗教的原理である。特に公正な支配者と抑圧に対する戦士という概念である。彼は自分のほうが優位にあるのだという調子で、アメリカの偽善の実例を展開するのに問答形式を用いている。
 「私の基本的な質問はこうだ。世界の他の部分と相互作用するこれより良い方法はないか?今日、何億というキリスト教徒や何億というムスリムやモーゼの教えに従う何百万の人々がいる。すべての神的な宗教が共有し、敬う一つの言葉がある。それは一神教であり、あるいは唯一の神があって他の神は存在しないという信念である。」
 それは何ら特別な提案をしていないが、書簡は一神教の諸原理に基づく議論の共通の地盤を確定しようとしている。
 「もし米国がその手紙を退けるなら、それは大きな間違いであるだろう。それを哲学的宗教的歴史的書簡だと考えるならば、ブッシュ大統領がそれに返答するというのは良い考えだ」とテヘラン大学の政治学教授ナセル・ハディアンは述べた。
[訳者の感想]ブッシュ大統領はこんな宗教問答には全く関心がなさそうです。イランの大統領には相手がどういう人間であるかが分かっていないように思われます。アメリカはこれはイランの時間稼ぎの一種だとしか受け取っていません。中世だったら、イスラムの支配者がこんな手紙を寄越したら、例えば、13世紀前半、シチリアのパレルモに居城があった神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒII世ならもう少し真面目な応対をしたに違いありません。現代の西欧の政治家の多くはもはや宗教的哲学的論争には興味がないのです。イラン大統領にとっては、お気の毒というよりありません。
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