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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 №350 プリズン・サークル

2022-10-23 16:18:14 | 映画観賞・感想

 プリズン・サークルとは?……、刑務所において受刑者同士が対話することによって真の更生を促す試みだそうだ。映画はそのような試みを進める国内唯一の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」の実態を2年間にわたって撮り続けたドキュメンタリーである。

          

 10月22日(土)午後、北星学園大学において「プリズン・サークル」上映実行委員会が主催し、札幌弁護士会が後援する映画「プリズン・サークル」の上映会及び坂上監督講演会が開催され参加した。

 「島根あさひ社会復帰促進センター」とは、日本初の官民協働の刑務所である。センターの特色は、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC( The rapeutic Communityセラピューティック・コミュニティ=回復共同体)」というプログラムを唯一導入している刑務所である。

    

    ※ TCプログラムでは、このような小グループ討議の手法も取り入れられていた。

 映画はそのTCのプログラムを使い、民間のカウンセラーと受刑者たちが犯した犯罪だけでなく、幼い頃に経験した貧困、いじめ、虐待、差別などの記憶、痛み、悲しみ、恥辱や怒りといった感情、それらの表現する言葉を獲得していく様子を描く。特にこのドキュメンタリーにおいては、プログラムに参加する4人の若い受刑者に焦点を当て、彼らが新たな価値や生き方を身に着けていく姿を2年間にわたり克明に追った姿を写し出した。

 本稿の冒頭に張り付けたポスター写真は、TCプログラムに参加する人たちが一堂に会するための椅子をサークル状に並べたところを写したもので、この映画にとってはシンボリックなシーンであるということで採用した写真だろうと思われる。

 プログラムが優れているからだろうか?あるいは、自ら進んでこのプログラムを受けることを希望した人たちだったからだろうか?さらにはリードするカウンセラーの方の力量が優れているからだろうか?おそらくその全てが要因だろうと思われる。参加した受刑者たちは自分が犯した犯罪、あるいは自らの生い立ちについて、実に率直に語りだしていたことがとても印象的だった。

    

     ※ TCプログラム参加者にも、もちろん必要な作業は課せられていました。

 その中で明らかになったことは、4人の若者たちの生い立ちがほぼ似たような悲惨な生い立ちを体験していることだった。彼らは生育の過程で、善悪の判断すら獲得できないほど大変な状況の中で成長し、そして犯罪に手を染めていったことが鮮明となっていく。

 プログラムは単なる対話ばかりでなく、小グループ討議、あるいはロールプレイイングなどあらゆる心理療法を駆使しているように見えた。

 映画では4人の若者がTCプログラムによって新たな価値観や生き方を獲得し、社会に巣立とうとしている姿を映し終わっている。

 TCプログラムについては、

 英国の精神病院で始まり、1960年代以降、米国や欧州各地に広まった。TCでは、依存症などの問題を症状と捉え、問題を抱える当事者を治療の主体とする。コミュニティ(共同体)が相互に影響を与え合い、新たな価値観や生き方を身につけること(ハビリテーション)によって、人間的成長を促す場とアプローチ。

と説明されている。前述したように日本においてはまだまだ始まったばかりで、国内においては「島根あさひ社会復帰促進センター」が唯一の存在であり。その収容力は2,000名と限られている。その上、TCプログラムを受けることが出来るのは1度に30~40名程度で半年から2年程度、寝食や作業を共にしながら、週12時間程度のプログラムを受けることになっているそうだ。だから、現状は日本の全受刑者の中のほんの一握りの受刑者が受けられるに過ぎないのが現状である。

 TCプログラムを受講した受刑者の再入所率は他と比べて半分以下という調査結果もあるという。「島根あさひ社会復帰促進センター」のような取り組みがもっと広がっていくよう、関係者の取組みに期待したいと思ったのが映画を観終わった後の感想だった。

 なお、上映会後の坂上監督の講演会は、残念ながら所要のために聴くことが出来なかったのが残念だった…。



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