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映画 №362 東京物語

2023-06-27 15:52:29 | 映画観賞・感想
 巨匠・小津安二郎の代表的な作品である。1953(昭和28)年、戦後の混乱もやや落ち着き始めた日本において、家族観にも変化の兆しが見え始めた頃の親子関係を小津安二郎は冷静に、機微に描いた一作である。
      
 北海道立文学館では現在、特別展として映画監督・小津安二郎の生誕120年・没後60年を記念して「世界が愛した映像詩人 小津安二郎」展が開催されている。(6/24~8/20の会期)その関連イベントの一環として6月25日(日)午後、文学館講堂において小津安二郎が脚本・監督を務めた「東京物語」の上映会が開催されたので参加した。
 例によってストーリーの詳しい紹介は避けるが、物語は広島県・尾道市に暮らす周吉(笠智衆)と妻のとみ(東山千栄子)は、東京の下町で医院を開業する長男・幸一(山村聡)と、同じく下町で美容院を営む長女・志げ(杉村春子)との久しぶりの再会を兼ね東京見物に出かけたのだが…。
 二人の子どもはそれぞれ仕事が忙しく両親の接待をするほどの余裕はなかった。そうした中、戦死してしまった二人の次男の妻の紀子(原節子)がかいがいしくお世話をするのだった。
  
  ※ 紀子(原節子)にお世話にるる周吉ととみ
 昭和28年…、日本は戦後の混乱から立ち直ろうと誰もが精一杯生きていた時代である。戦前の絶対的価値観(?)だった家父長制も揺らぎ始めてきた頃だったのではないか?そうした時代背景を小津は見事に掬い取り、映画に描いてみせたというところだろうか?
 私は映画の巧拙を批評できるほどの眼力は持ち合わせていない。そこでこの映画にまつわるエピソードを2~3記してみたい。
 まず印象的なのは祖父役を演じた笠智衆の存在である。私が計算したところ「東京物語」に出演した時の笠智衆はまだ54歳である。一方、長男を演じた山村聡は当時すでに44歳だったのだが、すこしも違和感がなかった。それだけ笠智衆の老け役は堂に入ったものであり、小津映画には欠かせないスパイスとなっていた。笠智衆は戦後の小津映画には全て出演しているそうだが、小津映画には欠かせない存在感のある稀有な俳優だった。
  
  ※ この映画の主な出演者。周吉、とみと長男の息子二人(前列)後列右から長男の妻、長男、長女、次男の妻です。(周吉、とみ夫妻から見て)
 また、周吉ととみをかいがいしくお世話する紀子を観ていて、私は既視感にとらわれていた。というのも山田洋次監督が、小津安二郎監督にオマージュを捧げた「東京家族」という作品を創ったが、その中で小津作品同様に長男や長女が自らの生活で精一杯で満足に両親のお世話ができない中、両親にとっては出来の悪い息子と思っていた次男・昌次(妻夫木聡)が二人を意外にも親切にお世話する姿は、まさに小津作品の紀子とダブって見えたのだった。
 ところで小津安二郎が世界でどのように評価されているかという一つのエピソードとして、2012年に実施された世界の映画監督が投票で決める「史上最高の映画 監督部門トップ100」において「東京物語」が第1位に選ばれ、英国映画協会が発行する「サイト・アンド・サウンド」誌に発表されたそうだ。
 遅ればせながら、私たちは母国語で世界一の監督の作品を観賞できる幸運に恵まれていることを感じた私だった。なおも小津作品を追ってみたい。


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