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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

白井一幸氏サムライジャパンの内側を語る

2023-11-08 16:02:00 | 講演・講義・フォーラム等
 白井氏は言う。「サムライジャパンは “目標” を果たすことに集中したが、それ以上に “目的” を果たすことを重んじた」と…。白井氏が語るサムライジャパンの内側をお聴きし、今春世界一を掴んだ秘密に触れたような気がした。
     

 11月6日(月)夜、札幌パークホテルにおいて曹洞宗の北海道管区教化センターが主催する「禅をきく会」に参加した。「禅をきく会」は、曹洞宗の飯田整治老師の「生死事大 無常迅速」という法話と、2023年WBCサムライジャパンのヘッドコーチを務めた白井一幸氏による「豊かになるためのチームビルディング」と題する講演、そして「椅子座禅」を体験するという構成となっていた。
        

 法話も、座禅体験も興味深かったが、ここでは白井氏の講演についてレポートしてみたい。
 白井氏は冒頭、今春のWBCにおいて優勝したことで、みなさんから声をかけていただいたとき「おめでとう!」という言葉も嬉しかったが、「ありがとう!」の言葉の方がより嬉しかったと語った。それはサムライジャパン(栗山ジャパン)が「最高のチーム」を目ざしたことにあったからだという。もちろん栗山ジャパンは世界一を目指して「最強」のチームづくりを心掛けたが、同時に「最高」のチームづくりも心掛けたという。
 白井氏は言う。「“最強” と “最高” は =(イコール)ではない。“最強” とは相手に勝つことだが、“最高” には相手がいない。ということは大会を見ている人たちに “最高” のチームだ!と感動を与えられるチームを目ざすことだ」と言う。
 その最高のチームを目ざすために、栗山ジャパンでは選手たちに次の3点を求めたという。
 ① チームの全員が目的を共有する。(感動を与えられるようなチーム)
 ② 自分の役割を果たす
 ③ 周り(チームメイト)と関わり合う
そして白井氏は3名の選手と栗山監督、そして一つのチーム名を挙げてサムライジャパンの内側を語った。
 一人は初の外国出身選手だったヌートバー選手のことだった。日本の第一戦対中国戦でヌートバーの第3打席、彼はぼてぼての一塁ゴロを放った際に全速力で一塁を目ざしたという。その姿に慌てた中国一塁手は思わずエラーをしてしまったそうだ。ヌートバーの一生懸命なプレーは観戦していた日本人の感動を呼んだ。そしてチームメイトの心に火を付けたという。その後の彼の活躍はご存じの通りで、母子ともども日本人のアイドルとなった。白井氏はヌートバーの全力プレーを “凡事徹底” が大切と語った。

  

 二人目は大谷翔平選手である。彼が決勝戦の前に選手たちに呼びかけた「憧れるのは止めましょう」は、流行語大賞にノミネートされるくらい有名となった。その裏には、アメリカとの決勝戦の対戦前に、アメリカ代表の主将トラウト選手から日本チームにサインボールが贈られたという。それも一個ではなく選手全員分だったという。選手たちは憧れの選手のサインボールをもらい夢心地だったという。それを見ていた大谷選手がとっさに放った言葉だという。また、大谷選手は日本からアメリカへ移動する際にチェコチームの帽子を被っていたが、それにも訳があったそうだ。それについては後述します。

  
  ※ 日本からアメリカ入りした際に大谷選手が被っていたチェコチームの帽子です  

 三人目はなんと山川選手の名を挙げた。山川選手のその後の不祥事について白井氏は厳しく指弾した。しかし、WBCにおける山川選手の行動には率直に称賛をおくり、彼の再起に期待を示した。山川選手は当初サムライジャパンでは唯一の一塁手として選出されたそうだ。しかし調子が上がらず本戦では本来三塁手の巨人の岡本選手がずっと一塁手として出場し、山川選手は控えとなってしまった。しかし、山川選手は腐ることなく試合に出ない選手たちのリーダーとして、ベンチのムードメーカーとなって出場選手たちを励まし続けたという。そうした姿を見ていた選手たちは山川選手がピンチヒッターで登場した際はベンチが一番沸いたそうだ。
 そして栗山監督である。白井氏は栗山監督のことを「信じて、任せて、感謝する監督だ」と称した。そして「栗山監督はどこを切っても信じ続ける男だ」と…。あの不調にあえいだ村上選手が三振をして帰ってきても「素晴らしいスイングだ」と褒めていたという。その選手を信じる采配が対メキシコ戦準決勝の決勝打、そして決勝戦の対アメリカ戦のホームランに繋がったと白井氏は語った。

  

 最後はチェコチームである。チェコチームはプロではなく、完全なるアマチュアチームである。実力的には日本とは雲泥の差があるチームと言えるかもしれない。しかし、その一生懸命さは日本チームにも、日本人観客にも感動を与えたという。その一場面、4回表のチェコ攻撃時に佐々木朗希投手の150キロを超える剛速球が打者の膝を直撃した。普通なら立ち上がれないという。しかし、その打者は立ち上がり一塁まで歩いたという。歩いただけではない。一塁に達するとライト方向に向かってファウルグランドをダッシュした姿は多くの観衆の感動を呼んだシーンだった。こうしたチェコ選手たちの全力プレーはサムライジャパンの選手たちにも少なからず影響を及ぼしたようだ。対戦後に選手たちはチェコ選手たちの善戦を讃え拍手を送ったそうだ。白井氏はこうした相手を尊重するサムライジャパンの選手たちの仕草から、本当の意味で選手たちが “サムライ” になったと実感したという。そしてそのことをより具体的な形で示したのが、大谷選手がチェコチームの帽子を被ってアメリカ入りした姿だったのだと白井氏は指摘した。

    

 白井氏はきっとたくさんのところでお話する機会があったのだろう。ユーモアを交えながらも淀みなくサムライジャパンの内側を語ってくれた。そして私が最も感動したのは、白井氏の栗山氏に対する揺るぎない信頼の厚さである。白井氏と栗山氏は同年代だという。しかし、白井氏は監督とヘッドコーチという立場を一瞬たりとも崩そうとしなかった。そこに私は白井氏の素晴らしい人間性を見た思いがした。

 ※ 掲載写真は全てウェブ上から拝借しました。
  


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