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映画 №344 ホタル

2022-03-17 15:31:04 | 映画観賞・感想

 監督:降旗康夫、主演:高倉健という名コンビの映画だったのだが、テーマを盛り込み過ぎたきらいはなかったろうか?物語は知覧飛行場から飛び立ち還らなかった特攻隊員と生き残った隊員の話なのだが、話が拡散してしまったきらいがあったのが残念に思えた映画だった…。

         

 BSプレミアムで放送された映画を観賞したものである。といっても放送されたのは若干古く、昨年10月27日に放送されたものを昨夜観たということである。

 映画の登場人物の相関図は以下のようになるだろうか?特攻の任を帯びて知覧の飛行場を飛び立つも飛行機の故障から生き延びた山岡秀治(高倉健)と藤枝洋二(井川比佐志)。山岡は藤枝の直属の上官であった。一方、彼らのさらに上に立つ金山少尉(小澤政悦)は朝鮮人でありながら日本軍に属し、許嫁の知子(田中裕子)がいたのだが特攻の一員として命を散らした。そして戦後、山岡と知子は結婚し、知覧の海で漁師として生きている。

 この相関図を見ただけでも複雑なのだが、映画はそれらを全て掬い上げようとしたところが話が拡散してしまったという印象を与えたのではないか?

 時代は昭和が終わり、平成の世の中に移り変わる中、藤枝洋二は特攻隊員として玉砕するはずだった自分が生き延びてしまったという罪悪感に苛まれながら昭和の時代を生き、昭和の世が終わるとともに自ら死を選択してこの世を去ってしまった。私はこのエピソードを深く掘り下げるだけでも一つに映画になり得るのではないか、と思えたのだが…。

   

 ※ 自死する前に “知覧の母" と呼ばれた富屋食堂の女主人のところに挨拶に訪れた藤枝洋二。左の女の子は藤枝の孫娘である。 

 映画は戦争当時に戻り、知覧で束の間の時間に交友する特攻兵同士の交流の中、金山少尉は自ら朝鮮人だと名乗り、許嫁(知子)がいたことを仲間に明かしたうえで、自らの任を全うする。

 その後、知子がどのような経緯で山岡と結婚することになったのかは映画の中では語られていないが、山岡の性格から知子の境遇に同情いる中で愛情に変わり結婚に至ったのではないかと想像される。彼らは深く愛し合い、知子が腎臓病を患うと山岡は自分の腎臓を提供しようとさえ考えるほどだった。

 話はここで終わらない。特攻兵時代、知覧には “知覧の母” と特攻兵たちから慕われた富屋食堂の女主人の山本富子(奈良岡朋子)がいた。富子は金山が出撃する際に朝鮮の親への遺品を預かった。富子はその遺品を朝鮮にいる金山の親に届けてほしいと山岡たちに依頼する。そして山岡たちは知子の病身を押して朝鮮に渡り便りを届けようとしたのだが、冷たい対応をされるのだった。それに対する山岡たちの真摯な姿に親たちも態度を改めたのだったが…。

 というように、さまざまな要素が入り組んだストーリーの映画だった。

          

 私にはこの映画の主題(テーマ)はいったい何だったのだろうか?という疑問が残る。あまりにもさまざまな要素を詰め込み過ぎて焦点がぼやけてしまった印象だけが残ってしまった…。国の意思、上官の命令、そうしたものに逆らえない兵士の悲哀…、それだけを描くことで戦争のという非人間的な営為を炙り出すだけで良かったのではないか、そう思えた映画「ホタル」だった。

※ 掲載した3枚の写真は全てウェブ上から拝借しました。



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