“ポスト・ツルース”とか、“オルタナティブ・ファクト”というワードがトランプ米大統領の出現と共に、目にする機会や耳にする機会が増えてきた。トランプ氏ほどの影響力のある人間が厚顔にも真実とは思えぬ情報を次々と発信する世の中で、私たちはどう考えねばならないのか、ヒントを得たいと講演会に参加した。

3月19日(日)午後、札幌市中央図書館において「〈ポスト真実〉時代の知と情報 ~ネットにだまされない情報術~」と題する講演会があった。講師は朝日新聞IT専門記者で「オピニオン編集部」所属の平和博記者だった。
まず、リード文に掲げた二つのワードについて、辞典的に定義しておく。
“ポスト・ツルース”だが、この言葉を理解するには次の説明が適切であろう。「世界最大の英語辞典であるオックスフォード英語辞典は16日、2016年を象徴する「今年の単語(ワード・オブ・ザ・イヤー)」に、形容詞「post-truth」を選んだと発表した。意味は「世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況」としている」
続いて“オルタナティブ・ファクト”だが、「オルタナティブ」とは「英語の〈二者択一〉という意味から転じ、現在あるもののかわりに選び得る新しい選択肢、代替案のこと」である。「ファクト」は「真実」と訳される。
したがって、“オルタナティブ・ファクト”は「もう一つの真実」と訳されている。
平氏は最初に、米大統領選のさなかにトランプ候補側からネット上に流された「ピザゲート事件」について触れた。「ピザゲート事件」とは、ワシントンのピザ屋を舞台にして、そこに小児性愛者の集団があり、民主党の最高幹部たち(クリントンも含めて)が関わっているという情報がネット上を駆け巡り、実に100万通ものリ・ツィートがなされたという。
また、選挙期間中に「ローマ法王がトランプ氏を支持した」という、あり得ない情報がネット上を駆け巡ったともいう。
こうした現象は、人々は今やその情報が客観的な事実に基づいているか否かより、情報が面白いか、興味あるものか、あるいは自分たちにとって有益であるかどうか、という尺度で拡散していくということがネット社会の現象となっていると平氏は指摘する。
そこを利用して選挙戦略を立てたのがトランプ陣営だというのである。
また、“オルタナティブ・ファクト”に関しては、次のような事象を記憶されている方が多いと思われる。
今年1月20日の大統領就任式に集まった聴衆が、8年前のオバマ氏のときと比べて半分以下だったと大手メディアが映像と共に伝えたことに対して、スパイサー報道官は「メディアは意図的に虚偽の報道をしている」とし、「就任式の聴衆はこれまでで最大のものだった」と発表したことを受けてのテレビ番組に出演したときのコンウェイ大統領顧問(女性)の発言が話題を呼んだ。コンウェイ氏はスパイサー氏の発言を擁護して「スパイサーはオルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)を伝えたのだ」と…。
こうしてオルタナティブ・ファクトを声高に唱えることで、人々は既存メディアが伝えることに疑義を感じ、SNSの情報の方を信じる層が多数出てきているのが米国の現状のようだ。
平氏は、こうした現状が生まれてきた背景の一つとして、米国の既存メディア、特に新聞媒体の衰退があるとした。経営が困難な新聞社が多く、十分な取材ができないことで信頼が薄らいでいるという背景もあるとした。
ネット社会がこれだけ広がった現代においては、ネットから情報を収集することが主流となってくるのは避けられないが、そうした環境の中で我々はどうすれば良いのか、という問題について平氏は次のようにまとめた。
①サイトの説明を確認すること。
②他のニュースサイトも報じているか確認すること。
③筆者は誰かを確認すること。
④情報源がどこかを確認すること。
などが重要であるとした。
米国ほど極端ではなくとも、日本においても状況は似たようなものであると指摘する識者もいる。ネット時代においては、何が真実なのかを見極める見識が問われる時代になったということのようだ。

3月19日(日)午後、札幌市中央図書館において「〈ポスト真実〉時代の知と情報 ~ネットにだまされない情報術~」と題する講演会があった。講師は朝日新聞IT専門記者で「オピニオン編集部」所属の平和博記者だった。
まず、リード文に掲げた二つのワードについて、辞典的に定義しておく。
“ポスト・ツルース”だが、この言葉を理解するには次の説明が適切であろう。「世界最大の英語辞典であるオックスフォード英語辞典は16日、2016年を象徴する「今年の単語(ワード・オブ・ザ・イヤー)」に、形容詞「post-truth」を選んだと発表した。意味は「世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況」としている」
続いて“オルタナティブ・ファクト”だが、「オルタナティブ」とは「英語の〈二者択一〉という意味から転じ、現在あるもののかわりに選び得る新しい選択肢、代替案のこと」である。「ファクト」は「真実」と訳される。
したがって、“オルタナティブ・ファクト”は「もう一つの真実」と訳されている。
平氏は最初に、米大統領選のさなかにトランプ候補側からネット上に流された「ピザゲート事件」について触れた。「ピザゲート事件」とは、ワシントンのピザ屋を舞台にして、そこに小児性愛者の集団があり、民主党の最高幹部たち(クリントンも含めて)が関わっているという情報がネット上を駆け巡り、実に100万通ものリ・ツィートがなされたという。
また、選挙期間中に「ローマ法王がトランプ氏を支持した」という、あり得ない情報がネット上を駆け巡ったともいう。
こうした現象は、人々は今やその情報が客観的な事実に基づいているか否かより、情報が面白いか、興味あるものか、あるいは自分たちにとって有益であるかどうか、という尺度で拡散していくということがネット社会の現象となっていると平氏は指摘する。
そこを利用して選挙戦略を立てたのがトランプ陣営だというのである。
また、“オルタナティブ・ファクト”に関しては、次のような事象を記憶されている方が多いと思われる。
今年1月20日の大統領就任式に集まった聴衆が、8年前のオバマ氏のときと比べて半分以下だったと大手メディアが映像と共に伝えたことに対して、スパイサー報道官は「メディアは意図的に虚偽の報道をしている」とし、「就任式の聴衆はこれまでで最大のものだった」と発表したことを受けてのテレビ番組に出演したときのコンウェイ大統領顧問(女性)の発言が話題を呼んだ。コンウェイ氏はスパイサー氏の発言を擁護して「スパイサーはオルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)を伝えたのだ」と…。
こうしてオルタナティブ・ファクトを声高に唱えることで、人々は既存メディアが伝えることに疑義を感じ、SNSの情報の方を信じる層が多数出てきているのが米国の現状のようだ。
平氏は、こうした現状が生まれてきた背景の一つとして、米国の既存メディア、特に新聞媒体の衰退があるとした。経営が困難な新聞社が多く、十分な取材ができないことで信頼が薄らいでいるという背景もあるとした。
ネット社会がこれだけ広がった現代においては、ネットから情報を収集することが主流となってくるのは避けられないが、そうした環境の中で我々はどうすれば良いのか、という問題について平氏は次のようにまとめた。
①サイトの説明を確認すること。
②他のニュースサイトも報じているか確認すること。
③筆者は誰かを確認すること。
④情報源がどこかを確認すること。
などが重要であるとした。
米国ほど極端ではなくとも、日本においても状況は似たようなものであると指摘する識者もいる。ネット時代においては、何が真実なのかを見極める見識が問われる時代になったということのようだ。