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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

遂に対面! 夷酋列像

2015-10-08 21:54:30 | イベント
 遂に!フランス・ブザンソン美術考古博物館所蔵の真「夷酋列像」と対面した! さすがに本物に漂う深みのある画は、他の模本や粉本を圧倒している感があった。しかし、背景を知ってしまった私には、一方で複雑な思いもあった…。 

 「夷酋列像」に関する三つの講演・講座を受講し、事前知識をしっかり叩き込んだ私は本物の対面する機会を待っていた。
 昨日、午前に所用を済ませると、午後には特に予定はなかった。平日とあって、「これはチャンス!」と北海道博物館まで車を走らせた。(それにしても北海道博物館はちと遠いなぁ…)

            

            

 ねらいどおり、博物館はそれほどの混みようではなかった。
 さっそく観覧料1,000円を払い入場した。
 「夷酋列像」展は第一章から第四章まで、大きく四つのテーマで展示されていた。
 その四つとは、「第一章 夷酋列像の系譜」、「第二章 夷酋列像をめぐる人」、「第三章 夷酋列像をめぐる物」、「第四章 夷酋列像をめぐる世界」となっていた。

            

 入場して直ぐの「第一章 夷酋列像の系譜」では、ちょっとした説明書きの後に、いきなりブザンソン所蔵の本物とのご対面である。そこには12人のアイヌ人たちが描かれた列像が展示されていた。(ただし、1枚はブザンソン所蔵のものではない⇒イコリカヤニ)
 画はA3版程度の小さなものであったが、非常に精緻に描かれていて、これを目にした江戸時代の人々にとっては大変な驚きだったに違いないと思わせられる素晴らしさだった。

                 
         ※ どの画も素晴らしい夷酋列像であるが、その中でも一つを選ぶとすればこのツキノエの画だろう。

 そのブザンソン所蔵の画の周りには、数々の模本や粉本が陳列されていた。というのも、波響作の「夷酋列像」の評判を耳にした各地の藩主はお抱えの絵師に対して模写を命じたようなのだ。
中には明らかに見劣りするものもあったが、小島雪ソウ(山へんに青)という絵師の描いた模本は説明書きでも最も評価が高いと書かれていたが、私のような素人が見るかぎり違いが分からないほど見事な出来栄えだった。私は何度も両者を行き来しながら見比べてみたのだが…。

                  
         ※ このイコリカヤニの画だけはブザンソン博物館にはない。展示された画もどこか他のものとは異質な感じがしたが…。

 その他、面白いと思ったのは「蝦夷漫画」と題する松浦武四郎がアイヌ民族の生活文化を広く紹介するために出版した小冊子に、似て非なるアイヌが描かれているものが展示されていた。それは「夷酋列像」の中のシモチを描いたものらしいのだが…。

 続いて、「第二章 夷酋列像をめぐる人」のコーナーに移った。説明で、「夷酋列像」に描かれた12人は、「異容」であり、かつ「威容」だという。そのような画を波響はいかして生み出したのか?その背景を探るコーナーだった。
 波響は、江戸で習得した南蘋(なんぴん)派の描き方や、当時日本に取り入れられたばかりの西洋画の表現、その頃話題になっていた仙人図譜のポーズ、中国の功臣像のフォーマットなど、同時代絵画のさまざまな要素を利用したことがうかがえるという。
 第二章では、そうした影響を受けたと思われる波響の作品や、中国の画家の作品などが展示されていた。
 
 その中で、私はイコトイとツキノエのポーズの基となった「関羽図」に注目した。すると、イコトイのポーズの基となった№30の蠣崎波響作の「関羽図」は直ぐに見つけることができた。ところが、№31の宋紫石作の「関羽図」がいくら探しても見つからない。あきらめきれない私は会場を何度往復しただろうか?会場には説明員らしき人も見当たらない。
 何気なく入口で渡された展示資料リストに目を落とすと、展示期間という項目があった。それによると、№31は9月5日~10月4日と出ているではないか! 反対に№30は10月6日~11月8日が展示期間ということで、私は期間前半に入場した人たちが見ることのできなかった蠣崎波響作の「関羽図」を見ることができた、ということのようだった。
 そんなことをせずに、全てを見せてはくれないのかなぁ…。

                 
            ※ 蠣崎波響の自画像(?)なのだが、彼の手によるものだろうか?はっきりしなのだが…。

 第三章、第四章は、私にとってはそれほど関心を抱く展示ではなかったので、さーっと見るにとどめた。
 
 今回のように事前に予備知識をしっかり叩き込んで美術品を鑑賞するという体験は、おそらく私にとっては初めての経験だった。まだまだ鑑賞眼は甘いものだが、良い経験をした今回の「「夷酋列像」展だった。