高山に生きる生物たちは寒冷地気候を適した生物であるが、それらは地球温暖化に対して非常に脆弱であるという。大雪山を主たる研究フィールドとしている講師から、近年の気候変動による植物たちの変化の様子を聴いた。
北大公開講座「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」の最終講である第6講が前回から2週間の間をおいた9月30日(水)夜、地球環境科学院であった。
この回のテーマは「高山植物と気候変動」という正統的(?)な講義題で地球環境科学研究院の工藤岳准教授が講師を担当した。
工藤准教授は、そのお名前からも、髭をたくわえた容貌からも、いかにも山を研究フィールドされている方のようだった。
日本国内で高山とされる(高山生態系が棲息する地域)山は、富士山、北岳、穂高岳、鳥海山、岩手山、大雪山、利尻岳など限られた山だけで、陸地面積は国土の約3パーセントだそうだ。その中でも富士山と大雪山には永久凍土の地域が存在する国内では貴重な地域だそうだ。
その中で生息する植物に大きな特徴があるという。それは、同じ種ではあっても、北海道など北方系の山の種と、中部山岳系の種とでは、遺伝的に異なっているらしい。それは、過去の気候変動の履歴がもたらす影響だということだ。その要因についても言及されたが、ここでは割愛する。
次に、高山においては積雪の様相によって植生のタイプが大きく変わるという。最も顕著な例は、北東斜面の風衝地と南西斜面の雪田地による違いである。風衝地は積雪が少なく乾燥土壌であるのに対し、雪田地は積雪が多いため湿潤土壌となることによって、植生が違ってくるようだ。

※ 同じミヤマキンバイでも、左は風衝地、右は雪田地に育ったものと考えられます。両者の花丈の違いに注目ください。
すると、一つの山においても種が多様になり、また融雪期の違いにより、開花時期が異なり、それが花を媒介とする昆虫群集を維持することに繋がっているともいう。
ところがこの複雑で微妙な開花時期が気候変動の影響によってズレが生じ始めているらしい。そのことは昆虫が棲息しにくい状況となり、ひいては植物の衰退にも通ずると工藤准教授は心配する。

※ 高山植物の花粉の媒介に深く関与するマルハナバチです。
実際、大雪山では気温や雪解け時期などについて、数十年レベルで観測を続け、その変化を追っているということだが、ここ十数年のスケールでも顕著な変化が見られるという。
例えば、気温はここ10年で0.32度上昇したという。また、融雪時期も10で3.8日早まってきている。さらに温暖化によって乾燥化が進んだことで、お花畑が衰退し、そこにチシマザサが進出してきているという。大雪山においては、チシマザサの分布がここ35年間で倍増したという観測結果も報告されているそうだ。

※ チシマザサは私も登山をしていて、いつも閉口するほど北海道の山に繁茂する植物です。
工藤准教授は最後に、気候変動に伴う生態系の攪乱が高山生態系で進行していることは確かだが、生態系攪乱のスピードや方向性の予測のためには情報が著しく不足しているとした。したがって、今後、長期にわたるモニタリングによる生態系の定期的観測が大変重要である、と結んだ。
数年前に大雪山を縦走した際、確か赤岳だったと記憶しているが、気象観測をする機器が設置されているのを見たことがあるが、こうした地道な観測&研究が貴重な高山植物を絶やさないために必要だということを再確認させられた講義だった。
以上、地球環境科学研究院が主催する「北海道の野生生物:自然史との環境変化への応答」を6回にわたって受講してきたが、中には難しい講義もあったが、新しい知見、既知のことを再確認できたことなど、実り多い6回の講座だった。
※ さあ、私はこれから今夜10時30分キックオフの「ラグビーWC」の日本の第三戦となる対サモア戦をパブリックビューイングで観戦するため、ユナイテッドシネマ札幌に向かいます。
ラグビージャパンは予選通過のためには崖っぷちに立っています。なんとか最終戦まで望みを繋ぐために勝利してほしいと願いながら大画面に向かって声援を送り続けてきます。その様子は明日のブログでレポします。
北大公開講座「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」の最終講である第6講が前回から2週間の間をおいた9月30日(水)夜、地球環境科学院であった。
この回のテーマは「高山植物と気候変動」という正統的(?)な講義題で地球環境科学研究院の工藤岳准教授が講師を担当した。
工藤准教授は、そのお名前からも、髭をたくわえた容貌からも、いかにも山を研究フィールドされている方のようだった。
日本国内で高山とされる(高山生態系が棲息する地域)山は、富士山、北岳、穂高岳、鳥海山、岩手山、大雪山、利尻岳など限られた山だけで、陸地面積は国土の約3パーセントだそうだ。その中でも富士山と大雪山には永久凍土の地域が存在する国内では貴重な地域だそうだ。
その中で生息する植物に大きな特徴があるという。それは、同じ種ではあっても、北海道など北方系の山の種と、中部山岳系の種とでは、遺伝的に異なっているらしい。それは、過去の気候変動の履歴がもたらす影響だということだ。その要因についても言及されたが、ここでは割愛する。
次に、高山においては積雪の様相によって植生のタイプが大きく変わるという。最も顕著な例は、北東斜面の風衝地と南西斜面の雪田地による違いである。風衝地は積雪が少なく乾燥土壌であるのに対し、雪田地は積雪が多いため湿潤土壌となることによって、植生が違ってくるようだ。


※ 同じミヤマキンバイでも、左は風衝地、右は雪田地に育ったものと考えられます。両者の花丈の違いに注目ください。
すると、一つの山においても種が多様になり、また融雪期の違いにより、開花時期が異なり、それが花を媒介とする昆虫群集を維持することに繋がっているともいう。
ところがこの複雑で微妙な開花時期が気候変動の影響によってズレが生じ始めているらしい。そのことは昆虫が棲息しにくい状況となり、ひいては植物の衰退にも通ずると工藤准教授は心配する。

※ 高山植物の花粉の媒介に深く関与するマルハナバチです。
実際、大雪山では気温や雪解け時期などについて、数十年レベルで観測を続け、その変化を追っているということだが、ここ十数年のスケールでも顕著な変化が見られるという。
例えば、気温はここ10年で0.32度上昇したという。また、融雪時期も10で3.8日早まってきている。さらに温暖化によって乾燥化が進んだことで、お花畑が衰退し、そこにチシマザサが進出してきているという。大雪山においては、チシマザサの分布がここ35年間で倍増したという観測結果も報告されているそうだ。

※ チシマザサは私も登山をしていて、いつも閉口するほど北海道の山に繁茂する植物です。
工藤准教授は最後に、気候変動に伴う生態系の攪乱が高山生態系で進行していることは確かだが、生態系攪乱のスピードや方向性の予測のためには情報が著しく不足しているとした。したがって、今後、長期にわたるモニタリングによる生態系の定期的観測が大変重要である、と結んだ。
数年前に大雪山を縦走した際、確か赤岳だったと記憶しているが、気象観測をする機器が設置されているのを見たことがあるが、こうした地道な観測&研究が貴重な高山植物を絶やさないために必要だということを再確認させられた講義だった。
以上、地球環境科学研究院が主催する「北海道の野生生物:自然史との環境変化への応答」を6回にわたって受講してきたが、中には難しい講義もあったが、新しい知見、既知のことを再確認できたことなど、実り多い6回の講座だった。
※ さあ、私はこれから今夜10時30分キックオフの「ラグビーWC」の日本の第三戦となる対サモア戦をパブリックビューイングで観戦するため、ユナイテッドシネマ札幌に向かいます。
ラグビージャパンは予選通過のためには崖っぷちに立っています。なんとか最終戦まで望みを繋ぐために勝利してほしいと願いながら大画面に向かって声援を送り続けてきます。その様子は明日のブログでレポします。