田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

至福のとき…

2012-08-05 17:42:07 | その他
 それはきっと…。 
 彼らにとって至福のときだったのではないだろうか? 
 そう思えるほどその光景は幸せに満ちたひと時のように私の目には映った…。
 

 北海道の高原に位置する温泉地…。
 夏とはいえ、夕暮れが近づいてくると昼の暑さはどこへやら、心地良い風が吹いてくる芝地で親子はたたずんでいた。
 「お母さん、 ボク速く走ることができるようになったよ!見ていて!」
 そういうと子どもは走り出した。母親のところから30mくらい走っただろうか。子どもは立ち止まり、母の方を見て「どうだい!」と云わんばかりの顔をして母親の方を見ていた。なるほどその走りは速く、きれいな走りだった…。
 そしてまた子どもは母親の方に向かって走り出した。
 母親のところまで来ると、子どもはご褒美のお乳をねだった。そのとき母親は満足そうな表情を浮かべ、子どもにお乳を与えるのだった…。

 7月30日、私は層雲峡温泉に宿泊した夕刻、ホテルから散歩に出かけた。
 その時、道路の向こうの柵の外側にエゾシカの親子がたたずんでいたのだ。
 ずっと様子をうかがっていたが、母親のシカは私を認めても逃げようとしない。そのうち生まれてまだ間もないと思われる小さな子ジカが柵に沿って駆け出した。もう立派な美しい走りである。
 あるところまで走って立ち止まり、そこからまた母シカのところまで帰ってくるのだ。
 帰ってくると、子ジカは母親のお乳をねだるように乳房に吸い付いていた。母シカは嫌がる素振りをするどころか満足そうに乳を与えていた。

          

 その様子を見ていて私はまるで人間の親子を見ているような気分になった。
 人間の親が子どもの成長ぶりを喜ぶように、母シカにとっても子ジカの成長した走りは嬉しかったに違いない。
 心地良い気温の夕暮れの中、それは親子のシカにとって至福の時間であったに違いない。
 それを見ていた私にとっても、それは至福のひと時であった。

 おっと、残念ながらこの様子を写すべくカメラを私は用意していなかった。代わりにスマートフォンのカメラで2枚だけ撮ることができた。

          
          
 厳しい自然の中で繰り広げられる生存競争にあの二頭の親子ジカは生き残っていけるのだろうか? いや、すでに人目のつくところに出てきているということは群れの中から追い出されてしまったからかもしれない…。そういえば心なしか母親の体も小さかったようだ。
 願わくば彼ら親子の至福の時が少しでも長く続くことを祈りたい…。