今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

ある小児科の先生の話

2012-03-16 18:53:23 | 

街の商店街の中ほどの

ビルの2階に小さな小児科が一つ。

開業して37年。

先生のところには

だんだん患者がいなくなる。

なぜなら

ここに来た子たちは

みんな元気になっていくから…。

先生は注射もしなければ

薬も出さないけど

子どもの健康にとって悪いことは

ちょっとばかし手厳しい。

だから親は耳が痛い。

けれどそんな噂を聞いて

また新しい親子がやってくる。

今、81歳の先生。

開業以来休んだのは

数年の前にたった1日。

奥様の葬儀の日だけだった。

街の商店街の中ほどの

ビルの2階に

医療機器ではなく本に囲まれた

寒いけれど温かい小児科医が一つ。

先生に出会えた子どもは幸せだ。

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クロッカス〈アヤメ科〉

copyright Maoko Nakamura


記憶の街

2012-03-15 23:23:11 | 気持ち

かすれゆく

記憶の街に佇む。

喧噪が流れていく。

さわさわと…。

何かを囁くように…。

その音に耳を傾ける。

遠い記憶に耳を傾けるように…。

けれどもう何もわからない。

ひとり岸辺に残されて

ただ佇む。

ふと友の笑顔。

遠い記憶から流れてきた

花のごとく…。

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梅〈バラ科〉

copyright Maoko Nakamura


一粒の光

2012-03-14 07:03:04 | 気持ち

雪のさなか雲が切れ

塀に宿った一粒の光を

朝日が虹の色ごとく輝かせる。

その一粒の光を。

一粒の種が地で芽吹くように

一粒の光が心に芽吹く。

幼けないその芽吹きが

心に根付くことを願わん。

何かわからねど

何かよきものが咲くことを願って。

未だ遠い心の春の日に。

Photo

パンジー〈スミレ科〉

copyright Maoko Nakamura


のどの小骨

2012-03-13 11:53:01 | 気持ち

のどに引っかかった

小骨が一つ。

飲み込もうにも飲み込めない。

時折

自己主張をするように

ちくちくと痛みだす。

あの日

のどに引っかかった

小骨が一つ。

けれど引っかけていたのは

自分の小骨。

3

冬知らず〈キク科)

copyright Maoko Nakamura


キミへ

2012-03-11 09:05:04 | 

心に思ったことで

キミは一歩を踏み出した。

0は限りなく0であるが

1は限りない無限の始まり。

話したことで

キミはもう一歩踏み出した。

今度は

胸のうちから外へと。

そして明日には

きっとまた一歩。

キミはできないことを考えるのをやめ

できる小さなことを考え始めた。

キミは歩むことを始めた。

自らとともに…。

できない大きなことを成し遂げるために。

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ノースポール〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


春のおすそ分け

2012-03-10 10:33:16 | 自然・植物

バケツに入れられた

とりどりの花。

キンセンカ、ストック、

水仙、チューリップ、菜の花…。

花畑にいる気分で

ぐるぐる回って買ったのは

クリーム色と紫色の八重のストック。

1束3本で200円。

分かれている茎を切ると

たくさんの本数に…。

束にして部屋に飾る。

空き瓶に入れてトイレにも飾る。

待ちわびる春の

心華やぐおすそ分け。

けれど、弥生も半ば近いのに

また明日から雪マーク。

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出雲・奉納山のやぶ椿、奉納山から見た出雲の町と稲佐の浜

copyright Maoko Nakamura


移ろい

2012-03-09 17:42:26 | 遊び・歳時

文具店でうろうろしていると

レター用品が目に入る。

おぼろげに顔が浮かんで

ミモザの絵柄の葉書を手に取る。

またおぼろげに顔が浮かんで

桜の絵柄の便箋を手に取る。

クリスマスの絵柄の葉書と

雪景色の絵柄の便箋も

冬の初めに

そんなふうに買ったのだろう。

おぼろげに顔を

思い浮かべながら…。

届けられた

冬模様の便りの上に

時間が静かに降り積もる。

ミモザの絵柄の葉書と

桜の絵柄の便箋を手に取り

少しずつ冬がおぼろげになり

少しずつ春になっていく…。

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ジュリアン〈サクラソウ科〉

copyright Maoko Nakamura


三度目の出会い

2012-03-08 17:13:03 | ヨガ・呼吸

かつて扉をたたいた時

扉は固く閉ざされていた。

再度、扉をたたいた時

扉は少しだけ開いた。

けれどすぐに閉ざされた。

三度、扉をたたいた時

扉は中に入れるだけ開いた。

そして一歩踏み入れた。

目が慣れてきて

映し出されたのは

見覚えのある風景だった。

どの扉もどの壁も…。

今度はうちからたたくのだ。

たくさんの扉を開けて

光と風を入れ

自分から自由になるために…。

2

福寿草〈キンポウゲ科〉

copyright Maoko Nakamura


いきかたを変える

2012-03-07 09:52:58 | 気持ち

春一番が吹いた夕方

いつもと違った道を通って家に向かう。

いつも前を通っている

小さなお社がある

いつもの道に近づく。

お社の角を曲がって

いつもの道に出ようとしたとき

いつもの道からは木立で

見えないところでお地蔵様が

手を合わせてこちらを見ておられる。

慌てて手を合わせて拝むと

お地蔵さまも手を合わせて

拝んでくださる。

ありがたい気持ちになる。

少し行き方を変えて

ほんの少しその日の生き方が変る。

心の中にも春一番。

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クロッカス〈アヤメ科〉

copyright Maoko Nakamura


ネギじゃこ卵焼きの朝

2012-03-06 09:13:01 | 気持ち

朝食事の準備をする。

いつもと同じような朝。

ネギを刻みながら

けれど

今日はもう二度とないことを

ふと思う。

だからというわけではないが

だからというわけであるからかもしれないが

卵焼きにネギに加えて

じゃこを入れてみる。

少し多めに。

窓の向こうには

絹織物のひだのような雲…。

雲も春の装いか。

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草月いけばな展より

copyright Maoko Nakamura


折れたアネモネ

2012-03-05 09:42:47 | 自然・植物

何度も雪をかぶり

すっぽり雪に埋もれもし

それでもしゃんと背筋を

伸ばしていたアネモネが

春を目の前に

風で折れてしまった。

添え木に寄りかからせていたが

今朝見ると

後から咲いたアネモネに

折れた体を預け

頬を寄せあいながら咲いていた。

互いが互いを愛しむように…。

今この時を愛しむように…。

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アネモネ〈キンポウゲ科〉 右:綿帽子のアネモネ

copyright Maoko Nakamura


春の目覚め

2012-03-04 19:53:10 | 自然・植物

今朝見た夢は

誰かを探している夢。

学校らしきところで

その人のことを聞きながら探し回る。

その誰かがわかりそうな

ところで目が覚める。

懐かしい余韻が一日中続く。

脳の奥深くに眠っていた

遠い思い出までも目を覚ます春。

窓をたたく雨は

もう冬の雨ではなく

一雨ごとに春が目覚める。

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桜〈バラ科〉 草月いけばな展にて

copyright Maoko Nakamura


空へ

2012-03-03 09:43:39 | 

荒れた天気が収まり

春を探しに庭に出る。

風は冷たいけれど日が差して

庭の向こうの川面が輝く

ゆらゆらと…。

ミモザのそばには

ヒヤシンスの緑の蕾、

バラも芽吹き、

ローズマリーの根元には

福寿草の金色の蕾。

なんだかわからない

お楽しみの小さな芽吹きも…。

本当に久しぶりの良い天気。

でも、きっと晴れると思ってた。

あなたが空に還る日だから…。

Photo

福寿草〈キンポウゲ科〉

copyright Maoko Nakamura


悲しみ

2012-03-02 10:04:46 | 

受話器をおろして

外を見るといつもの海。

思いのほか青く

涙に潤んだようなその色に

海の悲しみを知る。

夜からはしとしと雨が降り出し

朝には風も加わり

ゴーゴーという音に起こされる。

海も空も風も

悲しんでいるのだろう。

山は閉じこもり姿を見せない。

けれど明日には落ち着き

寄る辺なき人々の悲しみを

受け止めてくれるのだろう。

あなたが逝って

寄る辺を失った私たちの悲しみを。

合掌。

Photo

パンジー〈スミレ科〉

copyrigut Maoko Nakamura