今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

ある小児科の先生の話

2012-03-16 18:53:23 | 

街の商店街の中ほどの

ビルの2階に小さな小児科が一つ。

開業して37年。

先生のところには

だんだん患者がいなくなる。

なぜなら

ここに来た子たちは

みんな元気になっていくから…。

先生は注射もしなければ

薬も出さないけど

子どもの健康にとって悪いことは

ちょっとばかし手厳しい。

だから親は耳が痛い。

けれどそんな噂を聞いて

また新しい親子がやってくる。

今、81歳の先生。

開業以来休んだのは

数年の前にたった1日。

奥様の葬儀の日だけだった。

街の商店街の中ほどの

ビルの2階に

医療機器ではなく本に囲まれた

寒いけれど温かい小児科医が一つ。

先生に出会えた子どもは幸せだ。

Photo

クロッカス〈アヤメ科〉

copyright Maoko Nakamura