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今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

光の柱

2012-01-14 19:43:11 | 物語

日がな1日働いている

光の精のために

風は雨を紡いで

ふかふかのベッドを用意する。

光の精は「やれやれ」と

雲のベッドで一休み。

ぐっすり眠ってしまったよ。

おかげで今日は

日がな1日曇り空。

けれど元気なものたちは

ベッドを抜け出しやってくる。

ほら、あの山の頂に

光の柱が伸びている。

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コースポール〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


冬と春の涙~チューリップ

2012-01-07 10:03:35 | 物語

冬と春は

遠い昔、恋人同士だった。

けれど二人は

ささいなことでケンカして

春は南へ、冬は北へと旅立った。

それから二人は後悔し

冬は春を探しに行った。

けれどいつも見失った。

春は冬を待った。

けれどいつも消え失せた。

冬は春のことが愛しくて泣き

春は冬のことが恋しくて泣いた。

不憫に思った神様は

二人の流した涙を集めて

そっと土の中に葬った。

するとチューリップの花が咲いた。

だから、チューリップの球根は

涙の形をしているのだとさ。

そして冬の寒さで目を覚し

春の温かさで花開くのだとさ。

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球根の芽吹き

copyright Maoko Nakamura


神さまが創った花〈牡丹〉

2011-09-03 10:04:03 | 物語

地球を造り上げると

神さまは山の上から満足げに眺めた。

起伏に富んだ大地や

青い海原、緑の森・・・。

それはそれは美しかった。

けれど

何かが足りないような気がした。

そこで神さまは

花を咲かせようと思った。

葉を重ねてみると

かわいらしい花になった。

さて、色に悩んだ神さまは

太陽に尋ねた。

すると太陽は答えた。

「私の赤い色を差し上げましょう」

神さまは大地にも聞いてみた。

すると大地は答えた。

「私の黒い色を差し上げましょう」

緑の花は

深い紅色の花になった。

天と地とを

艶やかに彩るその花を

神さまはたいそう気に入った。

神さまは山の上から満足げに眺めた。

ずっと後になって人が生まれ

それを「百花の王」と呼んだ。

今でも中国の高い山の懐に

その花は咲くという。

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牡丹〈ボタン科〉

copyright Maoko Nakamura


金魚とドジョウ

2011-09-01 09:54:02 | 物語

スポットライトを浴びて

踊ることに疲れた金魚は

ふと下を見た。

するとドジョウが

のんびり寝そべっていた。

泥にまみれて

働くことに疲れたドジョウは

ふと上を見た。

すると金魚が

楽しそうに遊んでた。

「もしもしドジョウさん」

「はいはい金魚さん」

「ちょっと替わってみませんか」

「それはいい考えだ」

金魚はドジョウになって

ドジョウは金魚になった。

けれど

楽しいどころか居心地悪く

楽などころか大変で・・・。

「もしもし金魚さん」

「はいはいドジョウさん」

「もう元に戻りましょうか」

「それはいい考えだ」

金魚は金魚になり

ドジョウはドジョウになった。

もう下を見たり

上を見たりすることもなく・・・。

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金水引〈バラ科〉

copyright Maoko Nakamura


「やあ、フランソワ!」

2011-06-26 09:13:58 | 物語

「やあ、フランソワ!」

ボクは挨拶をする時

必ずキミの名前を呼ぶよ。

ボクがキミの名前を

忘れないためでもあるけど

キミがキミであることを

覚えておけるようにとね。

「やあ、テイラー!」

キミは挨拶する時

必ずボクの名前を呼ぶね。

キミがボクの名前を

忘れないためでもあるけど

ボクがボクであることを

覚えておけるようにとね。

「やあ、フランソワ!」

「やあ、テイラー!」

互いの名前を呼び合って

挨拶をするのさ。

今、ここに

こうして互いがいることを

祝するためにね。

「やあ、フランソワ!」

「やあ、テイラー!」

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バラ〈バラ科〉

copyright Maoko Nakamura


ローズヒップ~薔薇の涙~

2011-05-27 13:14:00 | 物語

遠い国の小さな町に「薔薇屋敷」と呼ばれる家がありました。

庭にはたくさんの種類のバラが競って咲き

馨しい香りが辺り一面に漂っていました。

とてもお天気のよい朝、エイミーは

天使の羽根のような花びらをそっと広げました。

花びらをなでて通り過ぎる風がくすぐったくて笑っていると

ひとりの若者がエイミーのところにやってきました。

そして、そっと手を添えると顔を近づけ香りをかぎました。

エイミーはドキドキしました。

若者はすぐにどこかへ行ってしまいましたが

エイミーはその若者のことが好きになってしまいました。

エイミーは毎日、その若者のことを待っていましたが、

彼はやってきませんでした。

ピンク色だった花びらは白くなり、やがて散る時がやってきました。

エイミーは悲しくて泣きました。

風が色褪せてしまった花びらをハラハラと散らしていきました。

憐れに思ったお日さまは

エイミーの涙を優しい光を包んでやりました。

気がつくとエイミーは小さな朱色の実になっていました。

ローズヒップの実が酸っぱさはエイミーの悲しみ。

そして体に良いのはエイミーのきれいな想いがいっぱいだからとさ。

                                    おしまい

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上段/スキャボロフェアー、不明、シーガル、不明

下段/フレグラントオールドローズ、野バラ

copyraight Maoko Nakamura


慈悲まんじゅう

2011-04-21 10:54:00 | 物語

あるところに

悟りが開けなくて

苦しんでいたお坊さんがいました。

熱心にお題目を唱えたり

偉いお坊さんに

教えを乞うたりしましたが

心穏やかになれませんでした。

ある日寝ていると

夢に仏様が現れて

「毎日あんこの入ったおまんじゅうを作り

村人にあげなさい」と告げられました。

といっても

小豆もなければ粉もありません。

お坊さんは檀家へ托鉢に行き

小豆と粉を分けてもらうと

見よう見まねでまんじゅうを作りました。

最初はうまく作れませんでしたが

次第に上手になりました。

村人は「ありがたいおまんじゅう」と

感謝していただき

作り方を教えてもらいました。

そのおまんじゅうは村の名物となり

お坊さんもともに働きました。

お寺は檀家の人で賑わうようになり

気がつくと

苦しみはどこかへ行っていました。

そんなある日

お坊さんが

縁側でまんじゅうを食べていると

うっかり庭に落としてしまいました。

そこへ鳥が飛んできて

おまんじゅうを食べてしました。

そして

こんな歌を歌いました。

「皮が悲しんでいたなら

あんこになって入りましょ。

そうして悲しみをともにしましょ。

あんこが苦しんでいたら

皮となって包みましょ。

そうして互いを慈しみましょ」。

お坊さんは思わず鳥に手を合わせました。

そしてそれからも

村人のために力を尽くしましたとさ。

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花桃

copyright Maoko Nakamura


耳と水餃子

2011-01-28 11:24:10 | 物語

昔々

冬になって

食べ物がなくなるなと

神さまは人の耳を取って食べていました。

たいそう困った人々は

小麦粉をこねて

耳の形にしてお供えしました。

それが気に入った神さまは

人の耳を取らなくなりました。

だから、かの国の人々は

今も冬になると

せっせと餃子を作って

熱々の水餃子にして食べるのです。

耳を取られてはたいへんと。

(中国の方から聞いた話)

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ブーゲンビリア(とっとり花回廊)

copyright Maoko Nakamura