母が南部煎餅を買ってきた。
「珍しいのがあったから、ミミ付きってかいてあるし・・」
南部煎餅は焼くときにはみでた生地が薄くのばしたパリパリのお煎餅になり、それを「ミミ」と呼ぶ。
そしてそのパリパリ感がなんともいえず美味しい。
昔の南部煎餅はごまとピーナツの2種類だが、今、主流のような顔をしている柔らかい煎餅と違い、心地よい歯ごたえがあった。
そしてパリパリと薄いミミをかじる幸せ。
良く覚えていないが、小さい頃田舎へ遊びに行った時祖父が、ごま煎餅に水あめをサンドイッチのように挟んでくれた。
ごま煎餅の薄い塩味と水あめは妙にマッチして、美味しかったのを覚えている。
またある日、田舎へ遊びに行った時のこと。
1軒ほどの店だけど、南部煎餅を1枚1枚手作りしている店があった。
そとから作るのをみていると飽きない。
夏休み、従姉妹とプールからの帰り道、反対側の道で伯母(従姉妹の母)が大声で呼ぶ。
「○○ちゃーん(従姉妹の名前)!あんたの好きな煎餅のミミ買ってきたよ~!!」
・・・・と袋を見せる。
まるでパン屋で食パンのミミを買うように、当時は煎餅のミミも売っていたのだろう。
いくらすきだからって・・・。
あれは煎餅についていて、パリパリたべるから美味しいのだ。
従姉妹と私は、知らない人のふりをして、夏の暑い日の中を走って帰った。
南部煎餅をみると懐かしい風景が浮かんでくる。