遠山茂樹著『森と庭園の英国史』(平成14 文春新書)の中でもうひとつ興味を引かれたのは、ヴィクトリア朝の裕福な家庭に育った娘たちは羊歯類をはじめ多くの植物名を暗記していたことでした。
えー、良家の子女は植物女子か、おもしろい、さすがイングリッシュガーデンの国だ! ところが、理由を知って、がっかりでした。
「植物は、性とは無関係で、調べたところで知的になりすぎるという危険もなかった。少なくとも当時は、そう考えられていた。植物採集をしたり、草花のスケッチをすることは、フランス語や刺繍を習うのと同様、健全な淑女のたしなみだった。」
日本人からすると、植物採集が淑女のたしなみっていうのはなんとなくしっくりこないけれど、こうした娘たちが成人し、ジョージ3世のシャーロット王妃をとりまく植物愛好家になり、優美さと華やかな文化を競って王室のキュー植物園をさらなる頂点へと押し上げたたわけなのでした。
ビーターラビットのビアトリクス・ポターは植物や動物に興味があって、知識もあり、研究熱心でもあったけれど、華麗さや優美さには興味がなかったから、研究を趣味でやっているうちはよかったけれど、研究者の領域に踏み込むや専門家たちから冷淡に扱われたのでした。
淑女たちに植物愛好家が多かったことは、考えてみると、やはり、イングリッシュガーデンにつながっていますね。
それに、考えてみると、若い娘が刺繍やフランス語、いわゆるお稽古ごとで植物名の暗記や植物採集を好むのが一般的というのはイギリス以外の国ではあまりないだろうし、やっぱり、良家の子女が植物女子というのはおもしろい?