まいぱん日記

身近なあれこれ、植物のことなど

ストレリチアは「王妃、君主」の植物?

2019年09月07日 | 植物

                   

最近読んでいろいろと啓発されている川島昭夫著『植物と市民の文化』(山川出版社)の中にも「ゴクラクチョウカ」が出てきます。時代は18世紀後半期、キュー植物園が世界最高の植物園を目指し未知なる世界へと次々送り出す、そのプラントハンターの最初のひとりがここに出て来るマッソンです。

「マッソンが南アフリカで発見したゴクラクチョウカは、極楽鳥そっくりのその奇抜な花の形でよく知られているが、ジョージ三世の王妃シャーロットの旧姓にちなんで、ストレリッチアと命名された。王妃もまた植物の愛好家としてきこえ、とりわけ女性のあいだにおける植物学の流行を代表する存在であったからである。キュー(植物園)の名声は、はなやかさや優美さを競う文化に君臨し、そうした価値の序列の頂点に位置したことになる。」

ジョージ3世の妻シャーロットは北ドイツの出身で、旧姓はメクレンバーグ=ストレリッツ。ストレリチアの属名(Strelitzia)はここから命名、その属には5種類あるのですが、そのうち最も一般的で私たちが知っているのが、学名Strelitzia reginaeです。レギーナは「女王の」という意味です。まさにジョージ3世の王妃シャーロットに捧げられた学名というわけですね。

ジョージ3世とシャーロットはともに植物愛好家でした。ジョージ3世でなく、王妃に捧げられた理由は女性の間で植物学が流行っていて、そうした婦人たちの代表としてシャーロット王妃が選ばれたというわけです。キュー植物園がそうした華やかな文化を競い合う頂点にある存在であったことに私は大いにおどろきました。

ストレリチア属には、別に学名Strelitzia nicolai(ルリゴクラクチョウカ)という野生では10メートルにもなる種類があります。このストレリチア・ニコライについてはこんな記述を見つけました。「ニコライ1世の治世中、南アフリカの代表団がサンクトペテルブルクに<野生のバナナ ナタール>と呼ばれる未知の植物を持ってきました。帝立植物園のキュレーターE.L.レーゲルがそれを温室に植えると、ヤシの木のような逞しい高木に育ち、一種のStrelitzia であることが判明しました。そこで皇帝に敬意を表してStrelitzia nicolaiと命名されました。」

イギリスでは女性の間でも植物学が流行し華やかさを競う文化の代表として王妃シャーロットに捧げられた”Strelitzia reginae(女王のストレリチア)”、一方、ロシアでは専制君主として名を馳せたニコライ1世に捧げられた”Strelitzia nicolai” ほぼ同時代の同じストレリチアでも名付けられた環境はずい分ちがうものです。

でも、ロシアのウィキペディアには、ニコライはニコライでも、ニコライ1世ではなくて、「 サンクトペテルブルクの植物園の帝国管理人である大公ニコライ・ニコラエヴィチ長老 (1831-1891)に因んで命名された」とあります。

たとえ、こちら長老のニコライが本当だとして、君主が由来と思われるところが、ストレリチアが豪華で堂々とした植物の中の植物である由縁なのかもしれませんね。

やっぱり、私とは縁遠い植物かもしれないなー。

コメント
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