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fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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Information

『そこに言葉も浮かんでいた』(新日本出版社)『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~5巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。    

『ひと箱本屋とひみつの友だち』赤羽じゅんこ(さ・え・ら書房)

2023年07月03日 | 本の紹介
          

 赤羽じゅんこさん、一週間前に新刊をご紹介したばかりなのに、さらにもう一冊。
 ひと箱本屋さん、このごろあちこちで見かけますね。
 本好きの女の子が、ひと箱本屋さんで、同じ小学生の子が書いた本に出会います。
 その本屋の主と友達になりたい! と手紙を書いて・・。
 さあ、ひみつの友だちとのやりとりが始まります。
 この後は書かないほうがいい。先入観なしで、ぜひ読んでいただきたいと思います。
 長い作家生活の中、こうしてどんどん本を出版されてらっしゃる様子、大変励まされますし、私もがんばろうと思いました。
 また、さ・え・ら書房さんは、『なみきビブリオバトル』シリーズで、大変お世話になった出版社さん。SDGSを題材にした社会的なテーマの本を続々出していらっしゃいますが、ビブリオバトルや図書館が舞台の本など、本をテーマの本も多いところです。

ぜひ、お読みください。

『AIマスクはいかがですか?』赤羽じゅんこ作・たんじあきこ絵(フレーベル館)

2023年06月25日 | 本の紹介
         

 皆さんは、まだマスクをしていますか?
 私は、散歩のときはしなくなりましたが、買い物など屋内で人と接する機会があるときは、しています。
 子ども達はどうなのでしょう。

 この本は、まだ感染症で、皆が学校でマスクをしているという設定です。
 子ども達は、その状況をしっかり経験しています。なので、この物語、リアルに感じてくれると思います。
 AIマスクには、いろんな機能があります。
 引っ込み思案なあなたに・・そうこのマスクをしていると、はきはきと話すことができるのです。私、これが一番欲しいかも。
 もうすぐお楽しみ会、どうしよう? ・・このマスクもいいなあ。人前で、落語ができたら、最高。
 気になるあの子となかよくなりたい・・・ふふ。おばさんなので、これはパス笑。
 だれかにはげまされたいから・・・これもいいです。励まされるって、うれしいこと。私も、こんなふうに、人を励ましたいと思いました。

 細部の設定が、しっかりしていて、安心して楽しめます。これって、読むときは気にならないのですが、書き手側からすると、とても大事なことなんです。
 このところ、AIの話題、テレビでもすごく多いです。
 亡くなった方の声も再現できたり・・。
 いろいろ問題もささやかれています。
 本の世界でも、これからAIネタ、増えそう。
 わたしも、時代の流れをしっかり把握しなくては。
 赤羽さん、この後も、出版が続くようです。大ベテランでかつこうして、出版し続けていて、すごいの一言です。

『おきにいりのしろいドレスでレストランにいきました』渡辺朋作・高畠那生(童心社)

2023年06月05日 | 本の紹介
 絵本テキスト大賞受賞作品『おきにいりのしろいドレスでレストランにいったら』がとうとう出版されました!

          
 冒頭はまさに、白いドレスを着た女の子がレストランで、オムライスを食べて・・。
 ケチャップがドレスについてしまいます。

 その後、これがどう展開していくのか、読みたくて読みたくてたまりませんでした。
 私も一応書き手なので、自分だったら・・と考えてみたり。
 でも、実際のこの本は、もう想像の斜め上をどどどどどーんと行ってくれました。
 おもしろっ。
 一度ばーっと勢いで読んで、もう一度じっくり。すると、あちこち、もう楽しいのなんのって。

 これ、絵のない状態でどのように書いたのか、見たい。

 ナンセンス絵本、いいなあ。大人気になりそうですし、朋さんの今後のご活躍も楽しみでなりません。
 絵本テキスト大賞、今月末が締め切りです。
 

「習志野」・「桃千鳥」合同句集『ならしのちどり』

2023年05月11日 | 本の紹介
 所属している「童子」には、各地に句会があります。その二つの句会が出した合同句集です。

        

 枇杷咲いて本返すべき人の亡き    たなか迪子
 犬小屋の奥に犬の目菜種梅雨     高橋羊一
 沈むことなき一生やあめんぼう    石井野里子
 風鈴や足湯して待つ最終便      小川こう
 かたことと八個茹でるや春玉子    奥出ひろ子
 ぼうたんの散りはじめればとめどなく 倉持万千
 盆の家「命の母」の残りある     黒木千草
 たそがれをもてあましては浮いてこい 桑原いろ葉
 建国の日や皺しわの旗出して     毛塚紫蘭
 おでん鍋下げて砂町銀座まで     幸崎桂花
 夏服や腕に手提げを提げし跡     坂谷小萩
 書き損じ賀状三等当たりけり     清水うさぎ
 刃こぼれの鎌に張り付くこぼれ萩   中島鳥巣
 江戸川のけふはにごりて梅雨鯰    根岸かなた
 蟬しぐれぴたりと止むや時止まる   ひろおかいつか
 花の兄そろそろといふ便りきし    笛木かりん
 どう寝てもをさまり悪しハンモック  ふく嶋桐里
 暗がりへぬかる轍や櫨紅葉      二川はなの
 狐火の話に子らの真顔かな      村井あきつ
 地吹雪や盾のごとくに傘立てて    脇阪うたの
 去年今年しまひ湯抜けば渦生まれ   中村時人

 しばらくは夜干のものと吹かれけり  辻桃子
 巻尺のぴしやと戻るや休暇明     安部元気


 皆さま、一日一日をていねいに過ごしてらっしゃるのだなと感じました。


杜の都は不思議のまち『マチモリ』佐々木ひとみ作・本郷けい子絵(おさんぽ屋出版)

2023年04月27日 | 本の紹介
 

仙台在中作家佐々木ひとみさんの新刊が続いています。
 仙台が舞台。
 町森樹は11年前に父を亡くし、母と二人暮らし。
 ピンクに髪を染めたちゃらいおじさんと、甘味処彦いちにいました。
 そのとき、おじさんのスマホが鳴り、それは始まります。
 
 なんと樹は、普通の人には見えないものが「見える」少年でした。
 樹の父もそうだったし、おじさんは、樹のようには見えないけれどぼんやりと感じることができます。
 
 おじさんのスマホに電話をかけてきたのは、千体堂の堂森さんからでした。
 仙台の町を切り開いた伊達政宗公が自ら彫った八体の仏像にまつわる事件の始まりです。
 へえ、仙台という町名の由来って、そうだったんだー。なにしろ、佐々木さんは、仙台に関する知識がばっちりですから。
 政宗公の伝記や仙台を舞台の物語を書いてらっしゃる方。仙台への愛が半端ではありません。
 最近では、『ぼくんちの震災日記』もそうです。
 その愛がぎっちりと詰まった一冊です。本郷けい子さんのイラストも、温かみがあって、ぴったり! 

 そして、見える少年。・・・私にとっては、格別です!(わかる方、わかりますよねっ) 
 樹の活躍、もっともっと見たいです。ちゃらいおじさんも、いい味を出しています。 
 そうそう。仙台おさんぽマップもついていて、芭蕉の辻とか、なるほど、今度仙台に行ったときは、芭蕉の辻と、彦いち! 要チェックです。(他もですが、まずは)

 仙台の方はもちろんですが、全国には仙台が好きな方、伊達政宗ファンが大勢います。そういう方達にも読んでいただきたい。そして、ぜひぜひ、続編も! 

「おばあちゃんのちりめん袋」ふくだのりこ(『カレンダー』より)

2023年04月22日 | 本の紹介
 

銀の鈴社から、毎年出ているアンソロジー。今年のテーマは「カレンダー」。
 友人のふくだのりこさんの作品が今年も掲載されています。タイトルは、「おばあちゃんのちりめん袋」です。

 美智子は、祖父に一緒に草刈りにと誘われますが、お腹が痛くて断ります。でもその日、祖父は雷に打たれ、帰らぬ人となってしまいました。
 そのときから、祖母の様子がおかしくなります。
 昼夜となく、勝手に外に出るようになり、「さいふがない」と、だれかれとなくにらみます。
 そんな祖母は、いつもちりめん袋を持っていて、かたときも離さないのです。何が入っているのかわかりません。
 変わってしまった祖母が大事にしているちりめん袋に入っていたものが、何なのかを知るときがきます。
ふくださんは、今年、北海道の草原賞で佳作もご受賞されました。頑張ってらっしゃいます! 
 
 とにかく優しい物語です。

 ずっしり重い一冊には、17編もの短編が収録されています。読み聞かせにもいいと思います。

『沙羅の風』松弥龍作(国土社)

2023年04月02日 | 本の紹介
       

「季節風」でご一緒している松弥龍さんの新刊です。
 松さんは、森三郎童話賞をご受賞した『ぼくとお兄ちゃんのビックリ大作戦』という本があり、『沙羅の風』は二作目の出版になります。
「季節風」に掲載されたのを読んだのは、何年前でしょう。何年もかけて大切に育み、このたびの出版になった作品。おめでとうございます!! 

 沙羅は、母と二人暮らし。母のことは「おかあさん」ではなく、名前、れいこさんと読んでいます。それがなぜなのかが、最後で明らかになります。
 一緒に鳥取へ旅行したことで、沙羅が行き着いた母の秘密。
 この作品は、どこまでご紹介したらいいか迷います。ぜひ、予備知識なく読んでいただきたい作品です。

 

『金色の羽で飛べ』高田由紀子(小学館)

2023年03月26日 | 本の紹介
            

 小学生のバレーボール物語です。

 佐渡島ご出身で、佐渡を舞台の物語をこれまでも何冊も出してらっしゃる高田さん。今度は、バレーボールに熱中する少年達の物語です。
 バレーボールというのは、今まであまり児童文学で書かれていませんでした。
 それも、都会の話ではなく、日本海に浮かぶ島が舞台。県大会に出るために、船に乗って海を渡らなくてはなりません。
 その設定がまず魅力的。
 でも、大事なのは、少年達の心の動き、そしてバレーボールの練習、試合の流れです。

 だれもが憧れるのは、アタッカー。でも  新潟市から転校してきた大和が、そのアタッカーの座につき、主人公空良はセッターになります。
 そのセッターという位置の難しさ、やりがい、実際のテクニック、練習方法など、ばっちり書かれていて、感心しました。そうとう取材されたか、ご自身でもやっていなければ書けないなあと。
 大和が切れやすい性格というのも、とても興味深かったです。今、大人でもそういう人がいますよね。
 彼もまた、バレーチームの仲間の中で、成長していきます。
 
 完全燃焼できなかった火は、いがいと強い。

 この一行、力強いです。後半は、予想と違う展開になり、そこもよかったです。ぜひ、お読みください。

 今バレーボールをやっている子は「おれたちの物語が出た」と喜ぶでしょうし、やっていない子は、「やってみたい」と思うでしょう。安定した文章で物語を紡ぐ高田さん、今後もご活躍に目が離せません。

『ぼくらの種』次良丸忍作・ao絵(国土社)

2023年03月13日 | 本の紹介
            

 昨日に続き、パステルショートストーリー新作のご紹介です。
 次良丸忍さんの『ぼくらの種』の表紙が幻想的なので、ファンタジーなのかと思いきや、リアリズムの短編集でした。

 プロローグをご紹介させてください。

 だれもが心に種をいくつも持っている。
 かたい種、やわらかい種、
 つるりとした種、とげとげした種
 ふくらんだ種、しぼんだ種
 やがてからを破って、みずみずしい目があらわれる
 でも、すべての種が芽吹くわけではない

 ぞくっとしました。
 そして、「たかが五百円の……」、はなんと、クラスメートの成績に500円をかけるという、私には絶対書けない物語でした。すごいです。
 他のパステルショートストーリーに比べると、割と長めな物語の集まりです。
 どの作品も、しっかりと主人公の心情を描いていて、短編のお手本として読むのもありなのでは? と感じました。デビューを目指している方、このごろよく耳にするのは、「プロットの書き方を学びたい」ということ。でも私は一番大事なのは、登場人物の心の動き、他者との関わりを描くことなのではと思うのですよ(自戒も含めて)。まあ、講座などでノウハウを伝えられるようなことでもないので,
ぜひ、こういう作品を読んでいただきたい。不思議なことなど起こらない、リアリズム・・物語の基本です。

さて、シリーズ揃えるとこんな感じになります。

        

『友だちの木』もどうぞよろしくお願いいたします。

 

『ちょっとねがっただけ』赤羽じゅんこ作・ふすい絵(国土社)

2023年03月12日 | 本の紹介
            

 パステルショートストーリーの新作が出ました。
 赤羽じゅんこさんは、pink。
 
 いろいろな願い、そして願いを叶えるためのアイテムが出ます。
 1 まぼろしガチャ
 2 お家さま
 3 ねがい箱
 4 こわい絵
 5 アニマル目薬
 6 だれも読み終えられない本  

 ねがい箱に出てくるからくり箱のアイディア、よかった!
 からくり箱って、魅力的。それに願い事が絡むのですから、おもしろい。

 一番好きだったのは、2 のお家さまです。これも、古い家だからこそ、ありそうって思います。
 ~だったらいいのに。と願うことって、いつの時代でも、誰にでもあること。永遠のテーマですよね。その願いをどう昇華させるのか、悪い方にころがることもあったりして。人の心理と「物」がうまく融合している短編集だと思います。

 さて、パステルショートストーリー、今回2冊発売になり、私のyellow green 「友だちの木」を含む6冊が完結しました。
 評判もよく、第2期も制作されるという情報も入っています。
 6冊セットで、図書館などに並ぶと壮観です。

 ぜひ、お読みください。

『辻桃子の津軽歳時記』辻桃子・安部元気(文學の森社)

2023年03月02日 | 本の紹介
        

 「童子」主宰辻桃子は、都会の生まれ育ちの方ですが、あるとき突然津軽に居を移しました。その後は東京と津軽を行き来して、句作、俳句指導をしているわけですが、濃厚な津軽の自然や伝統行事、言葉に接して、『津軽歳時記』を作ろうと決めました。
 10年を経て、できたのがこの歳時記です。

 津軽にもたくさんの著名の俳人がいらっしゃるし、たくさんの俳句が生まれている。でもその句を全部探し出して、著作権の許諾をとってというのは並大抵のことではなく、例句は「童子」で作られたものに限ったということです。津軽句会、秋田句会の方の句、もちろん辻桃子、安部元気の句がたくさん。そして、なんと私の句も、思いがけずたくさん載っていて感激しました。
 そういえば、何年も前に、岩手の家にいたとき、先生からお電話があり、○○の季語の例句でいいのがないんだけど、何かない? と言われ、津軽の先生のお宅にファックスをした覚えがあります。そのとき、思いついた句もお送りしたところ、喜んでいただけたのでした。ああ、これはあのときの句というのも、ありました。

 津軽の書店では、きっと並んでいると思います。私は書店に注文しようと思ったら3週間くらいかかるといわれたため、○マゾンで取り寄せました。こちらのサイト序文の一部も載っていますので、ぜひお読みください。赤をクリックすると、サイトに飛びます。

 掲載されている私の句は、春では、

 里人のふえて狐の牡丹かな  あぶみ  など。
 
 この歳時記、特筆すべきは、他に載っていない津軽ならではの季語もあることです。

 林檎止め市 というのは、林檎の産地で行われるその季最後の林檎の市だそうです。

 止め市や林檎木箱の縁歩み   辻桃子

乳穂ヶ瀧祭祀の餅に雪降つて   高橋涼

 乳穂瀧氷祭 が春に載っているのが、津軽ならでは。2月の一番寒いときでしょうからね。この瀧、一度行ったことがあるんですが、すごかった。一本の大きな氷の柱になっていて、それが青いんですよ。

『物語のゆりかご』第3号(岩手児童文学の会)

2023年02月21日 | 本の紹介
       

 みちのく童話賞の活動でご一緒している、ちばるりこさんと田沢五月さんにいただきました。
 ちばさんが、会長です。
 同人誌としては、第3号ですが、会の歴史は古いです。
 なにしろ今号には、5人の会員の追悼の文があります。その中のお一人は90才。長く、岩手の児童文学を支えてくださったのだと思います。
 さすが、賢治の出身地。

 ちばさんは、特別支援学級の先生でらした方。「たんぽぽをふまない」は、その経験から生まれた物語なのではと思います。登場人物への眼差しがあたたかくて、いつか本にしていただきたい。
 田沢さんの「かごやんの夢」は、私好みのつくも神的物語。遠野あたりの古道具やさんかな? というお店が舞台です。こっちも、ぜひぜひ本に! 
 他の皆さんも、その人その人の持ち味の作品を書いてらっしゃいます。
 
 この1冊を作るのも、大変だと思います。
 私は「季節風」という大所帯に入ってますが、こういう少人数の同人誌をやってる皆さん、すごいです。
 継続は力なり、ですね。

『ぼくんちの震災日記』佐々木ひとみ作・本郷けいこ絵(新日本出版社)

2023年02月20日 | 本の紹介


 仙台在住佐々木ひとみさんの新刊です。
 河北新報夕刊に「がんづきジャンケン」として連載していたものの書籍化。
 東日本大震災から一週間の4人家族の物語です。沿岸部の被害状況は、もちろん誰もが承知のことですが、あの日、そしてあの日、仙台市内にいて、インフラがストップした中、避難所に行くのではなく自宅で過ごしていた方達もいかに大変だったか・・。でも沿岸部の被害に比べたら・・と誰もがこらえていたのです。その状況を、杜野家では「がんばろう週間」として過ごしました。何を頑張るのか、「生きること」をです。
 
 この一家が体験したこと、給水に並んだり、コンビニに並んだりということ全て、佐々木さんの体験とのこと。そうなんだろうなと思いながら読みました。

 そして、あの日、あの日から、私も岩手県の内陸部でひとりで過ごしていた日々が蘇りました。
 私の場合、電気水道は翌日夕方には復旧しました。でもいつ復旧するかわからない、ずっとかもしれないと思いながら過ごしたあ時間。
 ああ、私も書くべきことがまだあるのでは? 
 佐々木さん、素晴らしいお仕事をされたと思います。

 ある方が、戦争を体験した方達は、ひとりひとりにドラマがあるとおっしゃってました。
 震災もまた、あの震災を体験した人、ひとりひとりにドラマがあるのです。
 語りついでいかなくてはなりません。

『海よ光れ! 3・11被災者を励ました学校新聞』田沢五月(国土社)

2023年02月14日 | 本の紹介
           

 もうすぐまた3、11が来ます。
 トルコの地震の映像を見るたびに、東日本大震災を思いだしています。

 この本は、岩手県在住の田沢五月さんが、ふるさとに近い大沢小学校の皆さんの活動を記録したものです。
 冒頭、海で育つ子ども達の頼もしい姿が描写されます。その後の地震、そして津波。
 大沢小学校の児童は全員無事でした。学校は避難所となります。
 そんな中、、児童の皆さんは、肩たたき隊を結成し、お年寄りの肩を叩き、新聞を作って皆さんに配ります。元々、全国の学校新聞コンクールで長年表彰されていた新聞作りだったのです。
 この新聞が、ページページに掲載されていますが、文字がきれいで読みやすい。

 大沢小学校はその後惜しくも児童の減少により閉校になりますが、、今成長した皆さんは、それぞれ仕事を持ち、立派に生きてらっしゃる。その様子も伝わってきます。
 震災直後には、インタビューを拒否したお子さんもいたそうです。でも今は、伝えたいという気持ちで応えてくれたとのこと。

 これを書くためには、何度沿岸に通ったことでしょう。一人一人にしっかり寄り添わなくては書けない仕事です。
 
 青い海と青い空の表紙、とてもいいなと思いました。
 ぜひ、読んでください。

『だれもみえない教室で』工藤純子(講談社)

2023年02月06日 | 本の紹介
            

 このところ、学校を舞台に、誠実な作品を立て続けに出されている工藤純子さんの新刊です。
 冒頭、放課後で起きた事件。仲が良かったはずの男子グループの一人颯人が、その場にいなかった清也のランドセルに金魚のエサを入れます。
「それ、持ってこいよ」「それ、開けてくれる」「早く閉じろ」颯人に言われ、そこにいた連たちは、その「いじめ」をしたグループとなってしまう。このやり方、直接相手を傷つけることなく、素早くでき、陰湿です。
 
 清也の家で、母が先にランドセルを開け、このいじめはすぐに発覚。学校に知らされ、担任は、彼らを呼んで問いただしますが、軽く仲直りをさせ、事を終わらせました。でも……。
 颯人、連、清也、それぞれの視点で物語は語られます。担任の原島先生もまた、かつていじめをしていた側だったという過去があり、その事実を否応なくつきつけられます。
 クラスメートの女子は、何か起きそうだったのを察知して逃げ、傍観者になった自分を責めます。
 それぞれが、悩み苦しみ、立ち向かう。
 そのそれぞれを、工藤さんはしっかり支え、書いています。
 
 見えないところで行われているかもしれないいじめ。たいしたことではないと片付けられたり、形式的に謝って終わりにされたり。
 今もどこかで、ある出来事なのではないでしょうか。
 
 楽しいだけの学校生活なんてない。生きていれば、いろんなことがある。人間関係は難しい。難しいからこそ、逃げずに・・。ああ、でも逃げることも時には大事。
 いろんなことを考えさせられます。
 この本を読んだ大人も子どもも、みんながそうだと思います。

 表紙は、ミニチュア作家田中達也さんの造形。ガラスの水槽の中の教室で、一人たたずむ少年がいます。
 工藤さんの渾身作、ぜひお読みください。
 私ももう一度読み返します。