報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「魔王軍の夜」

2023-05-28 21:06:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日21時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋浜町 某クリニック『特別処置室』]

 リサ「はい、上がったよ」
 早苗「了解です」

 特別処置室内にはバスルームがあり、リサと絵恋が2人で入った。

 リサ「お風呂の栓は抜いて、流しておいた。サナエの好きな温度は分からないから、それは適当に入れて」
 早苗「分かりました」

 早苗はバスルームに行くと、再び栓をして、それからお湯を入れ始めた。
 その間、リサと絵恋は冷蔵庫に入れておいたペットボトルのジュースを飲む。

 リサ「お風呂上がりのジュースは美味しい」
 絵恋「そうね。……何か、とても入院してるような感じじゃないわねぇ……」

 絵恋は周りを見渡して言った。
 確かに室内は病院の処置室そのものである。
 ベッドだって3人横並びにベッドが置かれているが、それもキャスターの付いた入院患者用のものだった。
 3人一緒ということで、特に1人ずつカーテンで仕切られているようなことはない。

 絵恋「それにしても、この部屋だけどうして窓が無いのかしら……」
 リサ「さあ……?(私が変化して壊したからだろうな……)」

 室内にはテレビもあって、自由に観て良いということになっている。
 また、入院病棟のように、特に消灯時間が決まっているというわけでもなかった。
 起床時間は決められているが。
 そして、天井。
 明らかに、この部屋を監視するカメラが付いている。
 カーテンを付けないのは、監視しやすくする為だろう。
 但し、着替えなどは見えないように、可動式の衝立がある。
 バスルームの入り口前とかにある。
 リサ達は検査着のまま寝ることになり、エンジ色のそれを着たままである。

 リサ「何だかタイクツ……」
 早苗「トランプでもやりますか?」
 リサ「持って来てんの?」
 早苗「ええ。何にします?ポーカー?それとも、ブラックジャック?」
 リサ「どちらも、バイオハザード絡みか……。『今日、警備員のスコットとエリアス、研究員のスティーブと一緒にポーカーをやった』とか、『ルーカス・ベイカーの残虐ブラックジャック~!』とか」
 早苗「さすがは魔王様。何でも知ってるんですね」
 リサ「アンタも知ってるんじゃないの?」
 早苗「まあ、有名な話ですから」
 絵恋「私は知らないわ?」
 早苗「……さて、そろそろお湯が溜まった頃かなぁ……」
 リサ「熱いお湯が好きなの?」
 早苗「一緒に入ります?」
 リサ「んん?」
 絵恋「ちょ、ちょっとォ!」
 リサ「いや、さっきエレンと一緒に入ったからいいって」
 早苗「そうですか。じゃあ、私1人で……」
 リサ「ゆっくり入ってきなよ。先にトランプやってるから」
 絵恋「そうよ」
 早苗「それじや、お言葉に甘えて……」
 リサ「サナエ」
 早苗「何ですか?」
 リサ「ダクトは塞がれてる。脱出はできないよ?」
 早苗「あらあらあら。それは残念ですねぇ……」
 絵恋「な、何の話ですか?」
 早苗「なーんでも……」
 リサ「……無い」

 早苗はタオルや洗面道具、換えの下着などを持ってバスルームに向かった。
 尚、これとは別に洗面所やトイレもある。
 トイレはリサを安心させる洋式である。

 リサ「早速やろう」
 絵恋「はーい」
 リサ「やっぱり女は黙って……」
 絵恋「ソリティア?」
 リサ「ソリティア……って、何でやねん!?1人用だろ!」
 絵恋「あっ……」
 リサ「女は黙ってバカラだろ?」
 絵恋「ええーっ!?ギャンカス魔王様……」
 リサ「何か言った?」
 絵恋「い、いえ、何でも……」
 リサ「昔、お兄ちゃんがエレンんとこのメイドさん達とそれやってたけどね?」
 絵恋「なっ……!あのメイド達……!」
 リサ「お兄ちゃんの大勝ちだったみたいだけど……」
 絵恋「り、リサさん!ギャンブルとは関係の無いトランプにしましょう!ババ抜きとか……」
 リサ「うーん……分かった」

 それからしばらくして、バスルームから斉藤早苗が出て来る。

 リサ「ダクト、塞がれてたでしょ?」
 早苗「まあ、そうですね」
 絵恋「だから一体、何の話?」
 リサ「それより早苗、トランプやろ!」
 早苗「じゃあポーカーにしましょう」
 絵恋「だから、何で2人してカジノのトランプをやりたがるの?」

 それから1時間ほど経過……。

 絵恋「外は雨が降ってきたみたいよ」
 リサ「窓が無いのに、よく分かるな?」
 絵恋「ウェザーニュースのお知らせよ」
 早苗「沖縄は冬でも急に天候が変わって雨が降ったりするからね」
 リサ「ふーん……。おっ、よし!フォーカードだ!」
 絵恋「ええっ!?」
 リサ「エレンは?」
 絵恋「私……ワンペアでした……」
 早苗「2人とも、甘いですね。ロイヤルストレートフラッシュ!」
 リサ「おい、フザけるな!さっきもストレートフラッシュだったじゃん?」
 早苗「ちょっと魔王様。2連勝したくらいで、イカサマ呼ばわりはやめてもらえます?」
 リサ「だって、サナエの所にばっかりジョーカー行かない?」

 普通、ポーカーにはジョーカーは使わない。
 しかし、東京中央学園上野高校では、伝統的にポーカーにはジョーカーを使うローカルルールがある。
 そのジョーカーは何のカードの役割を果たしても良いことになっており、また、ジョーカーが2枚あるトランプにおいては、『悪魔の手札』として、ロイヤルストレートフラッシュよりも上、つまり最強というローカルルールまであった。
 但し、『悪魔の手札』を何度も行っている者は悪魔に呪われるという、“東京中央学園上野高校七不思議”の1つとして語られることもあった。
 その為、一時期は生徒会などで校内におけるポーカーの自粛を呼び掛けられるほどであったという。

 早苗「来ちゃうんだから、しょうがないですよ。まだ、2枚来ないだけマシってなもんです」
 リサ「うーん……」
 絵恋「だからリサさん、『ジョーカーの2枚入っているトランプでポーカーをやる場合、必ずジョーカーを全部抜くか、1枚のみにしなければならない』っていう決まりもありましたよね?」
 リサ「あったけど、あんなもの絵に描いた餅でしょ。だって本当に悪魔が宿っていたら、抜いていたところで、いつの間にかトランプの中に戻っていて、狙いを付けた人間の所に行くっていう話もあったよ?」
 早苗「つくづく、東京中央学園って怖い所だったんですね」
 リサ「サナエ。……オマエ……いや、あなたと言った方がいいか?“トイレの花子さん”でしょ?白い仮面は持ってる?」
 絵恋「ええっ!?」
 早苗「何のことですか?」
 リサ「忘れたの?あなたが幽霊だった頃、わたしが旧校舎に行ってよく話をしたじゃない。わたしの悩みとかも聞いてくれて……」
 早苗「さあ……覚えてませんね。幽霊も成仏したり、転生したりすると、幽霊だった頃の記憶なんて無くなると言いますし、気のせいってことにしてください」
 リサ「むー……」
 絵恋「もうやめましょ。私どうせ弱いから、ツーペアとかスリーカード以上は出せそうにないし、そろそろ寝ましょうよ」
 リサ「ん。エレンがそう言うならそうしよう」
 早苗「明日、6時起床からの検温とかですよね。長旅の疲れもありますし、そろそろ寝ましょう」
 絵恋「歯磨きしてくる」
 リサ「わたしはトイレ」

 リサは自分のベッドから下りて、スリッパを履いた。
 その時、大きく足を開いた為、検査着の下に穿いている黒いショーツが丸見えになる。

 リサ「まさかとは思うけど、寝てる間に襲うなよ?」
 早苗「魔王様こそ」
 リサ「わたしはそんなことしない」

 リサは吐き捨てるように言うと、室内にあるトイレに向かった。
 トイレは所謂、多目的トイレになっている。
 リサはそこに入ると鍵を閉め、便座に腰かけた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「探偵... | トップ | “愛原リサの日常” 「魔王軍... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事