報恩坊の怪しい偽作家!

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“魔女エレーナの日常” 「障魔は来ないで欲しいし、仏敵(てき)も来ないで欲しい」

2019-07-07 10:18:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月21日02:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「飛行機は離陸したか……」
 マモン:「また、例の寺周辺に“魔の者”の眷属が現れたらしい。もちろん、こんな時間に魔道士なんかいないだろうけどね」

 エレーナは夜勤でホテルのフロントにいた。
 こんな真夜中に出入りがあるわけでもないし、ロビーに誰かいるわけでもない。
 話し相手は契約悪魔の“物欲の悪魔”マモンである。
 キリスト教における七つの大罪の1つを司る悪魔だ。
 金銭欲の強いエレーナにはピッタリの契約悪魔というわけである。

 エレーナ:「凄いリドル(謎掛け)だ。大魔王が知らなくて、あんた達も知らないと……」
 マモン:「私らは別次元の悪魔じゃないかと思ってる。……おっ、ルーシーが泣いてるぞ」
 エレーナ:「やれやれ。そんなに日本が好きになったかねぇ……」
 マモン:「それはエレーナも変わらないのでは?」
 エレーナ:「ふっ……」
 マモン:「とにかく夜中の便を狙ったのは、裏の裏をかいたということかな。ややもすると、夜中の便が狙われることもあるのだが」
 エレーナ:「あれか?何年か前、東南アジアのどこかから中国へ向かう飛行機が真夜中に行方不明になったヤツ」
 マモン:「そうだ。あの中には東アジア魔道団の幹部が搭乗していて、それが狙われたと言われている。結局はインド洋辺りに墜落したと言われているが……」
 エレーナ:「“魔の者”が狙うのは魔道士全般で、何もダンテ一門だけってわけではないか……」
 マモン:「ダンテ門流が一番デカいから、それだけ狙われやすくなる。何しろ的が大きいから」
 エレーナ:「だろうな。……ルーシー達は本当に大丈夫なんだろうな?」
 マモン:「先ほども言ったように、眷属が大石寺に現れた。今の“魔の者”は複数の眷属を同時多発的に派遣する力は残っていないだろうから、恐らく大丈夫だ。ベイカー師もそれを見越して、あえて深夜便にしたのだろう」
 エレーナ:「確か東アジア魔道団の中には、ボンさんのフりしているのもいるって話だな?」
 マモン:「元々は修行僧とか破戒僧とか、そういうのから入門したパターンが多いらしいよ、向こうは」
 エレーナ:「寺の周辺に現れた眷属……ボンさんが狙われた飛行機……。“魔の者”って何気に、仏教に近い所にいるんじゃないのか?」

 ズシン……!

 エレーナ:「おっ!?」

 下から突き上げるような揺れが発生したかと思うと、ユラユラと縦揺れと横揺れが発生した。

 エレーナ:「地震か。このタイミングで」
 マモン:「ククク、分かりやす過ぎる警告だ。エレーナ、どうやらあなたの発言は“魔の者”にとって地雷だったようだよ」
 エレーナ:「と、いうことは……」
 マモン:「エレーナの発言は正解であり、“魔の者”は今あなたを監視中ということだ」
 エレーナ:「ちっ、人の仕事ぶり勝手に覗いてるんじゃねーぜ。……ってか、マモンは気配を感じないのか!?」
 マモン:「実はその通り。“魔の者”ってのは本当に悪魔なのかい?」
 エレーナ:「んん?そういえばマリアンナ達が戦った時も、ベルフェゴール達は殆ど役に立たなかったというぜ!?」
 マモン:「うちの同僚達が役立たずで申し訳無いねぇ。でも、きっとそういうことだよ」
 エレーナ:「何かが繋がりそうだぜ……」
 マモン:「……東京は震度2だって。警告にもなりゃしない震度だね」
 エレーナ:「だが、地震なんか珍しい国から来た魔女をビビらせるには十分だぜ。私には効かないけどな。こう見えても私はマリアンナより長く日本にいて、しかも地震なんか関係無いホウキ乗りだぜ」

 但し、来日した時期がマリアより早いという意味であり、その後、エレーナに襲い掛かって来た“魔の者”の眷属と戦う為、すぐに渡米していたので、実際の在日歴はほぼ同じである。

 鈴木:「凄い揺れだったねぇ……」

 その時、エレベーターのドアが開いた。
 今日は鈴木が宿泊している。
 部屋備え付けの寝巻の上からジャケットを羽織っていた。

 エレーナ:「寝巻のまま部屋から出て来るんじゃねーぜ」
 鈴木:「緊急の場合は別だよ」
 エレーナ:「地震発生してる時にエレベーター乗るんじゃないっての」
 鈴木:「凄い揺れだったよ。震度4くらい?」
 エレーナ:「2だよ。日本人のくせに震度2くらいでビビってんじゃないぜ」
 鈴木:「全く。眠れないから部屋で唱題していたってのに邪魔されたよ。これは魔だな、魔」
 エレーナ:「鈴木の唱える御経ってのは、羊を数える感覚なのか」
 鈴木:「寝付きが良くなるのも功徳だし、悪くなるのも魔の働きだ」
 エレーナ:「都合の良い解釈しやがって。それだから宗教ってのは……ん?」

 その時、エレーナはハッと気づいた。

 エレーナ:「鈴木、今あんた『魔』って言ったよな?」
 鈴木:「言ったけど?」
 エレーナ:「魔って何だぜ?」
 鈴木:「おっ?エレーナもついに仏法に興味が?」
 エレーナ:「いいから答えろ!」
 鈴木:「魔というのは障魔のことだ。顕正会では魔障と呼んでいるがね。仏道修行を妨害する様々な障害のことを、全部ひっくるめて魔と呼ぶんだ」
 エレーナ:「ん?すると、それは悪魔の一種ではないのか?」
 鈴木:「全部ひっくるめるとおかしくなるね。でも、中には人の心に入り込んで妨害するタイプもある。ぶっちゃけ、同じ信徒が魔の手先として怨嫉してくる場合もある。だから油断ならないんだよ。……みーんな、敵ぞ……“あっつぁの顕正会体験記”……名無し氏ね……」
 エレーナ:「今最後、作者の恨み節出てたぜ?ポリ銀さんだけは作者に謝ってくれたらしいけどな……って、いや、そんなことより、私達は“魔の者”と戦ってるんだぜ。私達は悪魔の一種だと思っているんだが、当の悪魔達は知らないというぜ。鈴木は何か知らないか?あんたも寺で眷属に襲われただろ?」
 鈴木:「いや、ゴメン。そこまでは知らないなぁ……。あの時は俺も何が何だかワケ分からん状態で……」
 エレーナ:「そうか……」
 鈴木:「悪いね、お役に立てなくて。でも、エレーナが仏法に興味を持ってくれるなんて嬉しいなぁ。今度、エレーナも大石寺に連れて行ってあげるからね」
 エレーナ:「別にいいよ。てか、私は一度行ってるんだが……」

 まだエレーナがイリーナ組と敵対していた時の話だ。
 登山中の稲生を襲う一環でエレーナ、何と御開扉中に奉安堂を爆破しようとしていた。
 屋根に上って爆裂魔法(イオナズン?)を使用する直前、稲生の護衛として一緒に来ていた威吹の妖刀に背中から体を貫通されて阻止された。
 もちろんそこは魔道士。
 それだけで死ぬことは無かったが、その時に使用していた体はもう使い物にならなくなってしまった。
 その後、しばらくエレーナが物語から退場することになったのは、体を交換しにウクライナへ強制送還されていたからである。

 鈴木:「えっ?」
 エレーナ:「あ、いや、何でもないぜ」
 鈴木:「稲生先輩もマリアさんに折伏しているみたいだけど、けんもほろろに断られているらしいんだ」
 エレーナ:「そりゃそうだろ」
 鈴木:「マリアさんの場合、何でもイギリスにいた時、既に折伏されたことがあったらしいんだ。だから少しは稲生先輩の信仰について知っていたんだね」
 エレーナ:「何だって!?」

 エレーナはいきなり核心に触れたことを実感した。

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2019-07-07 11:28:54
 尚、威吹のこの行動に対し、とある宗内の関係者からは称賛が送られました。
 威吹にとっては、ただ単に稲生に敵対する者を倒しただけなのですが、結果的に本門戒壇の大御本尊様をお守りしたという……。
 エレーナは罰で離日を余儀無くされました。
 威吹は功徳で、江戸時代から生き別れになっていた初恋の人と今では結婚できて子供も設けております。

 エレーナが体を交換したタイミングがこれで明らかになったわけです。
 それまではブスキャラだったのに、交換した後は霧雨魔理沙……。
 体を交換したということは他人になったわけだから、罪障もキャンセルということでしょうか。
 今ではしれっと再来日して、ホテルで働いていますね。
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