報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“戦う社長の物語” 「雪に閉ざされて」 2

2018-02-19 10:38:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日07:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 早朝は雲っていた空も、日が昇るにつれて晴れて来た。
 市内は郊外も市街地も、完全に銀世界と化していた。
 上空からでは、低い建物だとどこに何があるのか分からないほどである。
 エミリーの場合、そこは何とかGPSを駆使して捜すことはできる。
 それに、敷島達が宿泊しているカプセルホテル&サウナは5階建てだ。
 建物の2階部分の半分ほどまで降り積もった雪は、5階建てのビルまでも埋めてしまうほどには積もっていない。
 それでも市中は大混乱であった。
 上空には報道や自衛隊のヘリが飛び回っている為、エミリーはそれより低く飛ばなくてはならなかった。

 エミリー:「あれだ!」

 エミリーは件のホテルを発見した。
 周辺には人の姿は見られない。
 ではやはり、敷島達はホテルの中に閉じ込められているのか。

 エミリー:「こうしてはいられない!」

 エミリーは右手を火炎放射器に変形した。
 これで少しずつ雪を融かして行こうと思った。
 まずは自分が雪に埋もれないよう、近くの3階建て以上の建物の上に着陸する。
 そして……。

 エミリー:「!?」

 エミリーがホテルの前辺りに右手の火炎放射器を向けた時だった。
 ズボッとそこから、何かが突き出て来た。
 よく見ると、それはスコップ。
 更に……。

 敷島:「よし!やっと外に出られたぞ!」
 平賀:「さすがは敷島さん!」

 何と、スコップ片手に敷島と平賀が自力で出て来た!

 敷島:「この辺にホテル入口を作っておこう」
 平賀:「自分はもう少し、ホテル前の通りを掘り進めてみます!」
 敷島:「分かりました」
 エミリー:「あの……社長?」
 敷島:「おおっ、エミリーか!お前も無事だったか!いやー、良かった良かった!」

 敷島が笑いながらエミリーの肩をポンポン叩く。

 エミリー:「助けに参りました……と言いたいところですが、大丈夫だったようですね」
 敷島:「さすがにこんなに降り積もるなんて、明らかに異常だよな。こりゃ今年の運勢、あの御神籤の通りかもしれんぞ」
 エミリー:「それを防ぐ為にも、私をお使いください」
 敷島:「そうだな」

 敷島が引いた御神籤は凶で、エミリーは大凶。
 そしてエミリーの大凶御籤には、『凶の者を助けよ。さすれば救われん』と書かれていた。

 敷島:「……ホテル入口はこんな感じでいいか。うーん……かまくら……というよりは、地下鉄の入口風になってしまったな」

 平賀は平賀でホテル前に路駐していた車を見つけた。

 平賀:「ん?車だ。昨夜から路駐してたのかな?」
 若者:「違う違う。暖房の熱で融かしながら進んでるんだ。時速30センチ!」
 平賀:「横着するな!だいたい、こんな中エンジン掛けてたらCO中毒で……って、ありゃ?ミライか、これ?」
 若者:「そう!だから一酸化炭素は出しませーん!」
 平賀:「いや、そういう問題じゃない!」

 そこへホテルのスタッフが出て来た。

 従業員:「お客様方、除雪ありがとうございます。朝食の準備ができましたので、いかがでしょうか?」
 平賀:「おっ、そうか。じゃ、ちょっと敷島さんを呼んで来る。敷島さーん!」

 平賀はトラメガで雪山の上に向かって叫んだ。

 敷島:「何ですかー!?」
 平賀:「朝食ができたんですって!取りあえず食べましょうよ!」
 敷島:「了解!今行きます!」
 エミリー:「私はもう少しこの辺りを除雪します」
 敷島:「ああ、頼むよ」

 敷島は即席で作った雪の階段を滑るように下りて行った。
 尚、登りやすいようにロープを出して、それを近くの電柱に巻き付けている。

 平賀:「それにしてもヒドいことになりましたなぁ……」
 敷島:「先生の御宅は大丈夫だったんですか?」

 2人は隣接する居酒屋で和定食を食べていた。
 ホテルの中から行けるようになっており、宿泊者専用の朝食会場にもなっていた。

 平賀:「いや、うちも埋まりました。幸い七海が必死で除雪作業をしてくれてるおかげで、何とか孤立は防げそうです」
 敷島:「それは良かった。メイドロイド1機抱えているだけで、相当安心ですね」
 平賀:「それは個体にもよるかもしれませんね。本当にメイドメイドしているタイプだと、ああはいかないかもです」
 敷島:「あー……そういや、二海には無理かもなぁ……」

 メイドにも色々なタイプ、役割がある。
 一般に『メイド長』と呼ばれるタイプは、正式にはハウスキーパー(家令)と呼ばれる使用人長のようなもので、実はメイドではない(メイドの仕事ができないわけではない)。
 “アルプスの少女ハイジ”において、クララの家に雇われているロッテンマイヤー女史がこの立ち位置に当たると言えば分かるだろうか。

 平賀:「二海は、あくまで敷島さんのお子さんの『ナースメイド(子守り)』として設定しましたからね」
 敷島:「ま、それとは別にシンディがいるから大丈夫でしょう」
 平賀:「でしょうね。エミリーは何でも1人でやってしまうタイプですが、シンディはそこら中のロボットをかき集めて命令する側でしょうね」

 すると敷島はご飯の入った茶碗を置いて、手持ちのスマホを出した。

 敷島:「はい、せいかーい!」

 スマホの画面には、バージョン4.0の集団に除雪作業や雪に閉じ込められた人々の救助作業を電気鞭片手に指示しているシンディの姿が映し出されていた。

 平賀:「こういう所は前期型から変わらん!」
 敷島:「集団を統率する力においては、エミリーより優れてはいると言えるでしょう」

 南里志郎記念館の時もそうだ。
 シンディなら電気鞭片手に、さっさと除雪作業を命じていたところだろう。
 これは2人の生い立ちの違いによる。
 エミリーは常に1人で南里の実験の立ち会い(或いは自分自身が実験台になったり)や身の回りの世話をしなければならなかったし、シンディは前期型の時からテロ活動にバージョンシリーズを統率していた為である。

 敷島:「都合良くこの辺に、バージョンシリーズでもいたら、エミリーに指示させて手伝ってもらうところなんですけどね」
 平賀:「テロ目的以外に、そう簡単にいるとは思えませんな」
 敷島:「いや、全く」

 尚、この非常事態において、暢気に朝食を取っていたのは敷島達だけである。
 それだけこの2人は場数を踏んでいるということであろう。

 敷島:「ん!?」

 その時、敷島のスマホが鳴った。
 エミリーからである。

 敷島:「どうした、エミリー?凍死者でも見つけたか?」

 だが、エミリーの言葉は意外なものであった。

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