報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「敵来襲!」

2014-12-25 15:30:30 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月20日15:00.神奈川県相模原市緑区某所 合宿所2F・207号室 稲生ユウタ]

「……よっし。またレポートできた」
 ユタはレポートを保存した。
 同じ部屋にはマリアがいて、ユタが寝起きしているベッドに上半身だけ起こした状態で魔道書を読んでいた。
「ユウタ君、来年何年生?」
「3年生です」
「そうか。じゃあ、あと2年だな」
「留年しなければw」
「ユウタ君なら大丈夫。じゃあ、あと2年後には師匠に弟子入りしてもらって……。就職活動しなくてもいいよ。衣食住は全部面倒見るから」
「はい」
 マリアの言葉に返事するユタ。
(もはや弟子入り内定になってるぅ……w)
「! ……どれ、ちょっと私は外に出て来るから。ユウタ君はここにいて。できれば、あの江蓮ってコも建物の中にいた方がいい」
「何でですか?」
「いいから。私が戻ってくるまでここにいて。……ル・ウラ!」
 マリアは魔道師の杖を持って呪文を唱えると、瞬間移動の魔法を使った。
(もう独立してもいい感じなんじゃなかろうか……?)
 と、部屋に残されたユタは思った。

[同日同時刻 合宿所外側・プレイコート 威吹邪甲&威波莞爾]

 木刀の打ち合いだけではなく、走り込みもやる妖狐達。
「先生、お先に失礼します!」
「お、おう!」
 カンジが先行する。
「若いっていいなぁ」
 威吹は苦笑い。
 不老の妖狐だが、人間換算年齢にすればユタよりかなり年上になる。
 だが、
「うわっ!」
 突然、カンジが転んだ。
 転んだというか、弾き飛ばされたというか……。
「おい、遊んでる場合か?鍛練中だぞ」
「ち、違います!あ、あの……何だろう……」
 いつもはポーカーフェイスのカンジも、この時は狼狽していた。
「いきなり衝撃が……」
「は?」
「だから、いきなり突き飛ばされたんです!見えない何かがいます!確かです!」
「ま、マジか……?しかし、妖気が感じられ……む!?」
 その時、威吹の目に一瞬映った。
 異形の者達が威吹達に向かってくる瞬間、姿が見え隠れしたことを。
「と、透明化する魍魎か!?」
「妖気までも透明化する魍魎!正に魔界の住人!」
「……以上、解説は威波莞爾でした。それにしても魔界の穴は塞いだろうに、どっから来るんだ?」
 威吹は妖刀代わりの脇差を抜いた。
 カンジもそうする。
「くそっ!見えないってのに、どこ狙えってんだ!?」
 その妖怪達は、トカゲやカエルを2足歩行にして大型化したものに見えた。
 歩行に使用しない前足(つまり、手)には鋭い爪が生えていて、これで敵を襲う武器としているようだ。
 この魍魎達、確かに透明化はしているが、素早く移動する時には一瞬姿が見える。
 そこを狙うしか無かった。
「はーっ!!」
「グエエッ!」
 威吹はそこを突いて、会心の一撃!
 トカゲ型の妖怪は、緑色の血を吐いて倒れた。
 倒れる時は姿が消えないもよう。
 そして、体が溶け出して最後には煙となって消えた。
「一匹仕留めたぜ!カンジ、あと何匹だ!?」
「だから!見えないから分かりません!」
「……くそっ、面倒な敵だ」

 威吹達が苦戦していると、
「オウ・フィ・ガ・シサ・ンモト・ホケ・コウ!姿隠しの魍魎達よ、その姿を白日の下に晒し出せ!」
 マリアが空中から現れて、魔法を使った。
 上空の太陽の光が更に少し強くなった感じを受ける。
「おおっ!」
 すると、それまで透明化していた魍魎達がその姿を現した。
「全部で5匹か!」
「ハレイ・ノジ・ンブ・ツデ・ス・ヨ!ウィオ・ラ!」
 更に攻撃魔法を使う。
 まるで手榴弾を何個も爆発させたかのような爆発が、魍魎達の周囲に巻き起こる。
 それに吹き飛ばされた魍魎達は、ほとんどが絶命した。
「マリア!オレ達まで巻き込むつもりか!」
 威吹がマリアに抗議するが、
「まだ生きてる個体がいるぞ!早くトドメを刺せ!」
「くそっ!」
「まあ、魔法使いは基本的に戦いの補助に回ることが多いとは聞きますが……」
 カンジが生き残った個体にトドメを刺した。
 魔法で相当な爆発を起こしたというのに、地面やその周囲には全くダメージが無い。
「風は当たっただろうが、ちゃんと私の魔法は狙った敵しかダメージを与えない。心配いらん」
 マリアが嘯くように言った。
「それを早く言え!」
「先生とのケンカは、稲生さんの好む所ではありませんからね」
 と、カンジはいつものポーカーフェイスに戻って言った。
「そういうことだ」
「それにしても、どこからわいて出て来たんだ、コイツラは?」
「また新たに穴が開いたのかもしれない」
「そんな簡単に開くものなのか?」
「魔界の情勢は不安定の一途を辿っている。大魔王バァルの復活を望む魔族達は未だ多く、少しでも人間界において手柄を立てようとする輩が多いと聞く。それが魔界の住人から見た人間界在住の妖怪は裏切り者に見えるし、少しでも多く人間の血肉を食らおうとする者もいる」
「何が裏切り者だ。昔は魔界と人間界の垣根は低かったぜ?」
「いきなり北緯38度線を引いたのは、バァル大帝自身のはずですが……」
 2人の妖狐は納得できないという顔をした。
「私に言われても困る。文句はバァルに言え」
「ふん……。おい、まさか、建物は狙われてないだろうな?」
「心配無い。ミカエラとクラリスが警備に当たっている。建物に侵入しようとすれば、人形達が応戦してくれるだろう」
「持ち主に似て、エグい攻撃をしやがるからな。あいつら」
「フン……」

[同日15:15.合宿所の近所 タチアナ・イシンバエワの家 イリーナ・レヴィア・ブリジッド&タチアナ]

「さすがイリーナは武闘派だな」
 イリーナ達の所へも魍魎達は襲ってきた。
 が、そこはマリアの師匠。
 イリーナが魔法を一言唱えただけで、それらは全滅した。
「うぃース。でもこの分だと、マリア達も心配だねぃ……」
「のんきに言ってないで様子見てきたら?」
「大丈夫。このくらいの敵ならマリア1人でも大丈夫だし、向こうには剣闘士が3人もいるから」
「そういう問題か」
 その時、イリーナの手持ちの水晶球が光る。
「……ああ、やっぱり。向こうにも来たみたいよ」
「それで?」
「全部撃退したって」
「撃退っていうか、返り討ちだろ?魔法使いは容赦が無いからね」
「タチアナも魔法使いじゃないのよー?」
「直接、敵を攻撃する魔法は使わないっての!アンタらじゃあるまいし!」

[同日18:00.合宿所1F・食堂 ユタ、威吹、カンジ、マリア、キノ、江蓮、イリーナ]

 夕食にはハンバーグが出て来た。
 それも小判型ではなく、どっちかっていうとボール型である。
 あまり形は良くないが、それが却って手作り感があって良かった。
「今回の敵は魔法使い達を狙って来たんじゃないのか?」
「その可能性はあるね。魔法使いというか、魔法や妖術を使うヤツを狙ってきたってとこじゃない?」
 威吹の言葉にイリーナが答えた。
「先に襲われたのは威吹君達でしょう?」
「まあ、それはそうだが……」
「鬼之助君は威吹君達より、妖術があまり使えないでしょう?」
「悪かったな!」
「妖術や魔法には、独特の臭いがあるもの。それを嗅ぎ付けて来たんだと思うね」
「臭い?オレも鼻は利く方だが、臭いなんて分かんねーぜ?」
 キノが言った。
「ああ。臭いっていうのはね……何て言えばいいのかなぁ……。第六感で感じるもの、とでも言えばいいのかな……。スメルではないのよ」
「ふーん……」
「恐らくあの連中は、アタシが穴を塞ぐ前に向こう側から出て来た奴らだろうね。締め出されたもんだから、途方に暮れていたところ、威吹君達の妖気を察知して来たんじゃないかな?」
「そんなもんか……」
「こりゃ、明日までおちおち寝てらんねーな。……あー、江蓮。つーわけで、危険だからオレの部屋に来い」
「アホか。ベッド無いだろ」
「オレと一緒に寝れば安全だから」
 キノは大きく頷いたが、
「余計危険だわ!……冬休みの宿題、せっかく持って来たんだ。今夜と明日で一気に終わらせる」
「マジかよ。熱心だなー」

 合宿中日の夜は、平和に更けてくれるか?

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