報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「スカイマーク航空513便」 2

2024-08-19 20:23:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月8日09時00分 天候:晴 スカイマーク航空513便機内]

 無事に羽田空港を離陸し、飛行機は安定飛行に入った。
 ポーン♪というチャイムと共に、シートベルト着用サインが消える。
 但し、アナウンスでは、突然の乱気流による揺れに注意する為、着席中はシートベルト着用をとあった。
 あくまでも、トイレに立つなどして良いという意味のサイン消灯なのだろう。
 あとは、CAによる飲み物などの配布が始まる合図とか。

 

 CA「お飲み物は何になさいますか?」
 高橋「俺は水でいい」

 高橋はペットボトル入りのミネラルウォーターを所望した。

 愛原「私は……」

 私が何を言うのか、高橋とリサ、そして何故か周りの乗客達も固唾を飲んで見守っている。
 リサは既に、攻撃の準備に入ったようだ。
 ここで不用意にな発言をしようものなら、飛行機が墜落するか、或いはリサがウィルスをばら撒き、バイオハザードが起こるかもしれない。

 愛原「コーヒーください」

 私の発言に、周囲がホッとした。

 CA「かしこまりました」

 CAはUCCの紙コップに、ホットコーヒーを注いでくれた。
 紙コップをもう1つくれたのは、使用済みのマドラーやシュガーの空き袋を入れる為だという。
 実にきめ細やかなサービスだ。

 リサ「わたし、ジュース!」
 CA「ただいま、ミニッツメイドのアップルジュースを御提供させて頂いております」
 リサ「リンゴジュースか。じゃあ、それで」
 CA「かしこまりました」

 そして、それとは別にキットカットが配布された。

 リサ「おー、食後のデザート!」

 リサは空弁にガッついていた。
 飲み物は既にお茶のペットボトルを持ち込んでいるので、オレンジジュースと同様、食後のデザートにするつもりのようだ。
 学校カメラマンも席を立って、生徒達の様子を写真に撮って回っている。
 このうちの何枚かは、卒業アルバムに掲載されるのだろう。
 リサの中等部の卒業アルバムは、薄いものだった。
 コロナ禍で学校行事が次々と中止に追い込まれたからだ。
 その分、コロナもだいぶ落ち着いて来た今年、少しずつ学校行事は再開されており、高等部の卒業アルバムは、中等部よりも厚くなると言われている。

 愛原「進行方向右側だと、富士山が見えるぞ?」
 リサ「そうなんだ!」

 幸い今は晴れているので、本当に富士山を上から見ることは可能だろう。
 これがモニタ付きの機内なら、GPSで今どこを飛んでいるのかの表示が出たりもするのだが、あいにくとスカイマークではそのようなモニタは無い。
 個別はもちろん、大きなスクリーンとか、通路上のモニタなども無い。
 そこはLCCと同じコストカットをしているのだろう。
 では離陸前の機内安全ビデオはどのように流したのかというと、ビデオは流してないい。
 安全についてのお知らせを自動放送で流し、それに合わせてCAが救命胴衣の着用などを実演してみせるという感じだ。
 これが本当のLCCであるジェットスターだと、自動放送すら流れない。
 CAの1人がマイクで肉声放送し、それに合わせて別のCAが実演するという方式である。
 そういう意味では、スカイマークは、『厳密に言えばLCCではない』というのが分かる。

 高橋「昔は機内でタバコ吸えたんスよねぇ……」
 愛原「そうだよ。だが、今は禁煙だ。着くまで待て」
 高橋「へーい……」

 因みにキャリア航空では導入されているWiFiも、スカイマーク機内では導入されていないので念の為。
 まあ、他の生徒達は、気の置けない友達同士でワイワイやっていたりしているが。
 あと、朝早いということもあって、寝てる生徒もいる。

 

 愛原「高橋、ちょっとトイレだ」
 高橋「ヘイ」

 私は通路に出ると、最後部にあるトイレに向かった。
 当然ながらトイレは個室で、出入口のドアは折り戸である。
 別の航空会社の飛行機では、トイレにも窓が付いていることがあるそうだが、この飛行機ではさすがにそれは無い。
 トイレから戻り、また自分の席に座ろうとした時だった。

 愛原「ん?」
 高橋「先生、どうしました?」
 愛原「何かさ、向こうに別の飛行機飛んでない?」

 すると、レイチェルが私の方を向いて答えた。

 レイチェル「あれはBSAAの飛行機です」
 愛原「えっ、そうなの?飛行訓練?それにしては、少し近くないか?」
 レイチェル「訓練……と言えば訓練かもしれません。リサが何もしなければ」
 愛原「ん?」
 レイチェル「もしもリサが暴走し、私達でも手に負えないと分かった場合、あの飛行機がこの飛行機を撃墜するプランになっています」
 愛原「何それ!?そんな厳戒態勢取られてても逆に困るんだけど?!」
 レイチェル「BOWを連れて歩くというのは、そういうことなンです」
 愛原「……1泊2日の温泉旅行の方が良かったかなぁ……」
 レイチェル「本来は、その方が良かったかもしれませンね」

 尚、リサにはパスポートが発行されない為、海外にはどうしたって行けない。

 愛原「何か、急に怖くなってきたよ。リサ、頼むから暴走しないでくれな?」
 リサ「先生が他の女に気を取られたりしなければ大丈夫だよ?」

 リサはニヤッと笑った。
 人間形態であるにも関わらず、その口元からは牙が覗いていた。

 愛原「す、すいません、CAさん……」

 私はCAを呼んだ。

 高橋「先生!?」
 リサ「あっ、こら!言ったそばから!!」
 CA「お客様、どうなさいました?」
 愛原「お水ください」
 CA「はい。お水ですね。少々お待ちください」
 高橋「先生?」
 リサ「先生?」
 愛原「緊張して喉が渇いたんだよ!」
 高橋「あー……な、何かサーセン」
 リサ「せ、先生が浮気しなければ、わたしも暴れたりしないよ?」

 その後、私はCAが持って来てくれた紙コップの水を一気飲みしたのだった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「スカ... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「沖縄... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事