報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「帰省最終日」 2

2018-10-10 10:18:46 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月31日12:40.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 MOVIXさいたま]

 映画の上映が終わり、ぞろぞろと出口から出て来る観客達。
 その中に稲生とマリアも含まれていた。

 稲生:「いやあ、やっぱりパソコンで観るのと大画面で観るとは違いますね」
 マリア:「そりゃそうさ。家庭用プロジェクターも買ったことだし、これで屋敷の中でも十分映画が観れるってことさ」
 稲生:「ポップコーンとかはどうします?」

 稲生は購入して食べ終わったポップコーンとコーラの空き容器をゴミ箱に捨てながら言った。

 マリア:「ポップコーンくらい、私の人形に頼めば作ってくれるさ」
 稲生:「さすがですね」
 マリア:「次はどこ行く?」
 稲生:「屋敷で使う物はまだ購入しきれていないでしょう?今度はイオンにでも移動しますか」
 マリア:「うん、分かった」

[同日13:07.天候:晴 JRさいたま新都心駅西口→イオンモール与野]

 夏の日差しを避けるように、バス停に向かう。

 稲生:「まだ暑いですね。屋敷の涼しさがありがたいですよ」
 マリア:「それでも、私がいたイギリスより暑いくらいだよ」
 稲生:「そうなんですか。緯度の高い国は、涼しくていいですねぇ……」
 マリア:「冬は寒いけどね」
 稲生:「そりゃそうでしょうね」

 バスに乗り込むが、時間にならないとエンジンが掛からない為、まだ車内は暑い。
 ようやく発車1分前になって、エンジンが掛かった。
 待ってましたとばかり、クーラーの吹き出しスポットから強い風が吹き出て来る。
 マリアのサラサラとした金髪のボブヘアーがその風に靡いた。
 通路側に座る稲生が、手を伸ばして開けていた窓を閉める。

〔「お待たせ致しました。北浦和駅西口行き、まもなく発車致します」〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 最近の中扉のドアは、ブザーではなく、電車のドアみたいなチャイムに変わっている。
 西口のバス乗り場は東口と比べればこぢんまりとしているが、それでも屋内(?)にあるので、そこを出発すると……。

 稲生:「また、暑い日差しが……」

 照り付けるわけである。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは白鍬電建住宅経由、北浦和駅西口行きです。次は北与野駅入口、北与野駅入口。……〕

 稲生:「予定通りだと、先生は今頃飛行機の中ですね」
 マリア:「ターミナルで寝過ごしてなきゃいいけどな」
 稲生:「そんなことってあるんですか?」
 マリア:「成田空港でもVIPエリア……つまり、ファーストクラスやビジネスクラスの客だけが利用できるエリアってあるでしょ?ソファとかが置いてあったり、ビジネスデスクが置いてあったり……」
 稲生:「あー、聞いたことありますね」

 イリーナはビジネスクラスのチケットを持っていたから、そこを利用できる権利はあるわけだ。

 マリア:「ポーリン先生と移動中、ラウンジで寝込んで大変だったとかエレーナが言ってたなぁ……」
 稲生:「いつの話ですか、それ?」

[同日15:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区本町西 イオンモール与野]

 買い物を終えて、タリーズコーヒーで休んでいる稲生達。

 稲生:「小腹が減ったのでちょっと……」
 マリア:「ああ、いいよ。私もスイーツを……」

 稲生、アイスコーヒーと一緒にホットドッグを注文する。
 そういえば映画の時にポップコーンを食べたので、昼はあまり腹が空かず、昼食は取っていなかったのだった。

 稲生:「だいぶ買いましたねぇ……」
 マリア:「こういうモールに来ると、ついつい買っちゃうな」
 稲生:「先生に『無駄使いするな』って怒られますかね?」
 マリア:「師匠の分も買っておいたし、大丈夫じゃない?イギリスに行ったのだって、“魔の者”対策は表向きで、多分金稼ぎに行ったんだと思うよ」
 稲生:「どういうことをしているのか、聞きたいような、聞きたくないような……」
 マリア:「ヒントを言えば、向こうでもホラーチックな事件が起きているってことさ」
 稲生:「ホラーチックな事件?『エルム街の悪夢』とか、『13日の金曜日』とか……」
 マリア:「まあ、それに近いかもね。勇太は日本で日本のモンスター(妖怪)と戦っていたみたいだけど、イギリスなどのヨーロッパには、そうそう勇太みたいなのはいない。だから、魔道師の出番なんだってさ」
 稲生:「それって魔界の穴が開いている?」
 マリア:「ボコボコと開いているみたい。師匠はそれを“魔の者”の仕業だと思ってるみたいだけど。それで確認してくるついでに、それ絡みの事件も解決させて金を稼ごうとしているんだろう」
 稲生:「先生はそういうことされていたんですね。僕達も一緒じゃなくていいんですかね?」
 マリア:「いいみたいだよ。ってか、私はその“魔の者”から逃げて日本まで来たんだから。多分、師匠としても、私なんかが行っても足手まといだと思っているんだろう」
 稲生:「そんなに凄い相手なんですね。北海道の時も苦労したのに、あれで眷属だったとは……」
 マリア:「“魔の者”本人は師匠達の力のおかげで、日本海を越えてやってくることはできない。だけど、それより力の弱い眷属は送り込むことはできる」
 稲生:「僕や威吹が倒した相手の中に、その眷属はいたんでしょうか?」
 マリア:「その中に得体の知れない者はいた?」
 稲生:「いましたよ。それも1つや2つじゃなかったです。威吹も相当苦労しました」
 マリア:「じゃあ、いただろうな。日本の妖怪が勇太のことを聞きつけて襲ってきたということは、あり得る話だ。でも、悉く勇太や威吹に撃退されて、諦めざるを得なかったってことだね」
 稲生:「そうかぁ、危なかったんだなぁ……。マリアさんは、よく悪魔を呼び出せましたね」
 マリア:「勇太が威吹を封印から解放させられたのと同じく、私にもその力くらいはあったらしい」
 稲生:「なるほど」
 マリア:「次はどこ行く?」
 稲生:「荷物を大宮駅のコインロッカーに入れて、それから例の温泉に行きますか」
 マリア:「いつも通りだな」

 マリアはニヤッと笑った。

 マリア:「その前に荷物を仕分けした方がいいかも……」
 稲生:「僕の分は自分で持ちますけど、先生の分とマリアさんの分はしっかり分けた方がいいかもしれませんね」

 中国人並みに爆買いでもしたのだろうか、この魔道師達は……?

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