報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「やまびこ60号」

2015-05-25 10:16:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月17日21:30.天候:晴 JR仙台駅・新幹線乗り場 敷島孝夫、平賀太一、平賀奈津子、井辺翔太、シンディ、エミリー、結月ゆかり、Lily、未夢、初音ミク]

 天井の上から新幹線が走り出す轟音と振動が聞こえてくる。
 全車指定席の速達列車としては最終の東京行き“はやぶさ”“こまち”38号が発車して行ったのだろう。
 敷島達が乗るのはその後の“やまびこ”60号。
 東京行きとしては、これが最終となる。
 その後にも1本あるのだが、それは郡山止まり(やまびこ280号)なので、それでは帰れない。
「井辺君、大丈夫か?」(敷島)
「だ、大丈夫です。本当に皆さん酒豪で……」(井辺)
「南里先生や十条博士に比べたら、まだまだよね?」(奈津子)
「はは(笑)、そうだな」(太一)
 そんなことを話しているうちに、
「シンディ達が・来ました」
 と、エミリーがエスカレーターの方を向いて言った。
「そうか」
 体は真新しくなったのに、言語ソフトだけはそのままという。
 これは設計者である南里の意向によるもの。
 何故南里がそんな遺言を残したのかは定かではないが、直弟子で相続人となった平賀としては守らざるを得ないというわけだ。
 エスカレーターではなく、その隣の階段をトントントンと登って来るボーカロイド達。
「おっ?随分と“お土産”買い込んだな」
 彼女達の両手には、最低でもペーパーバッグが3つは下げられていた。
「買い過ぎよ、このコ達」
 シンディだけは任務上手ぶらだが、両手を腰にやって呆れていた。
「購入資金はどこから?」
 平賀は眼鏡を押し上げて首を傾げた。
「ミクはうちのトップアイドルですから」
 と、敷島。
「あー、なるほど。トップアイドルともなれば、そのギャラは【お察しください】ですか」
「なになに?服とか小物とか?」
 奈津子もボカロ達が買い込んだ物を覗き込む。
「はい!」
 ミクは得意げに頷いた。
 しかし井辺は、
(確かにアパレル関係の袋もありますが、半分くらい家電量販店の袋なのは何故なのでしょう?)
 と、疑問に思ったが、口に出すのはやめておいた。
「それじゃ行きましょうか。井辺君、彼女達にキップを」
「あ、はい。これが新幹線の乗車券と特急券です。自動改札口なので、1人ずつ持ちましょう」
「はーい」
「初音先輩や社長はグリーン車じゃないの?」
 と、Lilyは口元を歪めて言った。
「いいよいいよ。皆で帰ろう」
 敷島は鷹揚に手を振った。
「Lilyちゃんは、わたしとじゃイヤ?」
「あ、いえ!そういうわけじゃ……」
 10号車の指定席車両ではあったが。
「それじゃ平賀先生方、私達はこれで」
「お気をつけて。またいつかお会いしましょう」
 シンディやエミリーも、欧米人が別れる時のように抱き合うが、
「といっても、また近いうち、今度は自分達が上京することになりますがね」
 と、平賀はニヤッと笑った。
「それは学会か何か?」
「それもあるんですけど、さすがに記念館がダイレクトに狙撃されたことは見過ごせませんから。いえ、自分だけじゃなく、『東京にいる方々』もですよ」
「……なるほど。そう、ですか……。大げさなことにならないといいんですが……」
「自分達がそう思っても、向こうさんが違うのであれば意味がありませんよ」
「左翼平和ボケ達に聞かせてやりたいですなぁ」

[同日21:45.JR仙台駅新幹線ホーム→E2系“やまびこ”60号10号車内 敷島孝夫、井辺翔太、初音ミク、結月ゆかり、Lily、未夢、シンディ]

〔まもなく13番線に、21時47分発、“やまびこ”60号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。13番線に、“やまびこ”60号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

「因みに、電化製品はどういった物を……?」
 井辺は意を決して、1番聞きやすいゆかりに聞いた。
「私達はソフトウェア関係ですね。辞書とかナビとか……。現場に1人で行く時、必要ですから。これをインストールするわけです」
「そういうことでしたか」
 井辺は納得したが……。

〔「13番線、ご注意ください。本日の東京行き最終“やまびこ”60号の到着です。お下がりください。東京行きの最終列車です。ご利用のお客様はお急ぎください」〕

 今や古参のE2系車両。
 “はやぶさ”などの新型車両が青白いLEDランプを使用する中、未だに白熱電球の色を輝かせてやってきた。
 夜の上り列車は時期にもよるのだろうがガラガラで、特に隣のグリーン車など、1人か2人しか乗っていない状態だった。
 ドアが開いて、最後尾の車両に乗り込む。
 窓の下の足元に、充電コンセントが付いているタイプだった。
「充電するなら仲良く回せよ」
「はーい」
 3人席に座る新人ボーカロイド達に言う敷島。
「お前も使うのかよ!」
 その後、シンディに突っ込む。
「だって交流2万5000ボルト、美味しそうだしぃ……」
「直接、架線から取り入れているわけではないと思いますが」
 井辺も言った。
 それに使用するのは大型のACアダプタなので、結局彼女達のバッテリーに取り込まれる時には直流に変換されている。

 列車は定刻に発車した。
 新幹線ともあれば、ギリギリで駆け込んでくる乗客もなかなかいないのか。
 それともただ単に、今日はいなかっただけか。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。「お待たせ致しました。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。“やまびこ”60号、最終の東京行きでございます。途中、大宮には23時18分、上野には23時38分、終点東京には23時44分の到着です。【中略】次は福島、福島です」〕

「シンディ、お前はまたカスタムパーツでも買ったのか?」
「あれ?バレた?」
 敷島の突っ込みに、ペロッと舌を出すシンディ。
「バレバレだ!今度はどこを改造する気だ!?」
「スキャナーの範囲をもう少し広げようかとぉ……」
「アリスにそんな改造ができるかな?」
「前にレーザービーマーを取り付けてもらったけど?」
 シンディは自分の左目を指さした。
「後で取り外してもらおう」
「えー!?」
「えーじゃない!あれは危なくてしょうがねぇ!代わりに未夢に取り付けてもらおう」
「わ、私ですか?」
「未夢は元々マルチタイプとしての設計だったわけだし、レーザービームを取り付ける余地があるはずだ」
(危険物を取り付けるボーカロイドもどうかと思いますが、社長?)
 と、井辺は心の中で突っ込んだ。

 杜の都において、それぞれの仕事を終わらせた一行。
 彼らを乗せた最終列車は、グングン速度を上げて一路、東京へと向かう。

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6 コメント

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つぶやき (作者)
2015-05-25 15:14:40
転重軽受という言葉があるのは知ってるが、添書登山申し込みの後の帰り際、地震で電車が止まるとは……。
本堂の御本尊に登山までトラブルの無いようにお願いした矢先のことだ。
無事に帰れた上、バスの乗車券が手に入れば問題は無いだろうがね。
それにしても、あからさま過ぎる現証だ。
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つぶやき 2 (作者)
2015-05-25 15:28:23
乗り鉄ついでの話である。
詳細は無事帰宅後、日記として掲載したい。
因みに現在は新木場。
そこからりんかい線→埼京線の快速に乗り、大宮に帰る予定だ。
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お疲れ様です (ゴンベ)
2015-05-25 16:33:46
大変でしたね地震の余波。
きっと地面も後押ししてるんですよ、ガンガレって。
G虎の大●氏VS傍●者論戦も終息に向かいそうですよ。
警戒警報は新幹線も動き出したし、G虎も、もう解けますよ。
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ゴンベさんへ (作者)
2015-05-25 17:38:33
 嫌な後押しですなw

 やっとバスのチケットも手に入ったので、あとはそれまでトラブルが無いことを本当に切に願うばかりです。
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Unknown (ANP)
2015-05-25 22:47:25
東日本(関東都心)はIC運賃と現金運賃とあるんですね。

ど田舎では全くわかりませんがwwwww
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ANPさんへ (作者)
2015-05-26 07:38:28
恐らく消費税増税による苦肉の策でしょうが、値上げであることには変わり無いという……。
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