[10月4日13:00.天候:晴 敷島エージェンシー]
勝又:「昔は旧ソ連で設計された粛清用が、今では日本で人命救助に使われるとは……。いやいや、さすがですね」
敷島の同級生で、若手都議会議員の勝又が敷島エージェンシーを訪ねていた。
敷島:「マスコミを騒がすようなやり方になったけども、ああいう止め方しかマルチタイプはできないからね」
勝又:「ゆりかもめの高架上にジャンプするやり方かい?あれしか無かっただろう?」
敷島:「いや、まあ、そうなんだけど……」
シンディ、給湯室からコーヒーを運んで来る。
勝又:「大活躍だったじゃないですか。テレビで観ましたよ」
シンディ:「お役に立てて何よりです」
勝又:「銀座駅での活躍といい、これなら都民からの理解も得られるでしょう」
シンディ:「銀座駅でのことは、私よりもエミリーの方が活躍していたと思います」
勝又:「でも同型機でしょう?それなら同じことですよ」
敷島:「なに?東京都ではまた何かやろうって話なの?」
勝又:「東京オリンピックに向けて、ロボット大国である日本をもっと東京でPRしようって話だよ。欧米では見落とされがちな、もっとこのシンディさんみたいなロイドを日本のオリジナルとしてPRしていこうってね」
敷島:「おおかた、豊洲市場の問題をこっちにすり替えようってことだろう?そんなんで、うちのマルチタイプをダシに使うのはやめてもらいたいね」
勝又:「いや、そういうことじゃない。マルチタイプを霞ヶ関に売り込む活動を、キミはしていたじゃないか。それを東京都で買おうって話なんだ」
敷島:「東京都で?何に使うんだ?」
勝又:「だから、東京オリンピックの準備だよ。東京の会場で色々使えるだろう?」
敷島:「色々ねぇ……」
勝又:「オリンピックは平和の祭典だ。そこへマルチタイプを活躍させれば、彼女達の平和利用が如何に有効かのPRにもなる」
敷島:「私が売っているのはマルチタイプの設計データだ。シンディ連れて歩いているのは、その通りに作るとこうなりますよという展示みたいなものさ。シンディはそのまま売れないよ?」
勝又:「分かってる。50億円の予算なら何とかするさ」
マルチタイプの製造費用は1体につき、50億円掛かるとされている。
設計データの販売については、今はDCJに委託している為、DCJに問い合わせる必要がある。
勝又:「今、代わりのロボットを作っている所だ」
敷島:「代わりの?何だそれは?」
勝又:「会場整備に使うロボットさ。もう既に製造に入っている」
メーカーはDCJではないようだ。
おおかた、入札で決めた安いメーカーだろうと敷島は思った。
完成予想図を見ると、何とも武骨なロボットであった。
身長は2メートルを超え、横幅も広い。
勝又:「馬力はマルチタイプ並みにありますよ」
敷島:「ま、こんだけデカけりゃあるでしょうねぇ……。(何か、フランケン・シュタインのロボットみたい)」
勝又:「会場を作るにも人手が必要ですが、少子化による人口減は避けられないし、移民政策にあっても反対の声が根強く、簡単に通すことはできない。そんなことしている間に、時間はどんどん過ぎて行く。だったら、ロボットを大量に作ってそれらにやらせれば良い」
敷島:「なるほど……。(何か、嫌な予感がするのは俺だけかな……)」
ゆりかもめを暴走させたKR団の生き残りを名乗る犯人は、まだ逮捕されていない。
KR団の逆鱗に触れるような政策を打ち出すのが勝又であるが、絶対にKR団が黙っているとは思えなかったのだ。
勝又:「そんなわけですから、是非とも敷島社長にも御協力お願いしたい」
敷島:「まあ、私らで良かったらできるだけのことはしますがね……」
[同日23:00.天候:晴 東京都内三多摩付近のとある工場]
こんな深夜になっても、稼働しているロボット工場。
24時間働けるのが機械のメリットであることを標榜している。
夕方までは人間の従業員が作業をしたり、作業に当たるロボットの監視をしているのだが、退勤時間以降はロボットのみが稼働していた。
この工場では勝又がPRしていた、あのフランケンのようなロボットが製造されている。
その夜間出入口に、1人の男が現れた。
入ってすぐに警備室があり、そこには人間の警備員が詰めてはいるのだが……。
男:「こんばんは」
警備員:「何ですか、こんな時間に?もう中には誰もいませんがね?」
男:「工場で製造されているフランケンに用があって来たのですよ」
警備員:「は?」
直後、警備員の顔に催眠スプレーが吹き付けられた。
警備員:「うわっ!」
男:「失礼しますよ」
男は警備室に入ると、倒れた警備員を尻目に慣れた手つきで工場内のセキュリティを全て解除してしまった。
男:「それでは……」
男は警備室を出ると、セキュリティが解除されて行けるようになった工場の奥へと進んで行った。
[10月5日02:00.天候:晴 東京都内多摩地区某所にある銀行]
銀行の金庫室の前に、2人の男が何かをしている。
もちろん、こんな時間だ。
良からぬことをしようとしているのは間違いない。
強盗A:「おい、早くしろ!何やってんだよ!」
強盗B:「くそっ!下見した時とデータが書き換えられてやがる!これじゃ開けられねぇ!」
どうやら金庫の扉を開けようとしているらしいが、それを解錠する為の電子ロックのコードが変わってしまって開けられないようだ。
普通なら、ここで諦めるところだが……。
強盗A:「やっぱり警備員を脅して開けさせるか?」
強盗B:「バッカ、オメェ!そんなことしたら、余計足が付くべ!」
強盗A:「でもよォ……」
強盗C:「遅いなぁ……。あの2人、何してるんだよ?」
強盗団の新入りCは逃走用の車を用意し、ついでに入口近くでの見張り役を任されていた。
すると、後ろからトントンと肩を叩かれる。
強盗C:「シッ、静かにしろ!今忙しいんだから!」
Cは最初、応援に来た仲間のことだろうと思っていたのだが……。
また、トントンと肩を叩かれる。
強盗C:「だから、オメ……!」
だが、そこでボスから今夜の仕事は3人だけで、人数はそれ以上回せないという話を思い出した。
ということは、今自分の肩を叩いているのは、応援に来た仲間ではなく……。
強盗C:「な、何だお前は!?」
小柄なCは自分の2倍以上の体格を持つ大男にびっくりした。
と、そこへ中にいたAとBが飛び出してくる。
強盗A:「くそっ!作戦は失敗だ!今夜は退散するぞ!」
強盗C:「ええっ!?でも失敗したら、ボスに『東京湾クルーズ行きっ放し』と『甲州の山へ片道ドライブ』どっちかを選べって……!」
強盗B:「このままサツに捕まるよりはマシだ!早く車を出せ!」
強盗C:「は、はい!」
強盗A:「ちょっと待った!コイツは誰だ!?」
強盗C:「さっきから俺にくっついて離れないんスよ!」
強盗B:「知り合いか?」
強盗C:「そりゃ昔、これに似たヤツとつるんでたりしてましたけどね!」
強盗A:「どうでもいい!お前、金庫破り手伝ってくれないか?」
強盗C:「お前、できるのか?」
フランケン、強盗Cの言葉に頷く。
そして、先ほどまで2人の強盗が入っていた場所へと入っていった。
勝又:「昔は旧ソ連で設計された粛清用が、今では日本で人命救助に使われるとは……。いやいや、さすがですね」
敷島の同級生で、若手都議会議員の勝又が敷島エージェンシーを訪ねていた。
敷島:「マスコミを騒がすようなやり方になったけども、ああいう止め方しかマルチタイプはできないからね」
勝又:「ゆりかもめの高架上にジャンプするやり方かい?あれしか無かっただろう?」
敷島:「いや、まあ、そうなんだけど……」
シンディ、給湯室からコーヒーを運んで来る。
勝又:「大活躍だったじゃないですか。テレビで観ましたよ」
シンディ:「お役に立てて何よりです」
勝又:「銀座駅での活躍といい、これなら都民からの理解も得られるでしょう」
シンディ:「銀座駅でのことは、私よりもエミリーの方が活躍していたと思います」
勝又:「でも同型機でしょう?それなら同じことですよ」
敷島:「なに?東京都ではまた何かやろうって話なの?」
勝又:「東京オリンピックに向けて、ロボット大国である日本をもっと東京でPRしようって話だよ。欧米では見落とされがちな、もっとこのシンディさんみたいなロイドを日本のオリジナルとしてPRしていこうってね」
敷島:「おおかた、豊洲市場の問題をこっちにすり替えようってことだろう?そんなんで、うちのマルチタイプをダシに使うのはやめてもらいたいね」
勝又:「いや、そういうことじゃない。マルチタイプを霞ヶ関に売り込む活動を、キミはしていたじゃないか。それを東京都で買おうって話なんだ」
敷島:「東京都で?何に使うんだ?」
勝又:「だから、東京オリンピックの準備だよ。東京の会場で色々使えるだろう?」
敷島:「色々ねぇ……」
勝又:「オリンピックは平和の祭典だ。そこへマルチタイプを活躍させれば、彼女達の平和利用が如何に有効かのPRにもなる」
敷島:「私が売っているのはマルチタイプの設計データだ。シンディ連れて歩いているのは、その通りに作るとこうなりますよという展示みたいなものさ。シンディはそのまま売れないよ?」
勝又:「分かってる。50億円の予算なら何とかするさ」
マルチタイプの製造費用は1体につき、50億円掛かるとされている。
設計データの販売については、今はDCJに委託している為、DCJに問い合わせる必要がある。
勝又:「今、代わりのロボットを作っている所だ」
敷島:「代わりの?何だそれは?」
勝又:「会場整備に使うロボットさ。もう既に製造に入っている」
メーカーはDCJではないようだ。
おおかた、入札で決めた安いメーカーだろうと敷島は思った。
完成予想図を見ると、何とも武骨なロボットであった。
身長は2メートルを超え、横幅も広い。
勝又:「馬力はマルチタイプ並みにありますよ」
敷島:「ま、こんだけデカけりゃあるでしょうねぇ……。(何か、フランケン・シュタインのロボットみたい)」
勝又:「会場を作るにも人手が必要ですが、少子化による人口減は避けられないし、移民政策にあっても反対の声が根強く、簡単に通すことはできない。そんなことしている間に、時間はどんどん過ぎて行く。だったら、ロボットを大量に作ってそれらにやらせれば良い」
敷島:「なるほど……。(何か、嫌な予感がするのは俺だけかな……)」
ゆりかもめを暴走させたKR団の生き残りを名乗る犯人は、まだ逮捕されていない。
KR団の逆鱗に触れるような政策を打ち出すのが勝又であるが、絶対にKR団が黙っているとは思えなかったのだ。
勝又:「そんなわけですから、是非とも敷島社長にも御協力お願いしたい」
敷島:「まあ、私らで良かったらできるだけのことはしますがね……」
[同日23:00.天候:晴 東京都内三多摩付近のとある工場]
こんな深夜になっても、稼働しているロボット工場。
24時間働けるのが機械のメリットであることを標榜している。
夕方までは人間の従業員が作業をしたり、作業に当たるロボットの監視をしているのだが、退勤時間以降はロボットのみが稼働していた。
この工場では勝又がPRしていた、あのフランケンのようなロボットが製造されている。
その夜間出入口に、1人の男が現れた。
入ってすぐに警備室があり、そこには人間の警備員が詰めてはいるのだが……。
男:「こんばんは」
警備員:「何ですか、こんな時間に?もう中には誰もいませんがね?」
男:「工場で製造されているフランケンに用があって来たのですよ」
警備員:「は?」
直後、警備員の顔に催眠スプレーが吹き付けられた。
警備員:「うわっ!」
男:「失礼しますよ」
男は警備室に入ると、倒れた警備員を尻目に慣れた手つきで工場内のセキュリティを全て解除してしまった。
男:「それでは……」
男は警備室を出ると、セキュリティが解除されて行けるようになった工場の奥へと進んで行った。
[10月5日02:00.天候:晴 東京都内多摩地区某所にある銀行]
銀行の金庫室の前に、2人の男が何かをしている。
もちろん、こんな時間だ。
良からぬことをしようとしているのは間違いない。
強盗A:「おい、早くしろ!何やってんだよ!」
強盗B:「くそっ!下見した時とデータが書き換えられてやがる!これじゃ開けられねぇ!」
どうやら金庫の扉を開けようとしているらしいが、それを解錠する為の電子ロックのコードが変わってしまって開けられないようだ。
普通なら、ここで諦めるところだが……。
強盗A:「やっぱり警備員を脅して開けさせるか?」
強盗B:「バッカ、オメェ!そんなことしたら、余計足が付くべ!」
強盗A:「でもよォ……」
強盗C:「遅いなぁ……。あの2人、何してるんだよ?」
強盗団の新入りCは逃走用の車を用意し、ついでに入口近くでの見張り役を任されていた。
すると、後ろからトントンと肩を叩かれる。
強盗C:「シッ、静かにしろ!今忙しいんだから!」
Cは最初、応援に来た仲間のことだろうと思っていたのだが……。
また、トントンと肩を叩かれる。
強盗C:「だから、オメ……!」
だが、そこでボスから今夜の仕事は3人だけで、人数はそれ以上回せないという話を思い出した。
ということは、今自分の肩を叩いているのは、応援に来た仲間ではなく……。
強盗C:「な、何だお前は!?」
小柄なCは自分の2倍以上の体格を持つ大男にびっくりした。
と、そこへ中にいたAとBが飛び出してくる。
強盗A:「くそっ!作戦は失敗だ!今夜は退散するぞ!」
強盗C:「ええっ!?でも失敗したら、ボスに『東京湾クルーズ行きっ放し』と『甲州の山へ片道ドライブ』どっちかを選べって……!」
強盗B:「このままサツに捕まるよりはマシだ!早く車を出せ!」
強盗C:「は、はい!」
強盗A:「ちょっと待った!コイツは誰だ!?」
強盗C:「さっきから俺にくっついて離れないんスよ!」
強盗B:「知り合いか?」
強盗C:「そりゃ昔、これに似たヤツとつるんでたりしてましたけどね!」
強盗A:「どうでもいい!お前、金庫破り手伝ってくれないか?」
強盗C:「お前、できるのか?」
フランケン、強盗Cの言葉に頷く。
そして、先ほどまで2人の強盗が入っていた場所へと入っていった。
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