Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

有機農業が国を変えた    吉田太郎(コモンズ)

2009年01月20日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 およそ10年前、日本における第何回目かの「有機農業」ブームが巻き起こった時に話題となり、ある意味では先導的な役割を果たした本。
 遠くカリブ海まで職員を派遣し、内容を詳細に研究した地方公共団体もあったような・・・
 硬く考えないビジネスモデルとしての「有機農業」であれば、日本でももっと普及すると思うのは、不遜だあろうか・・・

○未曾有の危機「スペシャル・ピリオド」
○50aの畑に施肥するのに化学肥料なら三時間ですむが、堆肥は20t入れるから1日でも終わらない
○どの地域でも実現可能で、農家が簡単に使いこなせる技術を開発すること 
 → キューバの有機農業技術の基本にある考え方
○桑を牛の資料に活用する技術:イギリス
○有機稲作:①品種開発、②田植えの普及、③緑肥の活用、④バイオ農薬
○大規模農場の解体:①経済的な背景、②土壌物理性劣化、③効率性
○知的水準は高いが、事務能力をもった人材が少ない → マネジメント力不足
○農業は全ての偉大な文化の魂
○天候、土壌、作物、家畜、自然のサイクルと多くの知識が必要なだけでなく、その知識を日々用いることが求められるから
○世代から世代へと創造されてきた文化によって生みだされている
○キューバの有機農業の話を聞いて、「闇夜に輝く灯を見る思いがする」と感動
○平均で1ペソの価値を生みだすのに52ターボを使ってきた(1ペソ=100ターボ)
○この地に生まれ、この地で働く者だけが、この土地で何が得られるか、何を作ればよいのかがわかる。だから、この土地に生まれた農民が、この大地を管理しなければならない

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美女という災難     日本エッセイスト・クラブ編(文芸春秋)

2009年01月11日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 奇抜な表題に惹かれ、思わず手にした一冊。人生の達人達が語る、短い言葉からは、頁を繰るごとに「!」や「?」が頭の中に渦巻いて、あっという間に読み終えてしまった。
 今晩から、エッセイストクラブ編の同種のものを、すこし拾い読みしようか・・・

○砂のまじったカレー 廣淵升彦:本当の世界を知るためには、たまには、カレーに砂を入れて食ってみるか
○目のつけどころ 志村史夫:仕事や勝負などに関わるだけではなく、自分自身の人生、生き方、幸福感などにも広く当てはまることだろう
○記憶する体 朝比奈あすか:おそらく考えるより先に彼女の指が成している
○旅する男女脳 黒川伊保子:男性脳は、生まれつき奥行き認識が得意で、遠くに興味が行くのである
○「なっとく説明カード」の効用 矢吹清人:横向きハガキを三枚並べた大きさの三つ折りのカード-町医者のささやかな「おまけ」
○読書の思い出 松沢哲郎:文字から得た知識だけでは、どうしても納得できないということだ。だれも考えていないことを考える。そこに進むべき学問の道があると納得した
○還ってゆくところ 高田宏:「大寒や地蔵拝んで走るのさ」日々の暮らしのリズムみたいなもののようである
○最近イギリス漫談-自然と歴史 安嶋彌:庶民の方がむしろナショナルといえる
○教育は家族を巻き込め 小林和夫:教育の一番重要な場は家庭だというのが私の信念だ
○八月晦の赤い禾 宇多喜代子:種籾は いなきしほれてかりとりて 穂先をきりてもみておくなり 「日本農書全集」百姓伝記 苗代百首
○妻への手紙を書きつづけて 永六輔:私ね百歳まで仕事してると思うの、それ見届けてほしいの。二人の娘は何時も二人の妻ほどうるさい

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「里」という思想    内山節(新潮選書)

2009年01月03日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 ミレニアムからおよそ十年。大きな歴史の流れの中で、生き証人としての我々の精神構造や社会機構は、はたして健全か。飛べない飛行船の設計図を片手に、座り心地の悪い定位置に甘んじ、心と体の安寧をかき乱していないだろうか・・・
 森の民、農耕民の叡智に触れ、今を生きるヒントを与えてくれる歴史哲学の一冊である

○誰もが自分の仕事や暮らしを守ろうとしている。そして不機嫌なおだやかさ
○近代以前の歴史伝統からの検証を受けない前進を、あるいは「近代」の暴走を可能にし、ためらいもなく自己を主張する「自由」を確立したのである
○科学がすべてのものを解き明かしていくだろう、という感覚とともに展開してきたのが近代世界
○具体的な他者とのかかわりのなかで、他者のまなざしを自分のものにしながら主体性を発揮
○農家の時間、漁民の時間、職人の時間、商人の時間:時間は風土であり、文化であった
○時間の統一こそがグローバリゼーションの基盤になっている
○共同体の一員として生きながら、同時に孤独に生きる自分をみつめるという精神の多層性をもつことができた
○政治的な判断の底には、その社会で暮らしてきた人々の美意識や歴史の記憶が存在する
○現代社会の基本的なかたちは変えてはいけないという合意が成立しているような感じさえ受ける
○自分の精神が何者かに乗っ取られ、ひとつの時代や社会がつくりだす精神の習慣のなかにとりこまれながら、「現代人」という群れのなかにのみ込まれていく:実存主義の哲学
○真理や正義の独り歩きを阻止するものは、文化の深さのほうであろう

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする