Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

勝者のエスプリ             アーセン・ベンゲル(NHK出版)

2005年12月29日 | 本と雑誌

Hitorigaten

名古屋グランパスにも在籍し、イングランドプレミアリーグ、アーセナルを1年で強豪チームに仕立て上げた監督の、日本滞在中におけるサッカー及び比較文化論といえるものか。
サッカー愛好家にとっては、芳醇なワインをゆっくり楽しむような気分にさせられる。

○勝ち取ろうとする理想の高さゆえに、自らの中にコントロールできないほどの不安や疑いを抱え込んでしまうことすらあるのだ。
○監督の役割:選手たちに、自分の可能性を最大限に発揮できるような道を指し示すこと。
○ゲームの楽しさ:自己表現 
   ←→ ゲームの勝敗:厳しさ、効率
○サッカーの面白さ:選手個人の自己表現とチーム全体の表現 → 両者のバランス
○アイデンティティ:チームの存在価値の確認
○哲学:サッカーの捉え方
○選手のクオリティーとチームのオーガニゼーションの違い→より自由に、より豊かに表現してほしい
○集団にとって利益とは何かを考える認識能力に優れていること
○和食の素晴らしさ:バランスの良さ、怪我の少なさ
○現代サッカーの特徴:敏捷性、柔軟性、プレーの連携、足の速さ、技術力
○戦術は、生涯を通じて向上できる数少ないクオリティーであるのは確かだ。
○自分で出した答えの記憶をたよりに向上するといいかえてもいい。
○「どうしたら韓国に勝てるか」ではなく、「どうやって韓国に勝つのがいいのか」
○疑問が生まれてこなければ、誰も答えなど探ろうとはしない。


明治という国家   司馬遼太郎(日本放送出版協会)

2005年12月18日 | 本と雑誌
Hitorigaten

NHKスペシャル、司馬遼太郎トークドキュメント「太郎の国の物語」を改題し、出版されたものという。本棚で埃をかぶっていたものを紐解いてみて、あらためて著者の「明治」に対する深い洞察と恋慕を感じる次第。関連資料に目を通したい気分にさせられる。


○明治・大正・昭和の国民は、世界中の貧乏神を日本列島に呼び集めてともに暮らしているほど貧乏をしたが、外国から借りた金はすべて返した → 19世紀の半ば過ぎという時代において、古ぼけた文明の中から出て近代国家をつくろうとしたのは日本だけだった
○幕府というのは、シツケ糸一本を抜くだけで解体するようにできていた
○長州:権力の操作が上手(官僚機構)
○土佐:野にくだって、自由民権運動
○薩摩:政治や総司令官
○佐賀:着実に物事をやっていく人物(新政府)
○江戸時代の武士道、農民の勤勉さ、大商人の家訓、町民の心学 → プロテスタント
○艦橋で旗のように立つ東郷と頭脳の秋山、各部署で働く人々といった役割分担がうまくいっている→日本人が持つ組織の力学の一つの典型
○思想は酒というべきもの、思想は人を酔わせるものでなければならない
○「資本主義が人類に残した大きな遺産」:自由と合理主義
○内村鑑三:「私は肉体の父として日本武士を所有し、霊魂の父として排日法を布く以前の生粋の米国人を持ちしことを誇りとする」
○「日本及び日本人とは何か」:サムライ、武士道、自立心、名誉、情、公に奉ずる
○明治国家が今の日本人の私物ではない
→ 人類特にモンゴロイド家の遺産として、世界という財団のミュージアムに寄付をしたい、という気分



アメリカにあって日本にないもの ジョン・ヤンガー 尾崎哲夫(自由国民社)

2005年12月09日 | 本と雑誌
Hitorigaten

架空のアメリカ人ジョンと著者との対話集。
第二次大戦後、日本に導入された「民主主義」と、勝ち組アメリカが引き起こしている、破落戸国家との戦いにおける「正義」との「微妙な違い」の根本原因を探ってくれる。


○「私たちの誇りは教育です」:30年前の日本のビジネスマン
○「岩波・朝日・進歩主事」、「人権・憲法・平和主義」
○社会に出ても恥ずかしくないよう振る舞える「自由」とは何かを、自分の経験に基づき子どもに伝える
○目に見えない情報、形のないデザイン、無形だが高価値なもの:充分な敬意、お金、時間を
○「パイオニア精神」と小さな改良と細切れな努力の積み重ね →心の自己規制を解放する
○アメリカの交渉法:①結論から、②解決策を提案、③アグレッシブよりアサーバティブ(率直に)
○モーゼ「人生は十戒だ」、キリスト「人生は愛」、フロイト「人生はリビドーだ」、マルクス「人間社会の根本は経済だ」、アインシュタイン「人生は相対的だ」:みんなユダヤ人
○人間は三種類-家族・使用人・敵
○日本人の性格分析のキーワード:スネル、ヒガム、コダワル、スマナイ、アマエ
○黙って不満を募らせることから、どんどん議論して、その上で解決策を探ること!!
○イェーリング「権利のための闘争」:自分の権利を主張することは、回り回って他人の権利を守る
○「ホンネとタテマエ」:弱者に不利な形で様々な場面で様々な方法で利用される
○何もしないより絶対にベターなのだ。私たちはそのように信じ、その点で一致団結し行動する。



富める貧者の国    佐和隆光+浅田彰(ダイヤモンド社)

2005年12月03日 | 本と雑誌
Hitorigaten
京都に根っこがある賢人の目に映った、日本の繁栄や日本人の内面性に迫った対談集。
幅広い分野から「現代日本」の分析がなされており、拙い知的好奇心は、「ひとりブレーンスト-ミング」状態に陥ってしまった。


○日本という国が豊かのは、日本人が貧しいからだ、という逆説も成り立つように思える。
(仏、社会学者ジャン・ボードリヤール)
○クアラルンプール街の落ち着き→イスラム教
(宗教が自己規律の安全弁)
○80年代初頭:工業製品生産→14億人
(OECD、ソ連、東欧、NIES)
○80年代後半:工業製品生産→45億人
(OECD、ソ連、東欧、NIES+アジア+中南米)
○何か理論的な裏付けがある訳じゃないから、本当に信頼できるかどうか確証は持てないが、とりあえずアクティブに動く用意のある人達が出現
○成長は数字で一目瞭然、成熟は見えない。
○日本人:中空構造→アイデンティティが無い→強い外部との接触により呑み込まれないよう一丸。
○モノが豊富にあることを前提にして、倫理観や世界観を確立。
○利己的遺伝子:生物の進化はただ目的無く起こる→先見性は何もない:リチャードドーモンス
○「弱者との共存」を忘れ「弱肉強食」に戻ってしまうなら、人間は人間であることをやめ、単なる生物になってしまう。
○日本の風土はすごい:これだけ経済成長しておきながら、75%は山と森。
○グローバルパラドックス:グローバル化が進むほど、より小さなユニットの重要性なり役割が増すという逆説。
○議会における議論は、結果を出すためのプロセスに過ぎず、アセスメントや調査費も即ち着工を意味している。
○米国は巨大な政府:公務員割合 米国18%
  (教職員 学校!)、日本6%