Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

日本縮小               朝日新聞社経済部編(朝日新聞)

2005年09月23日 | 本と雑誌
Hitorigaten
「ミネルバの梟は夕暮れに飛び立つ」という諺があり、時代の知的な集約は、その終わり近くになってやっと行われるという意味らしい。
本書のあとがきに記された一節であり、筆者の自信の現れと観てもよいのだろう。
超高齢化賞賛と女性登用、税収不足と年金崩壊についての詳細な分析は今後の参考になる。


独断的要約
○ 日本には、若くて働く意欲もあり教育も受けた女性がたくさんいる。何故使わないのか?
○ 戦後不変の農村集落数も、約5千減少
  (90年から00年の10年間)
○ 既存インフラの老朽化:建設時の台帳のみ
○ 高齢化社会に必要なインフラは何か、誰が、どのように必要性を判断するか?
○ 公的年金制度:年間40兆円を3千万人の受給者に支払っている
○ 今までの政策は低い方の保護が主だった
○ 「高齢者市場」の登場
○ ユニバーサルデザイン:国際競争力強化
○ 個人金融資産:約1,400兆円
  (半分は60歳以上)
○ 「創造性」だけは、若者でないとどうしようもない。このままでは、インドや中国の若者の活躍を指をくわえて見ている国になる。



独創力 糸川秀夫(光文社文庫)

2005年09月21日 | 本と雑誌
Hitorigaten
言わずと知れた、故糸川秀夫博士が著した本の文庫版。組織工学の神髄を、素人に分かり易く説明してくれる。アメリカ合衆国を「平均的能力を持つ凡人集団によってできた国」と喝破し、集団で協議する習慣と知恵を出しあうことの重要性を説いている。まさに膝打ちものである。


独断的要約
○ 世の中でほしがられているものや、世間が必要としている仕事をさがし、その仕事ができるように自分で能力を創り出すという方が成功率は高い。
○ 発想のエクササイズ
 ①「?」:本当ですか
 ②「!」:驚きをつける
 ③「・・・」:言外の意を読みとる
○ パブロ・カザルス(チェリスト):「あなたから一音を学んだ!」(ほめてあげる!)
○ 能力の利息をアップする:自分の得意技を連続できる時間→+α 加える
○ 読書二時間、思考二時間:独創の本質
○ ウェップ・ペインズNASA長官:「昼食時間、食堂は他部署の人と過ごすこと」
○ ランド研究所(USA最大シンクタンク):昼食時のテーマが回覧される
○ 組織工学の要諦:
 ①マイナス要素の人とは組まない
 ②二人からスタート
○ パートナーリユニットシステム:
システム組織の最小単位→情報交換の電話術、情報伝達のタイムコンスタント(1week)



山の学園はワイナリー        川田昇(テレビ朝日)

2005年09月10日 | 本と雑誌
Hitorigaten
 この本の行間からは、絶望の対極にある、「人間賛歌」のハミングが聞こえており、精神的に疲れているとき、是非一読をおすすめする。
 2001年7月の沖縄サミットで総理主催の夕食晩餐会のとき、乾杯に使われたスパークリングワインは、本書で紹介された生徒たちの汗の結晶でもある。


独断的要約
○ やる気があって、散漫にならずに注意を集中させる力があれば、どんな人にでもできることは限りなくある。
○ 鳥に翼のあるごとく、人間に労働あり。(ゲーテ)
○ 痛みや暑さや凍えるような寒さを実感しなければ、子供とのあいだに共感は生まれません。
○ 人間が生きものとして、多すぎず、少なすぎずに喜びを感じて生きていくためにちょうどいいサイクルがある。 → 盆と正月、春祭りと秋祭り
○ 労働はものをつくりだすだけではなく、人の心をつくる役割もはたす。
○ 仕事を自分でつくりだす、あるいは奪ってでもするような仕組みや考え方。
○ 「消えてなくなるものに渾身の力をそそぐ」
○ 厳しい自然の中で耐え、つねに明日はあれをしようと期待をつなぎながら、精いっぱいに生き抜いて、なんのうらみやこだわりも残さず従容として死んでゆく
 → 私たちがこの子たちから教えられるのは、そんな上等な人間の生きざまです。



いま抗暴のときに   辺見庸(毎日新聞社)

2005年09月05日 | 本と雑誌
Hitorigaten
「絶対暴力への不服従」
著者が読者に問い続ける強烈なメッセージ。
激動する国際情勢への対応、否、ぬるま湯に浸りきった我々を鼓舞する魂の言葉。

独断的要約
○ むなしさを底に溜めた冷めた意見のほうが、「愉悦」よりは正確であり、ときに戦闘的になりうる
○ マスコミという意識産業は、情報を消費する人々の意識を収奪し、現体制を維持する意識を誘導する
○ 現代人の眼のなかでは、ちょうど真理が減り幻想が増えるに比例して、神聖さが高まる
○ 技術の進歩は不可逆だが、政治は可逆的なものだ、つまり政治に進歩はない
○ 他民族をさんざ抑圧してきたのに、そうしなかったふりをする民族は自由ではあり得ない
○ 自分の中に手を伸ばし、考える力を見つけなければならない、そして戦う力を
○ 資本主義は本源的蓄積の段階を終えると、「非物質的搾取」つまり人々の意識の収奪に入るといいます
○ 「消費者」という「超階級」的概念が強力に導入された
○ 運動の最小単位に回帰して、運動の最大の波を夢想する
○ 群体としての人間がこしらえるこうした人倫の(無意識の)中間領域こそがいわゆる善意を育て、国家の肥大化を見すごし、結局戦争を許すことになる