Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

能よ古典よ   林望(檜書店)

2009年05月25日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 町の若い衆であった父が、「詠」や「能」を嗜んでいたこともあり、我が家で時折流れていた生あるいはラジオ等からの音声に、奇妙奇天烈な感情を抱いていた憶えがある。
 幾星霜が過ぎ、偶然に出会す雅楽や能、さらには年代の宿命により必然的に耳にする読経や声明等に、何故か癒される今日この頃である。
 そんな気持ちの辻褄を合わせてくれた一冊であり、続編を心待ちしているひとりである・・

○「仮名序」:紀貫之(古今和歌集)
○力も入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ、男女のなかをもやはらげ、たけき武士の心をもなぐさむるは歌なり
○中国「詩経」:大序、風、賦、比、興、雅、頌(六義) →「そもそも歌の様六つなり」:そへ歌、かぞえ歌、なずらへ歌、たとえ歌、ただごと歌、いはえ歌
○私どもの祖先のなかには、阿倍仲麻呂のように、当時の大世界帝国の唐王朝に留学してそのまま王朝に任官し、ついには大臣に相当する様な高位に登ってかの玄宗皇帝の厚い信任を得たというような素晴らしい人材がいたことを知って欲しい
○つまり能を見ることは一種の学習でもあったわけである。そこではこの空想説が一つの現実史実としての重みを持ち始める
○能のめでたさは、最小限の所作と最小限の道具立てとそして最小限のことばで、人の世の栄枯盛衰、人の心の喜怒哀楽、そしてあらゆる美景や風情をまですべて舞台の上に具現しようとするところにある
○神様というものは、本質的には清浄なもので、特に日本の神は極度に汚れを嫌う。そういう神にして、わざわざこの汚れた俗世に出現なさるのは、敢えて汚れた世に留まって罪深い衆生を救済してくださる為だとこう説くのである。そういう思念を「和光同塵」という

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私の戦後60年  不破哲三(新潮社)

2009年05月17日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 元日本共産党中央委員会議長が語る自由・平和に対する願いからは、反米・反自民という「コミュニスト」の概念を一掃させるほどの新鮮さが感じられた。
 海外の要人や国会内における他党の面々との丁々発止の議論等に現れる洞察力の鋭さと暖かな人間臭さは、この人だからこそ為せる業なのか・・・

○1951.9.8 サンフランシスコ平和条約、日米安保条約 ①徹底した秘密交渉、②戒厳令的な言論行動の自由をしばる、③スピード審議(10/10臨時国会召集、10/26衆議院通過、11/18参議院通過)、
○赤城宗徳元防衛庁長官:長官の職を賭しても、自衛隊を出動させなかった
○1964.11 佐藤内閣発足 →1965.1 訪米  →1966.2 北爆開始 →1966.5 北爆支援
○田中角栄:今度は選挙のやり方を共産党に教わらなきゃあならんな(1971大阪府知事選)
○日本列島改造論(1972.6)の正体:
 ①経済成長推定 73兆円('70)→304兆円('85)
 ②生産・需要・輸送量拡大 66兆円→273兆円
 ③公共事業の必要規模 高速道路1万Km等
○中曽根康弘:いま不破さんが提起したところに今度の沖縄返還問題の核心がある(沖縄国会)
○国内米軍基31200ha →返還後の見取り図を
○第二次臨時行政調査会(土光臨調1981.3):財界・大企業の名誉回復
○1985プラザ合意:日本の金利は米国に比べいつも3%の差をつけてくれ
○1990 日米構造障壁 430兆円公共事業投資
○1998 5全総:630兆円投資約束
○憲法論議の中心点:2005.4最終報告20項目9条関連-①第9条第2項の改正の要否、②集団的自衛権を認めることの是非、③自衛隊の憲法上の明記、④国際貢献の憲法上の明記
○日本社会の三つの異常さ:①過去の侵略戦争の名誉回復をはかる異常さ、②もっぱら「米国の窓」から世界を見る異常さ、③ルールなき資本主義の国という異常さ

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文学部唯野教授の女性問題  筒井康隆(中央公論社)

2009年05月05日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 ショートSFの名手として一世を風靡し、デジタル機材の先駆的実験者としての顔を持ち、断筆宣言や最近では着流しのコメンテ-ターとして勇名を馳せている筒井康隆氏。
 相変わらず目を引く表題ではあるものの、薄っぺらなマルチタレントではない、「哲学者」としての一面を垣間見る思いの一冊でもある

○セクハラ相談:相手の男性の弱点-①家族、②上役、③仕事、④金、⑤病気または身体的欠陥、⑥その他
○ヘーゲル:どのような職業にもつねに運命とか外的な必然性とかあるので、個人的な目的では遂行できない-実践的教養
○ハイデガー:「死」はいつくるかわからないからこそ「死」-「先駆的了解」
○マクドウガル:本能-刺激が与えられ、それに情緒的な興奮を感じて起こす行動
○男性はことば遊びで笑い、女性は他人の失敗談で笑う →男の会話は駄洒落の応酬、女性の会話が他人の悪口
○「デジタル・ナルシス」西垣通(岩波書店):情報機器は第三の性 →人間の欲望に深くかかわりあいながら思考=神経系の働きを代行する
○アリストテレス「自然学」:全ての実体は「形相」と「質料」を持っている
・自然の実体:「感覚できるもの」-常に運動 →「転化」  可動態 → 現実態
・超自然の実体:「不動のもの」
・第1の不動の実体 →「他から動かされないで他を動かす」 →「神」
・実体 →運動  始動因、質料因、形相因、目的因
・「運動」と「時間」は永遠のもの → 生成も消滅もない
○「過去」-「今」-「未来」

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