Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

土偶を読む   竹倉史人(晶文社)

2022年04月30日 | 
Hitorigaten

 ラジオから流れてきた筆者の言葉、「土偶は縄文人の造ったフィギュアで、遮光器土偶のモチーフはサトイモ…」に心引かれ、早速本屋に飛び込み入手した…
 久しぶりに読んだ、痛快無比、文字を追うスピードを歯がゆく感じたモノである。
 若き研究者の実践力と歴史に関わる思考の新た地平線を示してくれた渾身の一冊。


○土偶にはどうやら二つの大きな謎があることを私は認識した。一つは「土偶は何をかたどっているのか」というモチーフの問題。そしてもう一つが「土偶はどのように使用されたのか」という用途の問題
○半ば冗談めかして始まった「縄文脳インストール作戦」ではあったが、このプロジェクトは想像以上の力を発揮し、停滞していた私の土偶研究に一気にブレークスルーをもたらすことになった
○ハート形土偶(群馬県吾妻郡東吾妻町郷原出土):オニグルミ
○みみずく土偶(千葉県市原市祇園原貝塚出土):造形的に高コストな部分にこそ多くの情報量が隠されている
○遮光器土偶(青森県亀ヶ岡遺跡出土):サトイモの精霊像でありその紡錘形に膨らんだ四肢はサトイモをかたどっていた
○すなわち呪術とは生活から遊離した抽象的な営みではなく、むしろ現実の生活上の諸行為に意味を生成させ心理的な安寧をもたらすとともにその円滑な遂行を可能にする優れてプラグマティックな実践的行為の技法なのである
○新しい時代へ向けて社会に変化が生まれつつある一方、官僚化したアカデミニズムによる「知性の矮小化」はいまだ進行中ではないかと私は感じている
○土偶を生み出した縄文人たちが数々の自然災害や気象変動を生き抜いてきたことを思えば、それは”滅びの道”を回避する実践的な知恵の象徴でもある
○「日本5000年の歴史」といった新たな歴史感覚も生まれてくるかもしれない-この美しい森や海への愛と、そこに力強く生きた先祖たちへの尊敬の念によって語られる新しい悠久の物語である
コメント
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