Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

「序破急」という美学              丹波 明(音楽之友社)

2007年09月23日 | 本と雑誌

Hitorigaten

 

 日本民族の身体に流れる「調子」、「リズム」は「風の音」や「水の流れ」、「大地の震え」や「四季折々の自然の移ろい」をDNAに取り込み、育まれてきたものであろう。年齢を重ねるにつれて、どうしても、「雅楽」や「歌舞伎」、「地唄・長唄」へ耳を傾けてしまう「運命」なのだろうか

 

○アンリ・アトラン(仏・生物学者):創造とは、既知のものが未知のものと遭遇した時行われる
○「序破急」
 ①奈良時代(8世紀頃):舞楽の三部構成を示  す言葉 →唐宮廷文化の雅楽とともに輸入
 ②平安時代(10世紀前後):御神楽、声明、  管弦の楽曲構成
 ③鎌倉時代(12~13世紀):蹴鞠、連歌の理  論化
 ④室町時代(15世紀):世阿弥-能の完成・  統一
  ⑤江戸時代(17世紀):人形浄瑠璃、歌舞伎、  笙唄、地唄、長唄、剣道(新陰流)、弓道、  香道、生花
○世阿弥:「一に能の種を知る事、二に能を作る事、三に能を書く事也。本説種をよくよく案得して、序破急の三体を五段に作りなして、さて詞を進めて(ふし)を付けて書き連ねるなり」
○丸山真男:持続する三つの日本古代の基底意識-「成る」、「次ぎ次ぎ」、「勢い」
○「序破急」:あるものを完成の域に達せしめる「過程」としての「道」と考えた
○「自然になりゆく力」:①「産巣日(むすび)」日本書紀、②「自然法爾(じねんほうに)」親鸞、③「直毘の霊(なおびのみたま)」本居宣長
○フェシュナーの法則:S=K×Log2×R×R


永遠なれ、日本               中曽根康弘 石原慎太郎(PHP)

2007年09月16日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 超タカ派の両巨頭が語る「日本への熱き想ひ」は、「哲学のすすめ」へと昇華され耳障りはよいのだが、行間に軍靴の足音が聞こえぬか・・
 ゴムの伸びきったパンツのような、プリンス内閣には、2001年に発刊された本書は、届かなかった「処方箋」なのだろう

○CIA・NIC:日本の中期分析・展望-15年後、EU、アメリカと比肩する三極でない →次世代のタックス・ペイヤーを獲得しきれなかった
○法華経「十如是」:すべて九の要因から物事がなっており、要因のからみ合わせ
○ユング:科学に対する現代人の疑問
○ハイゼンベルク:不確定性原理を提唱
○はっきりとした理念がなければ、本当の言葉を持てないし、本当の政治家たりえない
○大東亜戦争の突入:11月26日 ハルノート(中国・仏印からの全面撤退、三国同盟破棄)
○明治憲法:統帥権の独立-軍事と政治の二元的要素(軍の作戦用兵に関することは陸軍参謀本部長、海軍軍令部長の所掌) →伊藤博文、山県有朋元老-人間の権威で消化させ、対立させなかった
○集団的自衛権の行使 ≠個別的自衛権行使
○外交4原則(中曽根内閣):①自分の力以上のことをやるな、②ギャンブリングで外交をするな、③内政と外交を混同して利用し合うな、④世界の正統的潮流に乗れ
○手の内を見せるマイナスよりも世界的にインパクトを与えるプラスの方が大きい →「私が責任を持つからやれ」
○小泉首相への期待:①密室政治の一掃、②文明病の一掃、③二十一世紀への展開力
○「垂直倫理」:時代や世代を超えて生き続ける、人間の本性に則った絶対的な価値観
○われわれは、いま地球という存在を認識する最後の認識者として存在している。存在をおびやかしているさまざまな環境問題の解決のためには、人間が哲学すること →「存在」と「時間」について本気で考えないといけない
○哲学こそが、人間のために最も規制力のある社会工学的な方法の政治にいま絶対に必要なものです


新日本共産党宣言     不破哲三・井上ひさし(光文社)

2007年09月09日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 8年前「スマイリングコミュニスト」を標榜し、国民の支持拡大を目指した日本共産党の「マニフェスト」か。
 的確な「分析」と「批判」は筋金入りであるので、今後は、次の一手の「実現性」と「期待感」は、さらに膨らんでくるのだろうか

○ロベルト・ミヘルス(伊):あらゆる組織は効率的運営の必要から少数支配へ進む傾向がある、民主主義を唱える政党でさえ
○歴史的巨悪:スターリンの独裁制、侵略主義と干渉主義、国民を抑圧
○明治憲法-プロイセン・ドイツ型 外見的立憲主義
○日本国憲法-イギリス型 君主の地位を限定
○近代主権主義:イギリスの憲法的法律)
(1215 マグナカルタ、1653 クロムウェル統治典、1689 権利章典)
○GNP、GDO:ソ連計画経済の考え方
○憲法五原則:国民主権と国家主権、恒久平和、基本的人権、議会制民主主義、地方自治
○マルクス:一人ひとりの自由は発展が、全ての人の自由な発展条件であるような共同社会
○日米安保条約:海兵隊と空母基地 →海外出撃専門部隊の基地を提供
○20カ国非同盟諸国首脳会議(アジア):日本、韓国以外出席
○アリストテレス:アジア人はヨーロッパ人に比べ、性格が一層奴隷的であるため専制支配も不満でない
○戦争にも積極的中立という第三の道がある
○トーマスホッブス:人は人に対して狼
○盛田昭夫:①長時間労働、②企業内分配率、③株主への低配当、④下請けとの関係、⑤地域社会、⑥環境問題
○米作りプロ:@750円/h、67Kg/年/人→39,000円/年  →@107円/日
○水田300万ha →黒四ダム330杯分→68,000円/ha相当 →水田は公共財
○りっぱな未来泥棒
○外交と安全保障はアメリカ、内政は財界まかせ


ユビキタスとは何か           坂村 健(岩波新書)

2007年09月06日 | 本と雑誌
Hitorigaten

 トロン提唱者が「人間とコンピュータの未来図」を、平明に解説するユビキタス・コンピューティング入門書か。
 技術に対する許容範囲は、民族の精神構造に由来し、ここでも「一神教」と「八百万の神々」の違いが鮮明に現れたような気がする

○チップに全ての情報を入れるのではなく、情報はネットワークにつながった情報提供用のコンピュータ、いわばサーバの中にあるという考え方 →ネットワーク外部化
○個々人の多様性を犠牲にせず、社会を効率化できる可能性を持った初めての技術
○ユビキタス・コンピューティングがやろうとしていることは、この現実世界と仮想世界のズレを自動的になくす、究極的にはそういうこと → 現実の世界のコンピュータによる完全認識
○国はインフラの確立を行い、情報の書込を許し、後は多くの個人の参加を期待する
○人間が環境を読みとり、必要なことがあった時に人間の方から環境にメッセージを出す
○uID-アーキテクチャ:見分けることに意味のあるものすべてに1意の個体識別子としてuコード付与
○MOT(マネジメント・オブ・テクノロジー):何のための技術か、その目的のためにどう技術を使うか
○デマンドバス(イエテボリ):高齢者・障碍者の「利用のしやすさ」- 乗降時にアクセスしやすい配置 ←→ 日本のバスの料金ボックス:世界最高性能
○シュンペーター(オーストリア経済学者):イノベーション ≠技術革新 → 新たな差を生む何か
○技術がどんな新しい状況を生んでも、従来の制度を変えないでそのまま進みたい力 
 → 制度それ自体自己目的化する:「制度の慣性力」
○「パルミサーノ・レポート」:イノベート・アメリカ →「人材整備」、「リソース整備」、「インフラ整備」
○複雑なシステム:ギャランティ型からベスト・エフォート型へ
○単なる技術開発は、「入れる食品のない冷蔵庫」と同じである