Linkman#41  乱読の後始末

-乱読、精読、積読-

書籍に触発されて「思考と空想」は、知の荒野を駆け巡るのか…

青空哲学        水上勉・玉村豊男(岩波書店)

2006年01月24日 | 本と雑誌

Hitorigaten

大病を患い、幾度となく生死を彷徨った二人が、時を同じくして探り当てた「信州」で、来し方行く末を語り合った対談集。
日本農業、文明に対する警鐘と観てよいだろうか。

○日本的大和の風景:田んぼがあって、鎮守の杜に竹林があって柿の木がある
○軽井沢:カナダ人、英国人とかが来ると「これは日本じゃあない」 → 本国を思い出す
○カッコーが鳴くと霜は降りない:強い警戒心
○死んでから作物ができると迷惑をかけるんで、なるべく早く育つ蕎麦をつくる
○今端末をいじっていて感じることは、ソフトもハードも日本にはインストラクターが不足
○開発した人は年取ってしまって、故障すると微妙な原因がわからない
○「直耕」(じきこう)、「活真」(かつじん)
○いろりには生活の根源があって、活真の大道がひらけるという気がする
○「つながる」:つながってこそSOHO
○日々の営みに常に情報というものは生起してくるものだから、本来はみんなが自分の情報の生産者である。また、受容者でもある、イーブンに両方であるわけなんです
○芸行(うんこう):土と直に取引
  → 自分と土以外のものは介在しない
○農地はもともとお金がある人は日当たりのいい農地を持っている。そうじゃない人は、もう日当たりの悪いところしか持てないという一種の宿命論じゃないですか


ローテクの最先端           赤池学(ウェッジ)

2006年01月16日 | 本と雑誌

Hitorigaten

町工場の多い東京都大森地区出身である筆者が、モノづくりの現場の現状と課題、来し方行く末について、徹底的にルポルタージュした好著。「ものづくり」や「匠」に対するあついメッセージが鏤められており、日本人のすすむ方向を示唆しているようである。

○製品の提供を通じ、利用者が受け取る機能の価値を増大させなければならない。
○利用者の要求機能にリアルだあることであり、実現機能との距離を様々なサービスを縮め、両者が合致する度合いを高めること。
 → 新たな製造技術の高度化を図り続けよ。
○「コストとスピード」+「パテント」+「フォーマット」競争(三軸)
○現場の技術者、技能者が保有する手技や頭脳技能の分析、継承にサイエンスの目を入れ、可能な者はデジタル転換を図り、計算化、理論化、機械化できない技能は、匠の技として真摯に伝承する。
○日本人としてのミッション:良質な日本人技術者が持っていた。
○アグリ立国日本の創造:栽培技術、品種改良 → 植物の機能性を制御するノウハウ
○エネルギー技術の高度化:分散型エネルギー社会
○医療機器、器具のスタンダード創出
○ボーイング社:”working together”、
”have a fun”
○「カスタムサティスファクション」 →「ヒューマンサティスファクション」
○熟練エンジニアの長年の勘:担当者が各分野のエキスパート → 可能性の追求
○ICM(Intelectual Capital Management)の考え方
→ 第三世界の持続的発展


世界はワシらを待っている    冨山善夫(風媒社)

2006年01月08日 | 本と雑誌

Hitorigaten

JICA(国際協力事業団)初の“シニア”ボランティアとして赴任した、パラグアイでの悪戦苦闘を描いた体験記。学生時代に海外協力隊にあこがれ、五十代でシニアに恋する者には、禁断の媚薬か?

○日本語よりいいなあと思う言葉:「イホ、イハ(女性形)」等の呼びかけの語彙 
 → 「息子、娘」というスペイン語
 → 知らない相手に気軽に呼びかける語彙
○日本はどこにあるのだろうか?
 → 日本は私の中にあった
○「隠された罠にはまったシニア」抜粋
 ①現地で金銭感覚がおかしくなって、ギャンブル・異性等に浪費して金がなくなってしまう。挙げ句の果てには、公金に手を付けそうになる。
 ②ボランティアといっても金が貰えないわけではない。金はいくらでもほしいと非常にケチになって、皆に嫌われてしまう。
 ③JICAの看板が気持ち良い。先生などと呼ばれ偉くなった気になって、日本ではろくに相手にされもしなかったが、急にここで威張り出す。
 ④日本ではいい大学を出て管理職で偉かったんだ。それが分かるか?俺の言う事を聞けない奴は、お前の上司に告げ口するぞ。
 ⑤シニアの仲間意識はまったくありません。シニアになったのは、たまたま希望がかなえられただけで、私は自分のことだけで精一杯です。
 ⑥またJICAの車で事故を起こしてしまった。これで三度目だ。しかしまだ人身事故はないので、まあいいか。


吏道随感     童門冬二(ぎょうせい)

2006年01月01日 | 本と雑誌

Hitorigaten

美濃部知事時代、秘書、公報室長、企画調整局長、政策室長を歴任した、いわゆる吏員の王道を歩んだ筆者の自己反省の裏返しか。
内部を熟知した先輩が後輩に送る叱咤激励は、暖かくもあり、辛辣である。

○まちづくり:①死ぬまでそこに住みたい、②子孫もずっと住まわせたい、③ここにいらっしゃいよ
○「自治体行政は文明」:ロマンとドラマ
 → 創意と工夫は無限に可能
○地方自治体の職員は、地域活性剤になるための水先案内人である
 → 本当の行政の文化化、燃える公務員
○堂々たる自己証明 → 職員一人ひとりの自己白書、住民へのリポート
○行政プロフェショナルの必要性:自分たちに無い知識、技術
○対話とは、異質の者が解決点を求めてかわす、言葉による闘いである
○その給与に見合うように、全職員がチャンと仕事をしているか
○普段の自己啓発:緊張と感動の心を失わないこと → 知的飢えを常に持つ
○「組織を動かすのは、人である」
  ≠ 「とかくメダカは群れたがる」
○住民の信頼を得る作業:①自治体の存在意義の主張、②民族資本(自治体職員)の活用
○オピニオンリーダーたちの気概:タテマエ話を排する → つねに本音を主張
○本当の行政改革:古木を倒し、若木を育てる
○「複眼の発想」:簡単なことに気づくこと
○役人ばなれしている:①発想のユニークさ、②発想を実現する方法の新鮮さ
○「おれは、てめえの傷の痛さがわかるから、他人の傷の痛みもわかるんだ」
○「お前の敵は、お前だ」