日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

八百長相撲を文科省に垂れこんだ警察当局の正義とは  追記あり

2011-02-03 23:38:37 | 放言
相撲に八百長がつきものという思い込みは、昔から多くの日本人にあるのではなかろうか。少なくとも私はそうである。五分の星で千秋楽を迎えた力士が勝ち越すと、それも角番大関だととくに、何かやり取りがあったのではと勝手に勘ぐってしまうのである。それも大相撲の楽しみ方の一つで、力士仲間の互助精神と受け取ればそれだけのことなのである。八百長をより芸術的にやってくれれば娯楽としては上々なのである。私は悪役アメリカ人プロレスラーを徹底的にやっつけた力道山にしびれてしまったプロレス世代でもあるので、八百長で盛り上がるのを単純に否定する気にはならないのである。

そうかと言ってすべての力士が八百長に参加しているとは私は思わない。物事には100%確かと言うことはあり得ないから、八百長をする力士がいる反面、絶対に八百長はしないだろうな、いや、してほしくないと思う力士も大勢いるのである。白鵬はもちろんその後者である。八百長があってこそこれまで続いてきた大相撲であるから、われわれが長年観戦した大相撲で八百長が皆無という場所は皆無であったと言ってよかろう。そういう大相撲を楽しむ人は楽しんで来たのである。極論かも知れないが大相撲に八百長はすでに文化として定着していると考える方が素直であろう。なぜそれを素直に認めないのだろう。

大相撲についてはこれまでも私なりの考えを次のブログで述べてきたが、私は大相撲が日本独特の格闘技であるとは思うものの、本質は興行であってその意味ではプロレスととくに変わるものでもなし、娯楽の一種であると思っている。もともと大相撲を「国技」と言うのはいろんな思惑がらみの僭称にすぎず、その経緯を二番目のブログで紹介した。その目で見ると「国技」と言うのは呪文なのである。そう思ってみると今回の警察当局のやりかたが少々腑に落ちない。

日本相撲協会を「相撲特区」にすべし
相撲は国技にあらず?
朝青龍問題 日本相撲協会は『皇民化教育』を廃すべし

この問題が浮かび上がった経緯をasahi.comは次のように伝える。

 大相撲の野球賭博事件の捜査で警視庁が力士らの携帯電話のメールを調べる中で、相撲の取組で八百長が行われていたことをうかがわせる内容のメールが見つかっていたことがわかった。昨年の3月場所と5月場所の取組で八百長が行われたとみられる内容で、勝ち星を数十万円で売買していたととれるメールも含まれているという。

 警察当局は、日本相撲協会の監督官庁の文部科学省に連絡。文科省は2日、協会に対し外部の有識者でつくる協会内の委員会で調査し、結果を報告するよう求めた。協会は同日午後、東京・両国の国技館で緊急理事会を開き、対応の協議を始めた。(中略)

 八百長自体は犯罪に当たらず、刑事事件として立件される可能性は低いとみられる。
(2011年2月2日15時0分)

消したはずの携帯電話メールが復元されて、これまで裁判でも無いことになっていた八百長相撲の実態が明らかになったこと自体は、そこまで解析技術が進んでいるのかという意味では面白い。しかし具体的な証拠が挙がらないからこそ皆があると思い込んで、それなりに楽しんでいた八百長にこんな証拠を突きつけられるのは、知りたくないことを無理に知らされるようなものである。裁判では八百長が無いことになったのだからそのままにしておけばよいものを、私に言わせると今回の警察当局のやったことは、サンタクロースの正体がお父さんお母さんであると無理に子どもに吹き込んだようなものである。

報道では八百長自体は犯罪にあたらずとのことである。犯罪行為でないのに職務上知り得た情報を警察当局は一体どのような判断に基づいて文科省に通報したのだろう。警察庁の安藤隆春長官は3日の記者会見で、八百長疑惑を文部科学省に情報提供したことについて「公益性が高い事項と判断した」と述べている。しかし世の中には知らなくて良いことが沢山あると信じている私のような人間には、まったく要らざるお節介というものである。他にもやり方があっただろうに、直接文科省へとはどうもやりかたが薄汚い。

これからしばらくヒステリックな人々の動きが見られそうである。人間観察を楽しむこととしよう。


追記(2月4日)

《五分の星で千秋楽を迎えた力士が勝ち越すと、それも角番大関だととくに、何かやり取りがあったのではと勝手に勘ぐってしまうのである》と述べたことに関連して、次のような記事が現れた。

7勝7敗なら千秋楽の勝率75% 八百長、統計で証明?

 角界を揺るがす八百長疑惑。日本相撲協会の放駒理事長は2日の会見で「過去には一切なかった」と述べたが、11年間の星取表を調べ上げ、八百長の存在を統計的に示した2002年の学術論文が改めて注目を集めている。

 米シカゴ大のスティーブン・レビット教授(経済学)らは1989年から2000年までの十両以上の取組3万2千回以上を調べた。7勝7敗で迎えた力士の千秋楽での勝率は75%にもなった。

 勝ち越しをかけた一番で勝率が上がるのは八百長ではなく、力士が必死になるからという説明もあり得るが、同じ相手と次の場所以降で対戦したときの勝率は4割程度に下がっていた。

 教授らは、わざと負けることで借りを返したと分析。ただ、統計的には返し切れたとは言えず、残る分は金銭で埋めたのでは、とした。 (中略)

 今回、八百長の存在が明らかになったことについて、教授は2日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に「驚いた、とは言えない」とコメントした。
(asahi.com 2011年2月4日14時6分)



最新の画像もっと見る