日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「原爆を投下するまで日本を降伏させるな」の読み方

2005-06-24 17:45:13 | 読書
この本の「はじめ」に著者の鳥居民氏はこう記している。

《アメリカ大統領ハリー・トルーマンと国務長官ジェームズ・バーンズの二人は、原爆の威力を実証するために手持ちの二発の原爆を日本の二つの都市に投下し終えるまで日本を降伏させなかった。これがこの本で考究する主題である。》
《ルーズベルトが急死して、トルーマンが新大統領となり、国務長官のバーンズが彼の新たな協力者となって、日本の二つの都市に二発の原爆を投下するまでの四ヶ月足らずのあいだ、この二人の間の論議はなにひとつ明らかにされることなく、二人が決めたことはなにも文字として残されていない。》

となると、この主題にどのように迫ればいいのか。鳥居氏は『豊かな想像力』と『説得力』をその武器とする。そして《そこで私の主張のある部分は推測を繋げることにならざるをえない。》と「まえがき」を続ける。

ルーズベルトの急死がトルーマンとバーンズに残した恐ろしい遺産が原子爆弾である。原子爆弾そのものが秘密であるのに加えて、『原爆公開』の方法が二人が共有する秘密であった、と著者は説く。

既に原子爆弾の製造に巨額の資金が投じられていて、いずれは議会にその正当性を示さないといけない。「一発で一都市全部を吹き飛ばす」ほどの威力を事実で示せば説明は要らなくなる。さらに戦後。スターリン支配の拡大阻止をはかるにはソ連の指導者を怖がらせ威嚇するに原子爆弾は格好の手段となる。

トルーマンには個人的な動機もある。ミズーリの田舎町の雑貨屋、エール大学の出身でもなかればハーバード大学の卒業生ではない。小物と映っている大統領であった。原子爆弾をしっかりと握り、ソ連の指導者を震え上がらせることが出来たら、もう誰にも後ろ指をさされることはなくなる。

二人にとって日本への原子爆弾の投下が至上の課題となる。

ソ連が早々と日本に戦端を開きその降伏を早めて、原子爆弾の効果を示す機会が失われると大事である。それに日本の戦後処理に大きな顔をしてこられても困る。原子爆弾の完成、日本への降伏勧告、ソ連参戦と原子爆弾投下、これらばタイミング良く練り上げられた筋書き通り進行しなくてはならない。

その筋書きの存在を読者に納得させるのが著者鳥居氏の技量である。
そして、とどのつまりそこまで話は進むのであるが、私には少々読みづらかった。
一つは鳥居氏が広範な資料の渉猟で『物知り』であることがその原因になっている。あれやこれや多くの知識があるが故に、自分の主張との『辻褄合わせ』を律儀に行おうとしている。それが一般読者を自認する私には煩雑すぎるのである。

記述方法にも問題がある。何遍も何遍も前の話に遡るのである。論考する立場ではそれでよいのだが、『読み物』を読むつもりでいるものにとっては、そこまで生真面目ににならなくても、という気になる。

「断章 六月二十六日、チューリッヒのグルー」はとても素直に読めた。というよりそこで紹介されるいくつかの挿話に感動を覚えた。2・26事件で殺害された斉藤実子爵の葬儀の場面などがそうである。ところが実はこの章は著者の隠し味なのである。ここではこれ以上触れるのを控える。

それで思ったのだが、もしこのテーマで私のお気に入りダン・ブラウン氏がフィクションとして書き下ろしたとしたら、グイグイ物語に引き込まれたことであろう、と。

主題から外れるので最後に述べるが、前章に記された大戦末期の中国大陸における日本軍「一号作戦」の解説は出色である。戦後の世界大局にも影響を与えたと言われる作戦にまったく無知の私は蒙を啓かれた思いがした。

そうして本当の最後。この本は一気に読むことをお薦めする。間を置くと頭が混乱して放り出したくなる。


書評欄にQRコードを

2005-06-24 11:47:51 | 読書
新聞・雑誌で書評を見るのは楽しい。

毎週日曜日の朝刊で真っ先に開くのが書評のページ、既に読み終えた本の書評が結構目立つが、それでも書評を読んで手を出す本が2、3冊は必ずある。

書名、著者名などをメモすればそれまでなのだが、なんとか楽はできないかと考える。
携帯で必要な箇所を撮影しようとしても、文字の配置がピッタリとフレームになかなか合ってくれないし、また携帯画面でも文字を読み取りにくい。

そこで提案だが、書評に取り上げられた本それぞれの必要データをQRコードで表示して貰えないものだろうか。極めて手軽にデータを持ち歩ける。また本の裏表紙にも同様のQRコードを表示していただくと、今すぐには手を出さないが考慮中ということでメモ代わりに携帯に保存できる。ぜひ出版各社に取り上げていただきたいものである。

一方テキストデータなどをQRコード化するフリーソフトが沢山出回っている。いろいろな活用法が考えられるが、今私が読んでいる本のデータを上のQRコードで表示した。ブログの予告としてご覧ください。