日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

潰れない『日本たばこ会社』の怪?

2005-06-07 12:39:06 | Weblog
煙草の話が続く。

『日本たばこ会社』とは日本で煙草を製造・販売している会社を私が勝手にこう呼んでいるのである。私がヘビー・スモーカーであったころは『専売公社』といっていた。その後身のことであるが私は現在の正しい名称も知らないし、煙草一箱の値段すら知らない。中島敦の「山月記」に弓の呼び名すら思い出せなくなった弓の名人の極まった姿が描かれているが、その伝でいくと私は既に『脱喫煙』の名人の域に迫っている。どうかこの曖昧な呼称をお認めいただきたい。

私は前回のブログで「喫煙はとどのつまり嗜好の問題だから、私が嫌な思いをさせられない限り、煙草をおやめなさいなんて他人にお節介する気は毛頭無い」と記した。これは『ご隠居』だから云えることで、実は現役の頃は健康上の観点から『喫煙の害』を説いていた。

国民の健康的な生活を支えるために将来中心的な役割を果たす人材を養成するのが私の役割の一つであった。そこで学生に煙草の健康に及ぼす害を力説すると同時に、実験によって煙草のけむりに含まれる『呼吸毒』の存在を実感して貰おうとプランを立てた。そのためには実験材料として『煙草のけむり』が必要になる。そこで講義の意図とは矛盾するようであるが、喫煙者の学生に協力を求めた。自分の煙草に火をつけて煙を口中にいったん含み、ガラス細管を口に咥えてもう一方の先端を検査液の入っている試験管に突っ込んで煙を吐き出し、液をぶくぶく泡立たせて貰うのである。

100人ほどの学生を数班に分けてグループごとに実験をさせる。最初の頃は各グループに必ず喫煙者がいたので実験には支障がなかった。煙草の銘柄で比較することも出来たし、海外で買ってきた得体の知れない煙草を提供する学生もいた。この実験を始めるにあたって私は10年も持てばいいなと考えた。学生に喫煙の害を説きながら喫煙学生から実験材料を提供して貰うのは首尾一貫しない行為だからである。

何年か続けていると材料提供者の減少傾向が顕著になった。『煙草の害』を認識した学生が増えてきたのは確実である。なかには害を説きながら材料の提供を迫る教師に反発した学生も当然いただろうし、実際は喫煙していても教師にわざわざそれを知らせるのにためらいを覚えた学生もいたであろう。しかし現実問題として提供者が激減したので遂に実験を止めざるを得なくなった。ある意味では教育の成果があがったとも云える。10年はかからなかった。

先日高校のクラス会で20人近くが温泉宿に同宿した。アイウエオ順に部屋割りをして喫煙者が適当に分散したものだから、煙草のみは同室の非喫煙者に気兼ねして、外まで吸いにいくとか苦労したようである。しかし喫煙者は減って四分の一以下であった。当然と言えば当然だが私の歌仲間の五人組に喫煙者は一人もいない。

確かに世間に喫煙者は減ってきているようだし、また喫煙者も肩身狭く感じる機会も増えてきたことであろうと思う。となると話が最初に戻って『日本たばこ会社』の経営状態も厳しくなっているのではと推測するが、未だに倒産のうわさは伝わってこない。それどころか話によるとそれほど煙草の販売量は減っていないとか、となると一人あたりの消費量が増えたのか、それとも公にしかねる喫煙者が増えてきたのか。そう、未成年者の喫煙である。

今や煙草の自販機が幅をきかせている。『不良少年・少女』にとってみればいとも容易に煙草を買える。私の常識で云えば『日本たばこ会社』がその実態を把握していないとは思えない。その実態を承知の上、目に見えるかたちで未成年者の喫煙者を減少させる手だてを講じていないとなると、これは明らかに法律上『犯罪』に手を貸していることになる。ひょっとしたら近い将来、『日本たばこ会社』のお偉方がまたテレビで揃って頭を下げる光景が見られるのではなかろうか。