日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

喫煙率は減少しているものの喫煙人口は増加

2005-06-10 16:42:32 | Weblog
6月8日のブログに引用したJT全国喫煙率調査からの「性別・年代別喫煙率の推移」を再掲する。



ドラマチックなのは成人男性の平均喫煙率が昭和41(1966)年の84%から平成14(2002)年の49%へと大幅に減少していることである。これに反して成人女性の平均喫煙率はこの36年間ほとんど変化していない。一方紙巻き煙草の販売本数が一定レベルを保持していることから、この間の未成年者の喫煙率の増加の可能性が極めて高いのでは、と私は推測した。しかし『成人男性の平均喫煙率』が大きく減少しているにも拘わらず『煙草の販売本数』がほぼ一定のレベルであることがどうもしっくりしないので、『喫煙率』という二つの変数で表されるデータ(喫煙率=喫煙人口/総人口)ではなく『喫煙人口』そのもので『喫煙事情』を眺めてみた。すると、『喫煙率』だけでは分からない注目すべき事実が浮かび上がった。世間には既知のことであるのかも知れないが、私にとっては新しい発見であったのでそれを報告する。

昭和40(1966)年と平成14(2002)年における成人喫煙男子数と成人喫煙女子数を求めるために、人口に関するデータは総務省統計局から、煙草販売本数などのデータは健康ネットからそれぞれ入手した。

成人喫煙人口に関して私がまとめたデータを以下の表に示す。



この36年間で日本の総人口が9905.3万人から1億2743.5万人へと1.29倍も増加、従って成人男子、成人女子共々大幅に増加している。その結果、この間に成人男子の喫煙率が84%から49%へと劇的に減少したのにも拘わらず、成人喫煙男子数は2549万人から2430万人と総数においては僅か4.7%の減少に止まっている。これに対して15%の喫煙率に止まっている成人女子では喫煙人口が494.4万人から793万人へとかえって1.6倍も増加していた。その結果、成人喫煙人口はこの36年間に3040万人から3217万人へと6%ほど増加しているのである。これには驚いた。私は単純に喫煙人口は減ったとの印象を抱いていたからである。

さらに奇異なのが成人喫煙者一人当たり紙巻き煙草販売本数の異常な増加である。この36年間に販売本数が1815億本から3126億本へと1.78倍も増加、その間に成人喫煙人口は微増に止まっているので、成人喫煙者の年間当たりの販売本数が5970本から9717本へと1.63倍も増加している。

ここで販売本数を消費本数と単純に考えると、一日当たりの本数では16.4本から26.6本に増加したことになる。平成14年では成人喫煙者は平均して1日に1箱以上の煙草を吸っていることになるのだが、この単純な計算結果をそのまま鵜呑みにして良いものかどうか、疑問が生じてくる。

何故1人当たりの消費量が激増したのだろう。

煙草のみに厳しい世相に逆らって煙草を吸い続けるからには、筋金入りのヘビー・スモーカーだけが生き残っているからであろうか。私の憶測であるが、たとえ喫煙であれ自分の意思を貫き通す強い人間が急に日本に生まれてきたとは思えない。やめるにやめられず、周りの目を気にしながらこそこそと隠れ吸う。『ホタル族』に代表されるそういう人達が大多数であろう。ベッドに縛り付けられたような、ただ『生きているだけ』の老人を身近に見ることが多くなった若い世代が、そのような長生きはごめんだとばかりに早死を願って喫煙に精を出す、それほど『論理的』な人が増えてきたわけでもなかろう。やはり平均して1人が1日に1箱というのはかなりハードな喫煙状況で、現実のものとは考えにくい

1人1日に26.6本という消費本数をせめて20本とするにどのような操作をすればいいかというと、計算上の総本数を除すべき喫煙人口を増やせばいいのである。すなわち、平成14年において成人喫煙人口は3217万人であるが、あと1065万人喫煙人口が増えればよいことになる。

この1065万人をどこに求めたらいいのか。煙草の消費者としては無視されている未成年者なのである。ところが平成14年には0歳の赤ん坊を含めて未成年者の総数は2511万人だから、その半分近くが成人と同じように1日に1箱の煙草を吸わねばならず、いくらなんでもそういう状況は考えにくい。年間3000億本も超える紙巻き煙草が一体どのような人々によって消費されているのか、女性による消費の急増に加えて未成年喫煙者の増加が強く示唆されるが、その実態はさらなる調査解析で明らかにされるべきである。

『喫煙率』は減少しているにもかかわらず『喫煙人口』は増加している。その何れを強調して論じるかに論者のスタンスが現れるのが面白い。




『恩賜の煙草』のつづき

2005-06-10 08:40:08 | 社会・政治
「恩賜の煙草を廃止」を伝えた新聞記事について、「なぜ恩賜の煙草を廃止するのか、また何故これまで続いてきたのか記事を見る限り説明がなかった。現代っ子の記者にはその背景なんぞになんの興味も無かったのだろう」なる感想を6月3日のブログに記した。

その声が届いたわけでは無かろうが、今朝の『朝日新聞』13版A、33ページに「嫌煙の風 皇室まで」の見出しで「恩賜たばこ廃止へ」と新たにその背景を解説する記事があらわれた。7段にわたり読ませる記事である。「やめる理由について宮内庁幹部は、男性の喫煙率が50%を下回り、10%台となっていることなどを挙げる」とのことである。戦後生まれの記者であろうが戦時中に歌われた『軍歌』も引用しつつ、『恩賜の煙草』の変遷を要領よくまとめている。

最初の記事が現れてから少々時間がかかったが、読者が読んでふと疑問に思う事柄にまともから応えるこの後追い記事は、報道記事のあるべき姿として好感が持てた。