Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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インドの宗教対立

2014-02-13 14:38:45 | アジア
先月、デリーから130キロほど北にある町、ムザファルナガールを訪れた。昨年9月におこったヒンドゥー教徒とイスラム教徒(ムスリム)の衝突で、家を追われた避難民達に会うためだ。衝突からすでに4ヶ月が経つにもかかわらず、1万5千人をこえるムスリムたちが、この町に点在する避難民キャンプで生活していた。

冬の寒さが厳しくなり、12月半ばまでに35人の子供達がキャンプで死亡したと報告されると、事態の悪化を恐れた州政府はキャンプを閉鎖することを決定。テントの住人達を半強制的に立ち退かせた。僕がキャンプのひとつを訪れたのは、閉鎖の数日後だったが、そこで冗談のような光景に出くわした。わずかばかりの家財道具をまとめてキャンプ地をでた家族達は、なんと道をへだてただけの隣の空き地にまたテントをたてて住み始めていたのだ。50メートルと離れていない場所に、以前と変わらないキャンプができていた。

「まだ怖くて家に戻れないのさ」毛布で身体を覆った老女が、水タバコを吹かしながらこう言った。警察がいくら説得しても、村に戻ることは安全ではないと感じており、住民達のほとんどはそれを拒否していたのだった。

昨年の衝突の原因は定かではないが、ヒンドゥーの女性がムスリムの男性数人によって嫌がらせをうけた事件がきっかけらしい。その報復として、村々でムスリムの家族が集団で襲われ始めたのだ。インドにおけるヒンドゥーとムスリムの対立は根が深い。普段はあからさまに表面にはださないが、多くの一般市民達はお互いに対する不信感を心の内に秘めている。ささいな事件が、歯止めのきかない殺し合いに発展することは十分にあるだろう。

「村の彼ら(ヒンドゥー)のいうことなどなにも信用できないさ」老女が寒さで唇を震わせながら、こうつぶやいた。

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(この記事はヤフーニュースブログにも掲載してあります)

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