Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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子供たちを殺す謎の病気

2013-08-16 13:31:34 | アジア
原因不明の病気の記事のための撮影で、先月北部のビハール州を訪れた。

死亡率の高いこの病気がビハール州で集中的に報告されたのは1995年。以来、年間数千人が死に至っているというが、その多くは子供たちだ。症状としては高熱や頭痛、発作など日本脳炎にそっくりなのだが、同一ではない。蚊が媒体になり、主に雨期に多い日本脳炎と違って、この謎の病気は4月あたりから猛威を発揮し、雨期の始まる7月には収まっていくのだ。研究者達の懸命な調査にも関わらず、原因となるものはまだ何一つわかっていない。

病室に足を踏み入れると、目に入ってきたのはベッドに横たわる4人の子供達だった。みな白目を開けているような状態で、意識もほとんどない。何もできずに憔悴しきった親たちの前で、点滴や酸素のチューブに繋がれていた。
「もうすぐ雨期が始まるので患者の数は減ったけれど、一月ほど前は2つの病室が子供達で一杯でした」
案内してくれた医者が言った。

病気の追跡調査をおこなうチームに同行して、農村を訪れた。医者と看護師が数週間前に退院した患者の家を訪れ、2度目の採血をおこない、さらに住居環境などを細かく調べる。病気の原因を究明するために必要なフィールドワークだ。

村の奥にある一件の家の裏に辿り着くと、幼い子供二人と赤ん坊がテントの下で座っていた。泥でつくられた彼らの家が、数日前に崩れてしまったという。典型的な極貧農家の家族だった。
「サンジュウはどこですか?」医者が尋ねた。サンジュウは4歳の患者で、病状が良くなって数週間前に病院を退院していたはずだった。
「亡くなりました…」父親が答えた。退院した直後にまた症状があらわれ、発作が起こってあっという間に死んでしまったという。

人の死や不幸などこれまでいくらも撮ってきたが、今回の仕事はなかなか胸の痛くなる仕事だった。幼い娘をもつ僕にとっては、ファインダーをのぞきながら、いやでも子供たちと自分の子が重なり合ってしまったのだ。

(もっと写真をみる http://www.kunitakahashi.com/blog/2013/08/16/child-killing-mysterious-disease/ )
(同記事は、Yahoo Japan News にも掲載しています)

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