Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

ヒマラヤの雪景色

2010-03-16 18:51:42 | アジア
撮影のため北部カシミール地方の山奥グルマーグで1日を過ごしてきた。

州都のシュリナガールを訪れたことはあるが、グルマーグまで足を伸ばしたのは初めて。ヒマラヤ山脈に抱かれたこの町は、スキー場としても人気の高いリゾート地だ。

今回の仕事はニュース関係ではなくて、この冬山で救急隊員として働くアメリカ人のポートレート撮影。某雑誌の表紙用だ。ティムという名のユタ州出身のこの男とは、会ったときからなんだか気があった。こういうときは撮影も楽になる。

景色のいいところを背景にということで、ロープウェイで到達できる一番高い位置まで登る。ここのロープウェイの終点は3979.50メートルで、世界一標高が高いらしい。停車場で降りると、そこはもう別世界。雪に覆われた山の頂はまさに息を呑むような眺めだ。スキーをしない僕はこういう場所を訪れる機会が滅多にないので、それは特に新鮮に感じられるのだろう。

ロープウェイの営業時間が終了し、一般客がいなくなるとあたりは静けさにつつまれた。

人や車はおろか、木々のざわめきや鳥の声さえも聞こえない、完全なる静寂である。こんな経験をしたのは何年ぶりだろうか、いや、ひょっとすると人生初めてかも。。。24時間ひっきりなしに車や人、おまけに鳩やカラスの喧噪に晒されているムンバイでの生活からはとても想像の及ばない環境だ。

撮影のため陽光がいい角度になるまでの待ち時間を含め、2時間ほど頂上付近で過ごしたあと帰路につくが、すでにロープウェイは終了している。スキーのできない僕は、救助用そりに乗ってティムに引っ張ってもらい下降することになったのだが、これがまた痛快な経験だった。

そりをつないで相当な急斜面を滑っていくので、引っ張るほうはかなりのテクニックが必要とされるだろう。さすが救助隊員、などと感心しながら余興もかねてビデオをまわしていたが、少しスピードがでてくると、雪の固まりがえらい勢いで吹き飛んでくるようになった。眼もあけられなくなるうえ、体中が雪で覆われ真っ白に。。。さらに背面に溜まった雪が溶け出して、濡れた尻が凍えるほどに冷えきってきた。

30分ほどかかったろうか、やっとの思いで宿泊するロッジそばまで辿り着いたころには靴もズボンもぐっしょり。それでもこの貴重な体験を楽しませてもらった。

ジャーナリスティックな意味合いはないけれど、こういう撮影ならたまには悪くはないな、と思わせてくれるひと仕事だった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿