Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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アジア最大の太陽熱発電所

2013-10-09 20:02:21 | アジア
今年5月に完成したばかりの、アジア最大の太陽熱発電所を撮影しにインド西部ラジャスタン州を訪れた。

太陽熱発電とは、集めた太陽光を熱源としてタービンをまわし発電するシステム。太陽電池で発電する太陽光発電より、費用面でも効率がよく、蓄熱により24時間の電力供給も可能なシステムだ。

インドのゴダワリ社が建設したこの発電所では、使用されているミラーパネルは5000枚以上。このミラーで集約された太陽熱をもとに、最大50メガワット発電することができる。日本の一般住宅向けのソーラーパネルの平均出力は4キロワットほどなので、これをもとに換算すると1万2千戸以上の供給量だ。

人口12億以上をかかえ電気需要の貪欲なインドで、こういった自然エネルギーの技術の結集をみることは嬉しいことだが、残念ながらこの発電所の経営が順調に進んでいるというわけではない。

この地域では砂嵐がひどくなることがあり、舞い上がった砂粒が太陽の光を遮断してしまうと何日間もどんよりと曇った状態になり、発電所が稼働できなくなってしまうのだ。発電所計画時に、太陽発電に関する信頼できる気象データがなかったことが原因だった。また、費用の面でも予期していなかった問題が発生した。痛手のひとつは、米国ダウ・ケミカルによる熱トランスファー液の値上げだった。熱トランスファー液は太陽熱発電に欠かせない材料だが、発電所の施工が決定したあとに、その価格が2倍近くに引き上げられてしまったのだ。ちなみにダウ・ケミカルといえば、ベトナム戦争時代にナパーム弾や枯葉剤をつくりつづけ、さらに米国本土でも工場のあるミシガン州でダイオキシン汚染をひきおこした企業だ。
さらに、インド通貨のルピーの、今年の大暴落によって、輸入に頼る主要部品の相対価格が高騰。メインテナンスにかかる支出も予定を大幅に上回ることになってしまった。

新事業にはこういったリスクはつきもの、ともいえるが、すぐに利益のでにくい対費用の問題もあって、なかなか多くの企業が代替エネルギー部門に参入できないでいるのが現状でもある。しかし、再生可能エネルギーが今後ますます重要になっていくことは間違いないはずだ。望むのは、これまでエネルギー分野で巨額の利益をあげてきた企業が、いまこそ将来のエネルギー技術発展のために長い目で投資をしてほしい、ということだ。そして、僕らひとりひとりの、資源や電力に対する意識を変え、浪費をとめること。それがこれまで利益と利便性のために環境を犠牲に電力を無駄に消費してきたこと対する、地球への罪滅ぼしにもなると思うのだが、いかがなものか。

(もっと写真をみる:http://www.kunitakahashi.com/blog/2013/10/09/dilemma-of-asias-biggest-solar-thermal-energy-plant/ )
(この記事はヤフーニュースブログにも掲載してあります)

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